井戸掘り
今のはかなり犬らしからぬ振る舞いだったかも知れない。
犬らしく生たいのではないのか。
気をつけよう。
しかし。
俺は家の中で見つけた布切れで床を拭いていた。
俺の前足は犬の中でも一番器用だ。
床をこのままにしてはおけない。
染みが残ってしまうものな。
「あれを見て下さい。今はあの様な事を」
新兵が姫を連れて戻ってきた。
新兵はまだ泣いている。
魔物が家に住み着いてしまったとでも思っていそうだ。
泣き付かれた姫は放っておけなくなり、様子を見にやってきたのだろう。
他にも数名の兵士が付き添っていた。
「まあ。お利口さんね」
姫は心の底から感心していた。
「姫。お利口などで済ませられる行為ではありません」
姫とよく話をする兵士だ。
俺の事をかなり警戒している。
そうだ。姫ならば。
俺は姫に駆け寄った。兵士達は身構える。
姫は俺の頭を撫でた。
俺は姫を見つめた。
姫は俺を見つめ返してくる。
意志が伝わってくれ。必死に願う。
俺は姫に背を向け水脈の上に行く。
姫は俺の後をついてきた。
前足で床板を掻いてみせる。
姫は俺の所作を見つめていた。
「グラッド。皆を呼んできて。この床板を剥がすわよ」
「なんと。姫、何故そのような」
「この下に何か有るのよ。急いで」
姫とよく話をしているあの兵士がグラッドなのか。
「そこのあなた。あなたは服を着替えたら、私の部屋の床拭きよ。汚した所を綺麗にして。それと、風通しも良くしとくのよ」
泣きみそ新兵。俺はそう呼ぶことにした。
姫の部屋を。
とんでもない奴だ。
原因は俺かも知れないが。
この後は早かった。
床板が剥がされ、俺は飛び降りると全力で土を掘る。
水が染み出し足が濡れる。
床に駆け上がり、濡れた足で床に足跡を付けて見せた。
「これは。嘘だろ。何と言うことだ」
「まあ。本当にお利口さんね」
兵士は絶句。
姫は大喜びだった。




