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運命の結果発表と報告

 【みどり】達は合格者の番号が並んだボードを目を皿にして見た。

 自分達の番号があると信じて。

 果たして二人の番号はそこにあるのか。

 そして、その結果を二人は中学校へ報告するのだが……。

 

 ボードを覆い隠していた白い布が取り外された。

 その瞬間、この場は歓喜と落胆の声が入り乱れた。

 私はどっちの声を発するのか。

 自分の番号を探すのは怖かった。

 だけど、

「あった……。あったよぉ‼」

て、叫ぶ事が出来た。

 夢みたいだ。

 自分の番号が合格者の中にあるなんて。

 何度見てもあるから夢じゃないんだ。

 やっと夢から覚めた私は思いっきり美雪に抱き着いてしまった。

「美雪ちゃん! あったんだよ! 私の番号‼」

「……」

「み、美雪ちゃん……?」

 美雪は一点を見つめたまま固まっていた。

 私の声も、抱き着いている事にも気付かないぐらいに。

 どうしよう……。

 これは、まさか本当に美雪の言う通りになってしまった⁉

 もしそうなら何て言えばいいの?

 勢いでああは言ったけれど何て励ませばいいんだろう……。

 私まで固まってしまった。

 すると、ハイカラさんの扇子の風を感じた。

 ハイカラさんとは、私の守護霊である。

 恐らく今は私の後ろにいる。

 ハイカラさんは、黒髪で、日本人形のような顔をした、年齢不詳の女性の幽霊だ。

 一応人では私以外にその姿は見えず、声も聞こえない。

 なのでこんな大勢の人だかりで一緒にいても大丈夫という訳だ。

 そして、ハイカラさんは奇跡を起こせる不思議な扇子を持っている。

 この扇子の不思議な力で私は何度も助けられ、そして……。

 まあそうでなかった事もあったけれど、多くの事で助けられた。

 今回はどんな奇跡を起こしたんだろう。

 私がその時を待っていると、それはすぐに分かった。

「み、み、みみどりちゃん……」

「美雪ちゃん?」

「……ったの」

「へ?」

「あったの、私の番号!」

「ほ、本当⁉」

「あったんだぁ‼ みどりちゃん、私受かったんだぁ‼」

「良かった! 美雪ちゃん、本当に良かった‼」

 朝一の不安なんてすっかり忘れてしまった。

 私達は周りに負けないぐらい大声を出して、抱き合って喜びを分かち合った。

 二人共大粒の涙を流しながら。

 だから、たぶん二人共もの凄い顔になってる。

 それでもいいんの!

 こんなにも嬉しいのだから。

 私が美雪と喜びを爆発させていたら、ハイカラさんのすすり泣く声が聞こえてきた。

 そっか、ハイカラさんもずっと私を見守ってくれていたんだった。

 ハイカラさん、ありがとう。

 今、私がこうやっていられるのは、ハイカラさんのおかげだよ!

 ハイカラさん、大好き!

 私は心の中で何度もそう言った。

 すると、泣いているせいかあまりはっきりとは聞こえなかったけど、

ハイカラさんが喜んでくれている事が分かった。

 それが分かると、もっと私の目から涙が溢れてきた。

 暫く涙は止まらなかったけど落ち付いて来た私達はまずは合格者の番号の処で写真を撮る事にした。

 まずは美雪。

 そして、私の順で撮り、それから二人で一緒に記念撮影した。

 一応ハイカラさんにも入ってもらったけれど写らなかったのは残念だった。

 そうやってまだ合格の喜びの余韻が残っていて名残惜しかったけど、私達はここを離れる事にした。

「さってっと! じゃあ、みどりちゃん、行きますかねぇ!」

「うん、美雪ちゃん!」

 私達はこれから合格した事を報告する為に中学校に向かう事にした。

「ねえねえ、みどりちゃん。誰に一番に報告する?」

「勿論、阿部先生だよ!」

「やっぱそうだよね! んじゃ私もそうしよっと!」

「えぇっ⁉ 美雪ちゃんは演劇部の顧問の先生とかじゃなくって?」

「ぅまあ、それもそうなんだけど、阿部ちゃんにも自慢したいしね?

 みどりちゃんと同じ高校に行けるって事をさ!」

「美雪ちゃんったら……」

「その後、そっちにも報告に行くからさ、みどりちゃんも一緒に来てね!」

「勿論行くよ!」

「お願いしまーっす!」

 そうやって笑い合えている私達は駆け足で中学校へ向かった。

 その途中、私は美雪を置いて行きそうになり、怒られてしまった。

 そう言えば美雪は足が遅い方で、私は早い方だったのだ。

 それを思い出した私はしっかりと美雪に右腕を掴まれ、また中学校を目指した。

 やっぱりこのスタイルは安心出来る。

 こうまでもとは言わないけれど、またこうやって美雪と並んで登校出来ると考えると、

私は、くすっと笑ってしまった。

「あぁーーっ! 出た出た! みどりちゃんの大人の微笑⁉」

「えっへへ! そうだよ!」

「どしたの? 何かいい事あった?」

「あったよ!」

「えっ? 何何? 教えて!」

「ふふっ。それはね、来年も美雪ちゃんとこうやっていられる事だよ!」

「みどりちゃん……」

 私のその言葉を聞いた美雪はぽかんとした顔になった。

 けど、私の腕はしっかりと握ったままだった。

 それからとびっきりな笑顔になった美雪はもっと強く私の腕を握ってきた。

 そうされると私もとびっきりの笑顔になれた。

 見えないけれど、きっとハイカラさんもそんな笑顔でいる。

 そう感じた私は、さらに笑顔になれた。

 そうして私達はずっと笑ったままで中学校へ到着した。

 そこから真直ぐ技術室へ向かい、

その隣にある普段から阿部がいる技術教員室の部屋のドアをノックした。

「は、はい!」

「阿部先生。小松です!」

「宮本もいまーす!」

「お、おう……」

 阿部の声は変だった。

 しかも、色々な物を落としたような音まで聞こえる。

 何かこう、慌てているというか、焦っているというか……。

 ドア越しでも分かるぐらい阿部は変だった。

「あの……。阿部先生。忙しいのなら……」

「いやいやいや⁉ 大丈夫だから‼」

「そうですか。では、失礼します」

「失礼しまーっす!」

 違和感があったけれど、阿部がそう言うのなら、私達はその部屋に入る事にした。

 そして、ドアを私が徐に開けるとそこには座っている阿部がいた。

 その阿部は何故か私達とは目を合わそうとはしなかった。

「あ、あの……、阿部先生……」

「な、何だ、小松に宮本?」

「ねえねえ、阿部ちゃん、何かあったの? 変だよ?」

「い、いや……。特にないが……」

「もうっ! 変な阿部ちゃん!

 何か言いたい事があるんならはっきり言いなよ!」

 美雪が怒ると、阿部は深呼吸して、自分を落ち着かせようとした。

 けれど、右足が貧乏ゆすりしてる。

 だから、阿部はまだ落ち着けていないのが分かった。

 それでも阿部は私達を見つめ、こう言った。

「そ、その……。二人共、桜は咲いた……、のか?」

 そう、阿部は私達を心配していたのだ。

 恐らく、生きた心地ではなかったのだろう。

 良く見ると、二月だと言うのに、結構な汗をかいている。

 それに気付いた私達は顔を見合わせ、にっこりと笑い。同時に阿部を見てこう言った。

「咲いたよ! 二人共ね!」

 その私達の顔と言葉で阿部の顔にも笑顔の花がやっと咲いた。

「おおおっ! そうかそうか! 先生は信じてたからな!」

「うっそだぁ! 阿部ちゃん正直だから、顔に心配で心配でたまらないって書いてるよ?」

「そりょそうだ! 俺は宮本が心配で心配でたまらんかったからな!」

「もうっ! 阿部ちゃん‼ 素直に喜べないの?」

「喜んでるじゃないか! おめでとう、宮本、小松!」

 こう言った阿部の顔は笑顔の花が満開だった。

 そこに少々輝く涙の雫が混じっていたけれど。

 それを見た私達の顔も笑顔の花が満開になった。

 その後、阿部は何回も、「おめでとう」て言ってくれた。

 それに対し、美雪は、「もういい!」て言ってたけど、私はそうではなかった。

 やっぱり何回聞いても嬉しい。

 特に大切な人から言われるこの言葉は特別だ。

 だから、私にしか聞こえないハイカラさんからの「おめでとう」て言葉は、

嬉しすぎて涙がまた出てしまった。

 その涙を見たハイカラさんも泣いていた。

 そんな色々な感情になった私は家に帰り着いた。

 すると、心配性の母も阿部と同じような顔で私を出迎えた。

 けど、私の顔を見てすぐにとびっきりの笑顔になって、「おめでとう」て言ってくれた。

 さすがは私のお母さん。

 私を信じていたみたいだけど、心配性は治らない。

 だから、私以上に苦しかったんだと思う。

 けど、私の顔を見ただけで、分ってくれた。

 そんな母に何回も私は、「ありがとう」て言って感謝の気持ちを伝えた。

 そうやって二月のある日も終わり、いよいよ中学三年生の生活も残りわずかとなった。



 私は、宮本 美雪!

 やったね やったね やったね、みどりちゃん!

 私達、合格したんだよっ!

 これからも一緒の高校に通えるんだよ!

 嬉しすぎる‼

 にしてもさ、阿部ちゃんって嘘をつくのが下手だよねぇ?

 心配だったんならそうだって正直に言えばいいのにね~え!

 んまあ、いいんだけど……。

 他のみんなはどうだったのかな?

 文ちゃんなら、大丈夫だよね!

 そうに決まってるんだから♪


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