白熱したクラスマッチの結果は如何に?
絶対に勝ちたいと思っていても、もう【美雪】は近くにいない。
絶体絶命になった【みどり】はそれでもボールを手に立ち上がる。」
果たしてドッヂボールの行方は如何に⁉
美雪が外野の守備位置につくとホイッスルが鳴りドッジボールの試合は再会された。
そして、ボールを持っている私の手がふるえ出した。
どうしよう……。
無事に外野にボールを投げて回せるだろうか?
色んな不安が私の体にのしかかってくる。
すると、私の体が重くなり、ボールすら持てない気がしてきた。
「みどりさん! しっかりなさってください!」
でも、そんな私に、ハイカラさんが声を掛けてくれた。
ハイカラさんとはコートの外にいる、黒髪で、日本人形のような顔をした、
年齢不詳の女性の幽霊の事である。
ハイカラさんは私の守護霊で、人では私以外にはその姿は見えず、声も聞こえない。
でも、私とハイカラさんは心の中で会話が出来る。
なので、こんなに応援の声で溢れている体育館でもハイカラさんの声はちゃんと聞こえるのだ。
「分かった、ハイカラさん!」
そのハイカラさんに心の中で返事をした私は大きく頷いて美雪を見た。
すると、美雪も頷いてくれ、私は山なりだったけど美雪目掛けボールを投げる事が出来た。
そして、美雪がそのボールを受け取り、再び試合が動き出した。
美雪は即コート内の相手に当てるのかと思いきや、まさかの八木にボールを回したのだ。
そして、透かさず八木は、斎藤の左肩にボールを当て、コート外に送り出したのである。
いつの間に美雪と八木が連携出来るようになっていたのかはさておき、恐ろしい連携だった。
思えばこの二人の連携でここまで勝ってこれたのだ。
特に八木は味方になるとここまで心強いのかと思うと、私は身震いした。
でも、そんな事をしている暇はなく、相手のクラスも中々手強い連携を見せつけてきた。
ボールが次々と内野と、外野を行き来し、私と八木を引き離していったのである。
それに気付いた時には既に相手の思惑にはまっていたのだ。
そう、相手の目的は八木と私とを引き離す事だったのである。
性格に言えば、八木さえコート外に送り出せば、あとは勝てる。
相手は、そう思っていたのだ。
そして、相手の思惑通りになりそうだった。
八木目掛けてボールが投げつけられ、八木の左肩に当ったボールははじかれたのだ。
でも、その時だった。
「みどりさん、そのボールを受け止めるのです!」
そうハイカラさんの声が聞えた。
だから、私は迷わずそのボールを取りに行った。
「みどりちゃん⁉」
すると、美雪の私を心配する叫び声が聞こえた。
だけど、私は肘の痛みと引き換えにボールを見事受け止めていたのだ。
そして、体育館はどよめきが沸き起こり、試合は一時的に止まってしまった。
その時、知らない内にチャンスが訪れていたのだ。
でも、そのチャンスを美雪は見逃さなかった。
「みどりちゃん! パスッ‼」
その美雪の声で我に返った私は痛みに耐えながら、美雪にボールを両手で投げた。
恐らく、へなへなした軌道だったと思う。
でも、そんなのは関係なくボールは美雪に渡り、透かさず美雪は上田にボールを当てたのだ。
そして、試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。
私は何が起きているのかが分からなかった。
体育館中から色んな声が聞えたんだもの。
それは、歓喜の声から称賛の声。
悔しがる声から驚きの声に渡り、多種多様だった。
その声の渦の中、私が呆然としていると美雪が駆け寄って来た。
「みどりちゃん! すぅーーごかったぁ!
良くボールを受け止めたね‼」
「み、美雪ちゃん⁉ 私は無我夢中でボールを拾っただけだよ?
それに、美雪ちゃんが最後を決めたじゃない?」
「でもでもぉ! みどりちゃんがボールを取ったから私が決めれたんだよぉ!」
美雪は私を褒め続けた。
そうされると、何だか嬉しくなってきた。
だから、肘の痛みを私は忘れてしまった。
その後、私達は整列してBクラスに一礼した。
改めて向かい合って見ると、上田と斎藤、それに三原は泣いていた。
恐らく、上田が泣いてしまった事に他の二人はもらい泣きをしたのだ。
それだけ上田はこのクラスマッチへの思い入れが大きかったんだろう。
私には分からないけれど。
けど、他の二人がもらい泣きした事は、分かる。
それだけこの三人が仲が良いからなんだ。
私にもそんな二人がいるから分かった。
そんな熱血マンガの様な友情を見せつけられた私は美雪とコートを離れた。
すると、文が私たちに駆け寄って来た。
「小松さん、宮本さん、お疲れ様!
二人共、とっても凄かった!」
「文ちゃん、ありがとう! 文ちゃんの応援も凄かったぁ!」
「宮本さん。聞こえてて良かった!」
文は少し声が枯れていた。
それだけ大きな声を出して応援してくれていたのだろう。
ありがたい事だ。
私が文にも感謝していると、木田が近づいて来た。
「小松さん、お疲れ様でした!」
「ありがとう、木田君」
「しかし、最後の小松さんの気迫は凄かったですね! 僕は感動しました!」
「そ、そうなの……」
私が苦笑いしていると、美雪が話に割り込んできた。
「木田ぁ? 最後、決めたのって、わ、た、し、なんですけど?」
「おお、そうでしたね! 宮本さんも、お疲れ様でした!」
「もって……。んっまあ、木田だから許してやっか!」
美雪は不服そうだったけど、笑った。
すると、今度は平井が近づいて来た。
「おっす! 小松さん、凄かったな!」
「ありがとう、平井君。平井君のシチューのおかげだよ!」
「おうよ! それは良かったぜ!」
「あぁーーっ! やぁっぱそうだったんだ‼
平井、今度、私の時もサービスしなさいよ?」
「何のこった?」
平井は惚けて、ふっと笑った。
それに美雪はさらに怒っていたけど、私達はみんな笑った。
そんな私達に今度は伊藤と、大隈が笑いながら近づいて来た。
「なあなあ、平井。何笑ってんの?」
「大隈、お前には関係ない事だ!」
「そう冷たい事、言うなよ? 俺と、お前の仲じゃんか?」
「知らん!」
大隈がからかうと、平井は私達から離れてしまった。
私が平井の背を見送っていると、伊藤が話し掛けてきた。
「よっ、小松さん。お疲れっす!」
「伊藤君、お疲れ様でした!」
「いや、でもまさか小松さんが最後まで逃げれるとは思ってもみなかったぜ」
「まあ、伊藤君のアドバイスのおかげかな? 本当に助かった。
ありがとう!」
「気にすんな。それよか、小松さん。腕は大丈夫か?」
伊藤に言われるまで忘れていた。
私は試合中、腕をすっていたのだ。
体育館だから小石とかはないけれど、摩擦熱で凄く痛かったのに……。
言われると、その痛みが思い出されてしまう。
冬服の体操着をめくり上げる勇気がないくらい、痛みが出てきた。
「そう言えば、痛い気がしてきた……」
「だよな……。あれは痛いやつだ! 骨とかは大丈夫そうか?」
「多分ね……。擦っただけだと思う……」
「ん、まあ一応、保健室に行ってきなよ」
「そうする……」
肩を落とした私は美雪と文に付き添われ保健室へ向かった。
その私の背を木田と、伊藤が心配そうに見守ってくれていた。
そして、私が保健室で治療を受けると、やはり擦り傷だけのようだった。
けれど、消毒がかなり痛い。
恐らく、私の経験上、この擦り傷は治りがかなり遅い部類だ。
そして、お風呂でかなりしみる部類でもある……。
こんな痛い思いをしたけれどとても良い結果と経験をもたらしてくれたクラスマッチも終わり、
私の中学三年生の二学期は終わったのだった。
私は、宮本 美雪!
ぅもーーーーーうっ! みどりちゃん凄すぎ♡
格好良かったぁ!
でも、手、大丈夫?
心配だよ……。
じゃあさじゃあさ、もうみどりちゃんが怪我しないようにって事もお願いしなくっちゃね! えへへ♪




