熊の親子
突然群れが騒がしくなる。
川を渡る風で匂いがここまで届かない。
群れは何かに怯えてパニックを起こしている。
俺は直ぐ群れの元に引き返した。
状態は一目で見て取れる。
子連れの母熊が俺たちの鹿を奪いに来たのだ。
野犬を脅して食い物を奪う。
過去に上手く行き学習したのだろう。
ならば俺たちの獲物に手を出すとどうなるか学習させてやろう。
俺は群れの中を駆け回り混乱を沈める。
標的は小熊だ。
群れに合図を出し散開させる。
最初の集団が小熊に襲いかかる。
怒り狂った母熊が、小熊を襲う犬達に突進してくる。
相手をするな。
俺の合図で犬達は逃げ出す。
逃げる犬達を追う母熊の背後で、次の集団が小熊に襲いかかる。
小熊に駆け戻る熊。逃げる犬達。母熊の背後で新たな集団に襲われる小熊。
数回繰り返すと母熊は犬達を追わなくなり、小熊の前でうなり声を上げて威嚇し始めた。
小熊を守りながら集団を相手に戦う事など出来ないのだ。
母熊は完全に動きを封じられていた。
もう良いだろう。これ以上は無意味だ。
俺は群れに合図を送る。
ゆっくりと犬の群は後ずさりしながら熊から離れて行く。
戦いの終わりを察した母熊は小熊を連れて山奥に駆けていった。
これで俺たちと敵対するとどうなるか、あの熊は学習しただろう。




