さあ、親友と合格発表の場へと一緒に向かおう!
【みどり】は合格発表の場へと【美雪】と向かう事となった。
だが、【美雪】の様子がおかしい。
気になった【みどり】はその理由を【美雪】から聞き出すのだが、
【美雪】が話した事を聞いた【みどり】は……。
「おはよう。美雪ちゃん!」
私は出来るだけ元気よく美雪に挨拶した。
けれど、美雪からは挨拶が返って来なかった。
「美雪ちゃん?」
「あっ、うん! おはよう、みどりちゃん……」
私がもう一度声を掛けると、美雪は挨拶してくれた。
けれど、やっぱり変だ。
元気がない。
私が心配している顔をすると、美雪は慌て出した。
「み、みどりちゃん⁉ 早く行こう!」
「う、うん! 美雪ちゃん!」
それから美雪は合格発表が行われる高校へ足を進めた。
私も美雪に続いたけれど、やっぱり変だ。
いつもなら、美雪は私の隣を歩いてくれる。
なのに、美雪は私に背を向けて歩いてる。
「ねえ、ハイカラさん。美雪ちゃん、変じゃない?」
「そうですね……。マーちゃん殿の飼い主殿の様子は変ですね!」
今、私が心の中で話している、私の左隣に居る、黒髪で、日本人形のような顔をした、
年齢不詳の女性の幽霊は、ハイカラさん。
私の守護霊である。
ハイカラさんは人では私以外には見えないし、声も聞こえない。
そして、私とハイカラさんは普通に話す以外にこうやって心の中でも話す事が出来る。
「美雪ちゃん、何かあったのかな?」
「そうですね。いつものような元気を全く御見受け出来ません!」
「やっぱり……。ハイカラさん、私、美雪ちゃんに聞いてみる!」
「承知しました」
美雪が心配になった私は、ハイカラさんを置いて、美雪に駆け寄った。
「ねえ、美雪ちゃん!」
「なぁ~に? みどりちゃん、早く行こうよぅ!」
私が追い付いても、美雪はもっと早く歩き、私に背を向け続けた。
やっぱりおかしい。
いつもなら恥ずかしい事なんか気にせずに、私の腕を掴むのに。
私と並んで歩く事を拒んでいるみたいだ。
私はその理由を考えた。
ここ最近での美雪とのやり取りを思い出せるだけ思い出した。
それでも分からなかった。
だから、
「美雪ちゃん待って!」
て、言って、私は美雪の左腕を掴んだ。
すると、美雪は私に背を向けたまま立ち止まった。
それから大きく息を吸ってから話し出した。
「ね、ねえ、みどりちゃん……」
「どうしたの美雪ちゃん。何かあったの?」
私が聞くと、私の右手から美雪がふるえているのが伝わって来た。
よく考えれば、さっきの声もふるえていた。
やっぱり何かあったんだ。
そう思うと、心臓がドキッと強く拍動した。
結構痛いぐらいに。
すると、私に不安が訪れた。
美雪から打ち明けられる事を受け止める事に対して。
でも、受け止めなきゃいけない。
だって、私は美雪の親友だから。
そう思い直した私は一度呼吸を整えて、美雪と話す事にした。
勿論、腕を掴んだままだったけど。
それでも、まだ美雪は振り返ってくれなかった。
「美雪ちゃん。何かあったの?」
「あ、あのね、みどりちゃん。お願いがあるんだ……」
「お願い? 何でも言ってよ」
「もし、もしね……。私が落ちてても、みどりちゃん、親友でいてくれる?」
「へっ⁉」
一瞬、美雪に何を言われたのか分からなかった。
その私の声を聞いた美雪は振り返らずに話し続けた。
「もう今更遅いんだけどさ、何か全然試験が上手くいかなかった事ばっか思い出されてさ……。
私、筆記試験も、演技の試験も、面接だって何にも上手くいかなかったの。
だから、試験が終わってすんごく落ち込んでたんだ……。
でも、みどりちゃんはそうじゃなかった。
羨ましかった。ずっと、みどりちゃんが……。
私、今日まで苦しかったんだ
自分の不甲斐なさのせいで みどりちゃんとの約束を破ってしまったからさ……。
みどりちゃんに何て言えばいいのか、ずっと迷ってたの」
ここまで話し終えると美雪は大きく深呼吸した。
そして振り返ってくれたけど、その顔は太陽の光が逆行だったから見にくかった。
でも、泣いているのは分かった。
だって、涙が光っていたから。
その美雪の涙に私は何も言えなかったけれど、美雪は笑って言ってくれた。
「みどりちゃん、ごめんね。私、高校の約束、守れそうにない。
でも、私とこれからも親友でいて!」
美雪の顔は真剣だった。
その勢いに負けて、私は握った右手を離しそうになった。
でも、私は強く握った。
「み、みどりちゃん? どうしたの? 痛いよ……」
「美雪ちゃん……」
「な、何?」
「私、怒ってるんだけど?」
「えぇっ⁉ や、やっぱ私が試験に落ちて、約束を破ったから?」
「違う‼」
私は美雪に負けないぐらいの大声で叫んだ。
近所迷惑なんて考えずに叫んだ。
だって、凄く腹が立ったんだもの。
「美雪ちゃん、文ちゃんとの約束覚えてる?
私達、これからもずっと親友でいるって言ったよね?
それって、こんな事ぐらいで壊れるものだったの?
それに、私の事、そんな人間だって思ってたの? 酷いよ‼」
言ってしまった。
少し言い方がきつかったかもしれないけれど、後悔はしていない。
だから私は表情崩さずに美雪を真直ぐ見つめ続けた。
でも、 私の勢いに美雪は一言も喋らなくなってしまった。
私と美雪の間を二月の冷たい風が強く吹き抜けた。
でも、私は美雪の腕を離さなかった。
すると、漸く美雪が口を開いた。
「そうだったね! 私ったら何してんのかな?」
「美雪ちゃん……」
「ごめんね、みどりちゃん!
私、みどりちゃんに嫉妬してた」
「美雪ちゃんが私に嫉妬⁉」
「そう! だって、みどりちゃんって凄いでしょ?
あっという間に私なんか追い越されちゃってたから
だから置いていかれたくなくって、私、ずっと みどりちゃんにしがみついていたんだ!
私、こう見えても結構がんばったんだよ?
だけど、やっぱり置いてかれたんだって思ったらさ、つい、あんな事を言っちゃったの!」
意外だった。
美雪がそんな事を思っていたなんて。
意外だった。
美雪が私に弱い処を見せるなんて。
でも、少し嬉しくって、体がくすぐったくなった。
だから、私は大人の微笑をしてしまった。
すると、美雪はあんぐりと口を大きく開けた。
「あぁーーっ⁉ 出たぁ!
みどりちゃんの大人の微笑‼」
「うん! だって嬉しかったんだもん!」
「嬉しかった?」
「そう! また親友の美雪ちゃんの事を知れたから!」
嬉しすぎた私は美雪への思いを沢山話した。
美雪のおかげで、どれだけ私が救われたのかを。
がんばってこれたのかを。
それから、大好きっていう気持ちと、さっきまで私が美雪と同じ事を考えていたって事も、。
すると、美雪は今までに見た事もない驚きの顔になった。
「みどりちゃんもそんな事を思ってたの⁉」
「そうだよ。でもね、何だか私、思うんだ。
二人共受かってるって!」
「そ、それは難しいかも……」
「難しくなんかない! 私が言うんだからそうなの!」
苦笑いしている美雪に私はそう言った。
ねえ、美雪ちゃん。
この言葉を覚えてる?
この不思議な魔法の言葉。
そう、美雪ちゃんがクラス編成の時に言ってくれた言葉。
何故か今、使いたくなったの。
だって、絶対にそうなる気がしたから。
すると、美雪は、「それ、私が言ったやつ!」て叫んで怒った。
だから、私は、「そうだよ!」て言って、美雪の腕に抱き着いた。
偶にはこういうのも悪くない気がする。
どうやら美雪も同じ気持ちみたいで、やっと笑ってくれた。
「じゃあ、美雪ちゃん、行こう!」
「うん! みどりちゃん!」
それから私達はくっついたまま合格発表が行われる高校まで歩いた。
それはそうしてないと二人共、不安だったからだ。
そんな私達がその場所に到着すると既に大勢の人が集まっていて、
今か今かと合格発表の時を待っていた。
それを見た私達はもっと不安になってしまった。
だから、私達はくっついたままだった。
そんな私達の前に白い布で覆い隠されたボードが運ばれて来た。
きっと、これが合格者の番号が書かれているものなんだろう。
そう思っているとチャイムが鳴り、その白い布が一気に外された。
私は、小松 みどり。
美雪ちゃん。やっぱり私達って、似た者同士だね。
同じ事を考えてたなんて……。
でも、大丈夫だよ!
そんな私達はきっと同じ結果だから……。




