表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は妖刀と生きる  作者: 高塚 ミヤビ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/19

第十一話 前編

課題が始まって二日目の朝を迎えた。

昨日は偶然とはいえ魔術を発動できたが、それ以降は何の進展もなかった。


私はこの状況に焦りを感じていた。

なぜなら、想定していたよりも魔術の課題が進んでいないからだ。


原因はすでに判明している。

私が意地を張ってエヴィン先生の助言を聞かずに、手探りで課題を進めているからだろう。

あの時のような偶然はそう何回も起こり得るものではないのだ。

それを求めて課題を進めていくのはあまりにも非効率すぎる。


そのうえ、今日からは通常通り魔術以外の授業も再開されるので、魔術の課題に割ける時間は昨日より限られてくる。

このままでは課題を締め切り前に終わらせてエヴィン先生の鼻を明かすどころか、課題をクリアすらできないだろう。

なので私は意地を捨てて、書庫へ向かうことにした。


「そう、そうよ。助言とか関係なく、私に必要な知識がたまたま同じ場所にあるだけ」


そうつぶやくことで自分を納得させ、通常の授業をこなしていった。

そうして待ち望んだ魔術の授業になると、私は足早に書庫へ向かった。


書庫の扉を押し開けると、少し埃っぽい空気が鼻をくすぐった。

高い天井まで届く本棚がずらりと並び、直射日光から本を守るためか窓のない部屋を、魔道具の照明が照らしている。

他の部屋に使われていなかった照明の魔道具を使うのは、書庫では火気厳禁だからだろうか。

しかし、この膨大な本の中から魔術に関しての本を探し出すのは骨が折れそうだ。


「どこから探したものか……ん?」


そう思っていたのもつかの間、難航するかと思ったが、魔術に関連する書籍探しはすぐに終わった。

なぜなら、そのほとんどが目に付く位置にある本棚にまとめて置かれていたおかげで、すぐに見つけることができた。

この配置には明らかに人の意思を感じるが、そこには気づかないことにして、魔術について調べることにした。


「やっぱり、先人の知恵を得られるというのは良いものね」


ページをめくるたびに、これまで浮かんだ疑問や魔術に関する知識の不足を解消してくれる。

こうして調べていく中で、私は魔術について何も知らないことを改めて実感した。


そもそも、魔術は魔力を消費して行使されるものだということは理解していた。

けれど、命じれば魔力を自動的に消費し魔術が行使されるというわけではないようだ。

ゲームの時とは違い、魔術を唱えるだけでは行使できず、魔力をしっかりとコントロールしなければ魔術を行使できないようだ。


「ある意味、完全なマニュアル操作か……昨日のは本当にただの偶然だったのね」


どうやらあの時に魔術が行使できたのは、使用用途が限定され加工されていた魔石に私の魔力が干渉し、魔術を発動するトリガーを偶然引いてしまったせいで、行使できたようだ。


「だとすると、あの時の感覚は魔力を放出している感覚で間違っていなかったようね」


その後も魔術について調べていくと、魔力を見る方法について記載されているページを見つけることができた。


そのページにはこう記載されていた―――体内を巡る魔力をコントロールし、目に集中させることで魔力を目視できるようになる。

この記載を信じるとしたら、初めにすることは体内を巡る魔力をコントロールすることだ。


「それをするには……体内を巡る魔力の流れを感じることから始めればいいのね」


これに関しては昨日の事故からきっかけを得ることはできていた。


「魔力を放出しているときにこの刻印が熱くなるのも、魔力を感じていることになるわよね」


昨日の事故をきっかけにできるようになった、この魔力の放出。

これを手の甲から放出するのではなく、意識した場所に集中させる。


私は目を閉じ、深呼吸をして集中する。

最初は魔力を放出し、手の甲にある刻印が熱くなることから始める。


「今日は調子がよさそう」


刻印が徐々に熱を帯びていくのを感じる。

昨日は数度しか再現ができなかったこの感覚も、今日はスムーズにできてる気がする。


「これを腕から胸そして頭に動かしていく感じかしら」


感覚を研ぎ澄ませるため、まぶたを閉じる。

体の中で何かが動いている感じは特にはしない。

けれど、続けていると疲労感が増していくのを感じるので、魔力の操作はできているはずだ。


「最後に目に意識を集中させて……?」


まぶたを開き、視界を得るが特段何かが変わった点があるようには思えない。

失敗してしまったのだろうか?


「え⁉」


最初は何も変わらなかったが、何度か瞬きをすると明らかに視界が変わった。

薄っすらと、だが確かに、この部屋の空気中には無数の小さな光の粒が浮かんでいる。

それはまるで星屑をまいたような、淡い青白い輝きをしていた。


「この小さな粒が魔力なのね」


自分の手の甲に視線を落とすと、手の表面から細かい粒がゆっくりと湧き出しているのが見えた。

放たれた魔力は私から離れてくにつれ霧散し消えていく。


「でも、これをコントロールするのは思ったより難しいわね……」


魔力を見えるようになったことで魔力に指向性を伝えることができるようになった。

なので、魔鉱石を染めるために放出している魔力をコントロールしようとしているのだが、これが異常に難しい。

小さい泡のような無数の魔力をコントロールしようとすると尋常でないほど集中力を要するのだ。

それはまるで無数の小さなビーズの穴に暴れまわる糸を連続して通していくような感じだ。

しかも、魔力を放出するといつも以上に体力を消費し集中が途切れると糸が散り散りになり今までコントロールしようとしてきた魔力が霧散してしまうのだ。


「世の魔術師はこれを普通にこなしているなんて、信じられないわ……」


こればかりは慣れるしかないようだが、こんな繊細な操作を自力でやっているのか疑問符が出てくる。

それに書籍に書かれている放出している魔力の図解より明らかに私の放出した魔力は細かい気がするのだ。


こんなことを言っていてもコントロールした魔力でないと魔鉱石が魔力を吸収せず魔鉱石を変色することはできない。


「やるしかないか」


私は諦めずに書籍の図解を参考にしながら、粒を糸で結ぶように魔力の流れをイメージした。

そんな試行錯誤を繰り返すうちに、日が傾き始め、書庫の窓から夕陽の赤い光が差し込んできた。


「やっと少しはできるようになってきたけど……まだ足りないわ」


最後に今日の成果として魔鉱石に魔力を吸収させようと試みたが、今日も変化は見られず二日目を終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ