考察
エルフの女性と出会ってから、俺の何かがおかしくなっていた。
気持ちが入らない。
群れを率いる事に喜びを感じない。
今でも俺は懸命に群れを守っている。
群れを率いて命の綱渡りを続けている。
生きがいだった筈だ。
だが今は辛い。
死の淵に張り巡らされた糸のような細い迷路を、仲間を率いて間違わずに寿命が尽きるまで駆け抜ける。
なんて過酷で困難な生き様なのだろう。
夜、仲間達が寝静まる。
だが俺は寝付けない。エルフの女性が心を騒がせる。
王妃の形見を持っていた。
父は国王なのだろうか。彼女は王女なのだろうか。
彼女は未熟だ。まだ若い。唐突な所が有る。
虚勢も張っている。だが彼女はそれを自覚している。
男達はそれを分かって彼女を支えていた。
あの男達もきっとエルフだろう。
彼女はエルフの群れのリーダーだ。
エルフは雌もリーダーになるれるのだろう。
だが何故だ。
姫と呼ばれる者が何故狩りをしていた。
王族ならば尚更だ。
いや、王族ならではの習わしか。
例えば成人の儀式とか。
しかし本当にそうだろうか。
違和感が有る。
いったい俺は何を考えているのだろう。
この知識と思考は何処からくるのだろう。
俺は日に日に犬らしさが薄れているようだ。
仲間達との意志疎通が難しくなっている気がする。
このままではまずい。




