エルフの村
気が付くと俺の目の前に森が広がっていた。
エルフの匂いを辿って行き着いた先がまた森とは。
匂いは森の奥へと続いている。
行くべきだろうか。
エルフに会って何がしたいと言うのだろうか。
結局俺は森の中を進むことにした。
森は深い。何処までも匂いが続いている。
エルフの匂いは覚えた。
深く進むにつれて匂いは濃くなって来る。
大勢のエルフが森の奥にいる。
森に住むエルフ。
森に栄えるエルフの都。
美しい光景がこの先に広がるのだろうか。
視界の先が明るくなり突然目の前が開けた。
森が終わっている。はるか先まで明るく開けた空間が広がっていた。
ここは深い森の中心だ。森の中にこれほど開けた土地が有るとは。
空飛ぶ鷹の目でなければこの土地を見つけ出せないだろう。
視界の先に木の塀で囲われた集落が見える。
エルフの匂いはそこに続いていた。
近づくと俺を見つけた子供達が駆けてくる。
子供のエルフだ。
「ワンちゃんだ」
「ワンちゃんだね」
「噛むかな」
「噛むかも」
俺の前で子供達がしきりに話す。
俺は安心させようと、伏せて尾を振った。
子供の手が俺の頭を撫でて来る。
俺は子供達に連れられて、エルフの集落に入って行く。
広場があり、エルフの兵士らしき男達が軍事教練をしていた。
一人の兵士が俺を見ると慌てて駆けて行く。
兵士の男達がざわつき始めた。
みんな俺を見ている。
何人か匂いに覚えが有った。
エルフの女性が兵士の後に付いてやって来た。
先程駆けて行った兵士が急かすように彼女に振り向いている。
彼女は俺を見て、大きな目を見開く。
人間とは思えない程に青く輝く瞳。
誰だかすぐに分かった。
間違いない。
姫と呼ばれるエルフの女性だ。
今はフードもローブも身につけていなかった。
腰まで届く輝かしい銀の髪が露わになっている。
額に嵌めたサークレット。
法衣を思わせる純白の豪勢な衣服。
位の高い姫が纏うであろう衣服だ。
王女に間違いない。
だが何故だ。
ここはまるで隠れ里だ。
何故このようなところで暮らしているのだろう。
俺は立ち尽くすエルフの王女から目が離せなかった。




