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悪役令嬢は妖刀と生きる  作者: 高塚 ミヤビ
第一章

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第十一話 中編

三日目。

引き続き魔力操作の練習を行っていた。

昨日ようやく魔力を「視る」ことができるようになり、放出させた魔力を少しだが制御できるようになった。

しかし、それだけでは到底魔鉱石を染め上げることはできなかった。

おそらく、魔鉱石を変色させるのに十分な量の魔力を、的確に吸収させることができていないのが原因なのだろう。


「この魔力の粒さえ大きくすることができれば、うまくいくと思うのだけど」


視界に映る無数の小さな光の粒が、ゆっくりと私の手のひらに集まってくる。

最初は順調だった。

粒が集まり、徐々に密度を増し、ほのかに大きくなっていく。

しかし、一定の大きさに達した瞬間——制御が効かなくなる。


「っ……!」


まるで手に負えなくなった風船が破裂するように、集めた魔力の粒が一気に霧散し、再び小さな光の粒に戻ってしまう。

何度繰り返しても同じ結果だ。

書籍を何冊も読み漁ってみたが、この現象については一切記載されていなかった。


「もう……こういうことは本当は好きじゃないんだけど」


こうなったら力技だ。

私は深く息を吸い、魔鉱石に両手を添える。

これまでは一つ一つ魔力の粒を丁寧にコントロールしようとしていたから悪かったのだ。

体力の消費効率なんて度外視で、この手と手の間に今出せる最大限の魔力を放出する。

そして、その膨大な量の魔力の粒の中で、たまたまコントロールできた一部の魔力を魔鉱石に叩き込む。

無数のビーズを糸と一緒に小さな箱にまとめて入れて振り回せば、偶然いくつかは穴に糸が通るだろう。


「こうなったら数の暴力、確率論で無理やり染めてやる」


刻印がいつも以上に熱い気がする。

全力で魔力の放出をしたことなんてなかったけれど、これは想像以上にキツイ。

体力が切れるまで全力疾走しているみたいだ。


「くっ……」


こんなの十秒ともたない。

全身の筋肉が引きつり、肺が焼けるように熱い。

それでも歯を食いしばり、魔力を魔鉱石に向かって叩きつける。


「はぁ…はぁ…はぁ」


そんな全力を賭した結果。

まだ何色なのか判別できるほどではないが、それでも確かに透明だった魔鉱石は、ほんの少しだが色づいていた。


これは最初に比べれば確かな進歩だ。


しかし、この結果に素直に喜べない自分がいる。

これを繰り返していけばいつかはこの魔鉱石を染め上げることはできるだろう。

しかし、私の目指すのはエヴィン先生がやっていたような、一瞬で染め上げることだ。


「アプローチ自体は間違っていないはず……でも、根本的な魔力のコントロールが足りていない」


私は現状、魔力の粒に一つの指向性を与え魔鉱石を変色させようとしている。

言うならば、一本の糸を制御してすべてのビーズの穴を通そうとしている。

しかし、それでは霧散してしまう。

なので理想は魔力の指向性は微弱でもいいので複数の糸を同時に操ること。

より多くの魔力の粒に、別々の指向性を与え、同時に魔鉱石へと導く。


一つの糸ですら制御できていないのに、複数の糸を制御できるはずがないと思うかもしれない。

けれど、全力で魔力を放出している状態を維持しつつ、両手の手のひらという狭い空間であれば、まだ可能性はある気がした。


「でも、とりあえずは……仮眠かしら」


寝てる場合じゃないだろうと言われてしまうかもしれないが、少し待ってほしい。

これには理由があるのだ。

今の私は魔力を全力で放出した直後で、体力がほとんど残っていない。

先ほどと同じように全力で放出したところで、より短い時間でしか魔力を放出できないだろう。

なので体力を回復させるためにも休息は必要なのだ。


それに理由はもう一つある

もうこのレイラの体になってから数週間が経過し思っていたのだが、この体の学習スピードは異常だ。

そしてこの異常ともいえる学習スピードは、おそらく睡眠が起因していると思っている。


前世でも前日はできなかったことが、睡眠をすることで脳内が整理され、次の日にはできるようになっているなんてこと聞いたことがあった。

それがレイラの体は常人より秀でているのだと思うのだ。

こんな状況だからこそ、この体の特性も生かさないといけないのだ。

決して、投げ出したわけではない。


「おそらく理にかなっているはず…」


こうして私はこの課題に残された時間を魔鉱石に魔力を吸収させることはせず、魔力のコントロールと全力放出の限界探求、そして睡眠に費やした。


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