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本日は桜は咲いてないけど桜が咲いた卒業式当日です!

 本日は【みどり】の中学生活最終日である。

 四月からは考えられない程大人になった【みどり】だったが、涙が止まらない。

 そんな【みどり】を【ハイカラさん】が優しく諭し、【みどり】は中学校へ赴く。

 そして、【みどり】は多くの友人との最後の時間を過ごす……。

  今考えるとこの一年は凄く早く終わった気がする。

 不思議と大きさがぴったりだった制服も今日で着治めだ。

 とても名残惜しい。

 そう思う日が来るとは思わなかった。

 そして、もっと着ておけば良かったと後悔している。

 そんな制服のリボンスカーフをしっかりと締め私は顔を上げた。

 私は小松 みどり。

 中学三年生である。

 でも、本日でその生活も終了する。

 それは、本日が卒業式だからだ。

 だから私の足はとても重い。

  同じ行きたくないでもそれは、四月の時のとは全然違う。

 まだ卒業したくない。

 みんなと別れたくない。

 そう思っている私の目から涙が溢れてきた。

 すると、あの優しい声が聞えた。

「みどりさん。折角の晴れ舞台にそんな涙は似合いませんよ?」

「ハイカラさん……」

 ハイカラさんとは私の目の前にいる、黒髪で、日本人形のような顔をした、

年齢不詳の女性の幽霊の事である。

 ハイカラさんは私が中学三年生になって四月最初の月曜日に私の守護霊になってくれた。

 ハイカラさんがいてくれたから今の私がいる。

 そう言っても過言ではないくらいハイカラさんに感謝している。

 それを改めて思うとどうやら涙は止まりそうにはなかった。

「まあまあ⁉ みどりさん、どうしたのですか?」

「だってぇ……。ひっく……ひっく……」

 私は真面に喋れなくなる程泣いてしまった。

 その私をハイカラさんは優しく見つめてまた話し掛けてくれた。

 それは普通に話す事と心に語り掛けてくれる両方の形で。

「みどりさん。幾ら学校の居心地がよろしくてもいずれは旅立たねばなりません。

 そうでなければ折角みどりさんが努力してきた事が実りませんもの。

 それにまた皆さんに置いて行かれますよ?」

 ここまで話すとハイカラさんは、ほほっと笑った。

 不思議とこの笑い声は私を安心させてくれる。

 すると、私の涙は止まってくれた。

「ハイカラさん。ありがとう!」

「いえ。私は、みどりさんの守護霊ですので!」

「ふふっ、そうだったね!」

 そう言って笑った私はもう一度顔を洗いにいった。

 このままの顔じゃ恥ずかしすぎるから。

 それを分かっているハイカラさんはまた、ほほっと笑って私を見送ってくれた。

 それから少し遅れて家の外に出ると、そこには勿論、美雪がいた。

「おっはよう! みどりちゃん!」

「おはよう美雪ちゃん。ごめんね、遅くなって……」

「気にしない気にしない! それよか早く行こうよぅ!」

 そう言って上機嫌の美雪は私の右手を左手で握ってきた。

 これも何度目の光景だろう。

 まあ、本日は手ぶらだけど。

 けど、これがなくっても今の私はいない。

 美雪にも本当に感謝しかない。

 そう思うとまた私の涙腺がゆるんだのが分かった。

 でも、我慢する。

 だって、この光景は終わりじゃないんだもの。

 美雪とはまた同じ高校でずっと親友でいられるのだから。

 そんな私達は三月上旬のまだ肌寒い道を歩いた。

 勿論、その後ろにはハイカラさんが付いて来てくれている。

 人では私以外に見えないハイカラさんと美雪と通い続けたこの通学路も本日で見納めだ。

 そんな通学路では四月には葉桜だった桜並木の枝に薄っすらと桜の蕾が見える。

 その蕾はまだ全然膨れていない

 そんな蕾を持った桜は花も葉もなく寂しいけど、何か期待出来る不思議な感じがした。

 その不思議な感じは肌寒さを緩和してくれ私の心に温かさを齎してくれた。

 そんな今までにはない光景に包まれながら私は歩いて中学校に到着し、

そして、私は一年間ずっと座り続けた席に感謝しながら着席した。

 すると、窓から入る春の日差しは心地良く一年間の努力を誉めてくれているようだった。

 そんな日差しに目を細めていると、あの人から挨拶された。

「おはようございます。小松さん」

「おはよう。木田君」

 それは、私の前の席の木田だ。

 勿論、彼にも感謝している。

 彼の不思議な優しさと背。

 これがあったから私は一年間を過ごす事が出来た。

 でも、それも本日までだと思うと胸がきゅっと締め付けられる。

 そう感じると木田の顔を真面に見れなくなった。

 すると、木田がまた優しさを見せてくれた。

「小松さん、どうかなされましたか?

 気分が優れないのですか?」

「ううん。大丈夫だよ!」

 相変わらず木田は優しい。

 そんな彼に私はちゃんと伝えなきゃいけない。

 だから、深呼吸してこう伝えた。

「木田君。一年間、本当にありがとう!」

 それから涙を堪えて笑った。

 すると、一瞬木田はきょとんとした顔になったけど、

笑顔で「こちらこそ、ありがとうございました!」と言った。

 そうして笑い合っている私達の傍に大隈が近づいて来た。

「よっ! 木田に小松さん。相変わらず仲がいいな!」

「大隈君⁉ からかわないでください‼」

「からかってなんかないぜ?

 俺は正直にお前と小松さんが仲がいいって言っただけじゃん?」

「それをですね、からかっていると言うんですよ‼」

 あの木田の顔が真っ赤である。

 木田が私にそういう感情を抱いているとは思えないけど、木田が調子を狂わされてしまっている。

 それが出来るのは大隈ぐらいだろう。

 そんな大隈にも私はとても感謝している。

 突拍子もない事も言うけれど、そんな大隈が笑わせてくれた事にもとても感謝してる。

 だから、

「大隈君も一年間、本当にありがとう!」

て、笑って伝えた。

 すると、そこは大隈らしく、「いいって事よ!」なんて返してきた。

 そんな大隈は平井を見つけて声を掛けていた。

 だけど、平井からは目を合わせてもらえなかった。

 相変わらず平井に構ってほしい大隈に対し、平井は冷めた態度を取る。

 結局、大隈はこの一年では平井に振り向いてもらえなかった。

 だけど、そんな平井は私達の傍まで来た。

「小松さんに木田。世話になったな」

「平井君。こちらこそ、お世話になりました」

「平井君。本当にありがとう!」

 冷静さを取り戻していた木田に後れを取ったけど、平井にも感謝の気持ちを伝える事が出来た。

 平井とでしか話せない話はとても楽しく、偶に見せる優しさにも本当に感謝しかない。

 そんな平井に笑顔を向けると、平井は少しキザっぽく笑って私達から離れていった。

 それを大隈が「俺には何かないの?」なんて言って呼び止めてたけど、当然、平井は無視していた。

 この実は仲がいい二人のやり取りも見納めかと思うと今度は鼻先が痛くなった。

 本当に困ってしまう。

 こんなにも我慢して後でどれだけの涙を流してしまう事になるんだろう。

 なんとか泣かないようにしている私の所に今度は文と伊藤が近づいて来た。

「小松さん。おはよう」

「おはよう、文ちゃん」

「おはよう、小松さん。大隈君はまた平井君にふられたの?」

「伊藤君、おはよう。そうみたいよ」

「大隈君はこりないな!」

「そうだねぇ」

 伊藤は大隈を見て笑った。

 相変わらず大隈と伊藤は仲が良い。

 だけど、そんな彼等に負けないぐらい私と文とは仲が良い。

 文と本格的に仲が良くなったのは修学旅行からだけど、

私達は色んな事をいっぱい話して分かち合った親友だ。

 そんな文とは高校は別々になってしまうけど、美雪と文とで親友でいると約束した。

 いつでも連絡が取れるように連絡先を交換している。

 連絡先の交換と言えば、伊藤達と私達は初詣の日に連絡先の交換をした。

 あの時は何の気なしにしたけれど、ここ最近になって文が教えてくれた。

 あの後、伊藤から連絡があって……と。

 まあ、教えてくれなくっても十分そんな雰囲気は出ていたけど。教えてくれて嬉しい。

 どうか文達が幸せであってほしいものだ。

 そんな風に私が文と伊藤を見ていると、意外な人物が私に話し掛けてきた。

 


 私は、小松 みどり。

 ハイカラさん、私、がんばってきて良かった……。

 こんなに素敵な気持ちになれるなんて思わなかったんだもの。

 もっと、みんなとの時間を楽しみたい……。

 だから、泣くのはもう少しだけ我慢するね?

 えっと……。

 何であなたが私に……?

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