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中学生活の最後の最後であの人に挨拶をしてみた!

 中学生活最後の日に【みどり】に声を掛けてきたのは【八木】だった。

 そんな【八木】と話した【みどり】は悪戯な顔をしたある者達からある事を促され……。

「小松さん。おはよう……」

「お、おはよう。八木さん……」

 私に話し掛けてきた意外すぎる人物。

 それは、八木だった。

 そんな八木はいつも以上にメイクが決まっていて、美人に見える。

 当然だ。

 八木は噂通り都会にある芸能系の高校に進学が決まっているのだから。

 しかも、噂では芸能事務所にも所属が決まったとか。

 きっとそこで将来は芸能界を目指すのだろう。

 いや、八木ならいけるはずだ。

 そんな予感がする。

 そして、八木はドキッとする可愛い笑顔を私に向け、話を続けた。

「小松さん。今日でお別れだね」

「そ、そうだね……」

「でも、小松さんって凄いんだねぇ」

「えっ⁉ 何が?」

「えぇっ? だって、小松さんって美術の才能があるじゃない?

 それで高校も決まったんだし……。凄いなって思っただけよ?」

「はぁ……」

 八木は一体、何が言いたいのだろう?

 私が色々と考えていると、八木の目が一瞬冷たくなった。

 その目が向けられた私の心臓はまたドキッとした。

 さっきのとは違って嫌な痛みが体に走る。

 すると、八木の目は元の優しい目に戻り話し出した。

「でも、そういう才能が物言う所って大変だよねぇ?

 いつスランプが訪れるとかライバル達に何されちゃうとか考えると怖いよね?

 それに、このクラスの人みたいに優しい人がいなかったりしたらとか思うとさ……」

 八木は優しい目のまま私の高校生活の不安を煽ってきた。

 確かに、そう言われると怖い。

 石川にも言われたが才能が物言う世界にどう立ち向かうのか想像も出来ない。

 それにスランプになったり才能がないって言われたらどうしよう……。

 そして、友達が出来なかったら?

 今のクラスみたいにいい人がいなかったらどうしよう?

 そう色々と考えると本当に怖かった。

 けど、

怖いけど、今は期待の方が勝ってるからそういう事を考えられないよ!

 それに、まだスランプとか才能って言う程何も作ってないしねぇ。

 友達は……まあ、作れなかったら作れなかった時で仕方がないかな?

 でも、私には美雪ちゃんと文ちゃんがいるから大丈夫だよ!」

と、言って、私は文を見て笑った。

 すると、文も笑ってくれて大きく頷いて返事をしてくれた。

 その文を見るとさっきの嫌な痛みは薄れていった。

 そして、さらにその痛みを軽減させてくれる言葉を掛けてもらった。

「あれぇ? 小松さん、俺等は?」

「えっ⁉ 大隈君?」

「俺達って連絡先を交換した友達じゃねえの?

 ちょっとショックだな……。なあ、伊藤?」

 そう言って大隈が伊藤を見ると、伊藤は爽やかに笑って頷いた。

「そうだよ小松さん。連絡してくれれば相談ぐらいならすぐに乗れるし!」

「伊藤君……」

 伊藤は爽やかな笑顔のままそう言ってくれた。

 こんな笑顔で優しい事を言ってもらえて、私の心臓はきゅんと締め付けられた。

 そして、ちょっと文を羨ましく思ってしまった私がいた。

 でも、何だか笑ってしまった私に今度はこの人がまた気遣ってくれた。

「そうですよ小松さん。僕達は同じ学び舎で学んだ仲じゃないですか!

 よろしければ僕の連絡先もお教えしておきますので、いつでも連絡してください!」

「木田君ったら!」

 伊藤とは違う笑顔で言ってくれた木田の言葉も嬉しかった。

 だから、すぐに連絡先の交換に私は了承した。

 すると、お調子者の大隈までもが何故か入って来て、伊藤と文までもが巻き込まれてしまった。

 だけど、そんな大隈の本当の目的はやはり平井で、

この連絡先の交換会にどうにか平井を巻き込もうとしていた。

 でも、やっぱり駄目で大隈は「SNSでメッセージを送りまくるからな!」と大声で言っていた。

 それを平井は両耳を塞いで聞かないふりをしていたけど、

薄っすら笑っていたので聞こえていたのだろう。

 平井は大隈からそういう事を待っているのかと思ってしまった。

 そして、私がそういう風に平井を見て、くすっと笑っていると美雪が教室に入って来た。

 美雪は朝一でまた後輩達からお呼び出しがあったみたいで演劇部の部室に行ったので、

今までいなかったと思われる。

  一緒に登校して「可愛いコ達に会って来る!」なんて言って別れていたのだからそうだろう。

 そして、両手一杯の洒落た袋を抱えている。

 どうやら本日ももてもてだったようだ。

 そんな美雪は興味津々な顔で私達を見つめ口を開いた。

「ねえねえ、何を楽しそうに話してるの? 教えて!」

「えぇー? いやな、小松さんが俺等を仲間外れにしようとしててさ。 なあ、伊藤?」

「そうそう。何か俺等が友達じゃないとかいう感じの事を言ってさ」

「大隈君⁉ 伊藤君‼ 私そんな事言ってないよ?」

 私が私をからかっている二人に怒ると、その二人は悪戯な顔で笑って文を見た。

 すると、文も同じような顔で笑ってこう言った。

「そうだったよ。それで大隈君と伊藤君がショックを受けたみたいで……」

「文ちゃん⁉」

「佐藤さん。僕もお忘れなく!」

「そうだったね木田君!」

「木田君まで⁉」

 私がみんなからからかわれて困っているのに、

美雪は「へえ、それは みどりちゃんが悪いね!」なんて言ってる。

 少し親友なのかを疑ってしまった。

 けど、何でだろう?

 心の底から凄く楽しくて笑えるのは。

 そう思った時には私は所謂大人の微笑をしていた。

 すると、即それに気付いた美雪がその説明をし、それを興味津々に三人の男子が聴いていた。

 それから自慢気に話した美雪は上機嫌になり木田と連絡先の交換を行っていた。

 これも卒業式が齎す奇跡なんだろうか?

 今日のみんなの様子ははっきり言って変だ。

 私だけが真面な気がする。

 いや、そうでもないようだ。

 だって、こんな変な雰囲気の中で私は心地よく思えて笑えているのだから。

 そんな私が笑っていると西園寺が登校してきた。

 すると、さらに変なテンションになった伊藤と大隈が透かさず近寄って行った。

「おはよう! 西園寺君!」

「おはようございやーっす! 西園寺!」

「……。お前等、朝からうっせえなぁ」

「えぇーー? そうか大隈君?」

「えぇーー? そんな事ないよぉな? 伊藤?」

 不機嫌そうな西園寺に対し、伊藤と大隈はまだからかい続けている。

 これ以上見ていたらとばっちりを受けそうなので私はその三人から目を反らした。

 が、大隈がそれを許してはくれなかった。

「ほらほら。小松さん挨拶してあげなよ」

「へっ⁉ 大隈君?」

「ほら! 今日で最後だろ?

 挨拶してあげないと西園寺が拗ねちまうぜ?」

「そうそう。俺達以上に面倒臭い奴だからさ?」

 何故か伊藤までもが加わりまき込もうとしている。

 そもそも、良く考えてみれば私はこの一年、西園寺に「おはよう」と言った事はない。

 別に言いたくなかった訳ではなく、言う前に例の如く西園寺が私の宿題を奪い書き写していたので、

そんな暇がなかったのだ。

 そういう風になあなあにしてきたので、今更「おはよう」なんて言い辛い。

 でも、私の前にはそれを言わせようとしている伊藤と大隈がいる。

 そして、西園寺からは拒絶されている……。

 どうしたものか考えていると、

「言っておあげなさいな」

と、ハイカラさんの声が聞えた。

「ハイカラさん?」

「ほほほ。こうやって箸を一度も返さなかった殿方とお会いするのも今日で最後なのですよ?

 まあ、みどりさんの方が貸は多い気はいたしますが、ここは大人になった気でしておあげなさいな」

「なるほど……」

 不思議とハイカラさんに言われるとそうしても良いと思える私だった。

 なので、

「おはよう。西園寺君」

て、初めて言ってみた。

 すると、西園寺の顔は真っ赤になった。

 何か怒らせてしまったのかもしれない。

 謝った方がいいのかな?なんて思っていたら、

西園寺は何も言わずにドタドタと足音を鳴らしながら教室を出て行ってしまった。

 そして、そんな西園寺をからかうように伊藤と大隈が追い掛けて行った。

 そんな変な三人を私が首を傾げながら見送っていると、文がくすくす笑いながら声を掛けてきた。

「ねえ、小松さん。そろそろ、体育館に行こっか?」

「あっ⁉ 文ちゃん、もうそんな時間だね!」

「そうだよぅ! みどりちゃん、速く行こうよぅ!」

 そう。これから体育館で卒業式が行われる。

 私の中学生活最後のイベント。

 このイベントが終わったら本当に私はこの学び舎を旅立つんだ。

 そう思うと胸の奥底で何かが弾け、その衝撃が鼻の奥まで到達すると、また涙腺が緩んできた。

 だけど、もう少しだけ我慢しよう。

 みんなの笑っている顔を少しでも長い時間見たいから。

 そう思った私は親友二人と木田、それにハイカラさんと体育館へ向かった。

 


 私は、小松 みどり。

 うーん……。八木さんは何が言いたかったのかな?

 それに、西園寺君は何で怒ったのかな?

 まあ、二人共いつもの事だし、気にしちゃ駄目だよね!

 さあ、いよいよ卒業式!

 みんなで参加しなくっちゃね!

 ね、ハイカラさん?

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