シェパード隊長
俺はエルフの群れを率いて狩りをしていた。
連携が取れてきている。
エルフのリーダーである姫は参加しなくても、もう平気だ。
ナンバーツーの俺がしっかりと役目を果たしているのだから。
近頃はエルフの兵士達が俺のことをシェパード隊長と呼び始めた。
隊長と呼ばれると何故かしっくり来る。
熊の気配。
俺は前足を蹴って後ろ足で立ち上が、りうなり声を上げた。
俺はジェスチャーで獲物を伝える。
「熊か」
エルフ達に緊張が走る。
その後の行動は的確だ。
エルフ達は木上で弓を構えた。
俺は獲物を追うのでなく、熊を挑発して俺を追わせた。
俺を追ってくる熊がエルフ達の視界に入る。
矢の射程に入ったとき俺は反転して挑みかかるふりをする。
立ち止まった熊は立ち上がり俺に鋭い爪を振り上げた。
すまないな。俺達も生きて行かなければ。
体を大きく広げた熊は格好の標的だった。
正確無比なエルフの矢が身体中に同時に打ち込まれた。
どれも致命傷だった。
「ひゃっほー」
「瞬殺だぜ」
エルフ達が木から飛び降り熊に駆け寄る。
皆、笑顔だ。
おい。生き物の死を喜ぶな。
俺は少し不機嫌になった。
「この調子でもう二、三頭何か狩って帰ろうぜ」
もう十分だ。これ以上命を奪うな。
俺は兵士達に向かってうなり声を上げた。
「おっと。シェパード隊長がお怒りだ」
「お前調子に乗るなよ。姫様にもしかられるぞ」
「良いですか。決して必要以上に殺しては駄目ですよ。いかなる命も大切にして下さいね」
姫はいつも兵士達が狩りに行くとき、そう言って送り出していた。
俺と姫は生き物に対して同じ思いだった。
生きるために必要な命だけを頂く。
決して無駄にはしない。
そうだ。無駄死になど誰にもさせたくないのだ。
俺も姫も。




