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野良犬の思い
季節は実りの秋を迎えていた。
肥えた鹿は格好の獲物だ。
俺は若い犬達に鹿を追わせた。
犬達は喜び勇んで鹿を追うが取り逃がす。
こうして経験を積んで若い犬達は一人前に成って行く。
俺の計画通りだ。
追い立てられ逃げ回った鹿は熱くなった体を冷やすために水辺に現れる。
そこを待ち伏せして襲う。
若い犬達は追い立て役だ。
俺は他の犬よりも知恵が有る様だ。
だがらリーダーになれた。
しかし、何だろうか。
この身に覚えの無い知識はどこから来たのだろう。
川で俺達に囲まれた鹿は抵抗も虚しく足から引き倒され肉塊と化した。
鹿の抵抗は無意味だったろうか。
否。この世界は皆生きる為に戦っている。
戦わなければ死んでしまう。
戦うことには意味が有る。
もし、食べ物がいつでも手に入り、襲われる事の無い世界が有ったなら。
そこは戦いの無い世界だ。
否。俺の心に強い否定の感情が湧き上がる。
激しい嫌悪感を伴って。
悲惨で無意味な戦いへの強い嫌悪感。
記憶に無い出来事に強い感情が沸き起こる。
俺はどうしたのだろうか。
こんな事が時々ある。
突然湧き上がる身に覚えの無い強い感情。
俺という犬は一体何だろうか。




