修学旅行 二日目 まさか、まさかの事ばかり⁉
修学旅行二日目。
【みどり】達はプロ野球の観戦をしていた。
そして、その試合の結果は……。
さらに、【みどり】達にとんでもない事が待ち伏せていたのだ。
修学旅行二日目も残り僅かになった。
今、私は京セラドームでプロ野球の観戦をしている。
そこで西園寺いち推しのピッチャーは九回一二〇球を超える力投の無失点でマウンドを下りた。
あとはこの九回の裏の攻撃で一転でも取ったら西園寺が応援しているチームが勝ち、
そして、西園寺いち推しのピッチャーに勝ち投手の栄光が付いてくるのだ。
だから、西園寺が応援しているチームを応援している人達の応援にもさらに拍車が掛った。
「ぅうーんっ! みんな、がんばってよぅ! さっきのピッチャーに勝を付けてあげてっ!」
「さあ! 皆さん! 気合いを入れて、立ち向かうのです!」
このように、美雪もハイカラさんも一段と大声で応援している。
美雪とは、私の幼馴染で、親友の女子である。
そして、ハイカラさんとは、私の横にいる、黒髪で、日本人形のような顔をした、
年齢不詳の女性の幽霊の事である。
私の守護霊であるハイカラさんは、人では私以外に姿は見えず、声も聞こえない。
だから、こんなに大声で応援しても大丈夫という訳だ。
そんな二人に挟まれている私は心の中で、そっと応援していた。
どうか、西園寺いち推しのピッチャーに、勝ち星が付きますように。
どうか、私達が笑って帰れますように……。
そして、木田はと言うと、
「ちょっとぉ⁉ 木田ぁ‼ ちゃんと応援しなさいよ!
何、呑気にノートに書いてんの⁉」
と、美雪に怒られていた。
木田はこの試合の間、ずっとノートに何かを書き留めていた。
私と木田は美雪を挟んで席が離れていた為、何を書きとめているのかまでは分からなかった。
だけど、それが何だったのかこの後、分かった。
「宮本さん。僕はこの試合のデーターを取っていたのです!
面白いですよ? 各投手の、対右打者と、左打者とではですね……」
「そんな事より応援しなさいよ‼」
「そんな事ではありませんよ‼
応援したところで、打てない人が打てるとは思えません!
それに、数値は嘘をつきません‼
いいですか、宮本さん。
次、マウンドに上がる投手は、かなりの凄腕です。
防御率も高い。
ですが、それは対右打者に対してです!
対左打者になると、結構打たれているのです」
「……。だから、それが何?」
「ですから、僕達が応援しているチームの打者の並びは、左打ちが並んでいるのです!
これはかなり期待できますよ?」
「本当ぉかなぁ……」
木田に言われるまで気にしていなかったけど、次のバッターは、左打ちのようだった。
そして、ネクストバッター図サークルなる所で待機している選手も左打ちのようだった。
私は、木田のそれに期待した。
きっと、そうなる!
そう信じて、今度はしっかりと目を開けて試合を観た。
すると、最初のバッターは駄目だったけど、
次のバッターは快音を鳴らしボールは外野まで飛んで行った。
そして、打ったバッターの選手はその俊足を生かし一塁キャンバスを蹴って、
一気に二塁キャンバスを陥れた。
そうなると、この球場のボルテージがとんでもない事になった。
選手を応援する音楽も、今回の試合で聞いていないものへとなり、
西園寺が応援しているチームを鼓舞した。
なのに、次のバッターは、変な構えをした。
「ね、ねえ、みどりちゃん! 何であの人、バットを寝かせてんの?」
「さ、さあ……」
不思議なバットの構えだった。
今、打席に立っているバッターはバットを寝かせて持って地面と平行にしていたのだ。
あれじゃあ、ボールが飛ばないのではないのだろうか?
私と美雪、それに、ハイカラさんはそう思っていた。
なのに、私達以外の人はそのバッターを応援していた。
でも、不安がっている私達に木田が教えてくれた。
「あれはですね、犠打というものです。所謂、バントですね。
自分を犠牲にして、塁上にいる方を進塁させる行為なのです!
そして、彼は、バントを決める確率が高いんですよ!」
木田の説明を理解したところで、そのバッターは見事バントを決め、
二塁にいた選手は三塁へと進塁出来た。
そして、次に登場した選手は美雪が応援していた選手で左打ちだった。
「ちょぉっとぉ! また、あの人だよぉーーー‼」
だから、美雪はこのように応援した。
「みどりさん! あの殿方は左打ちとやらですよ! 期待しましょう!」
そして、ハイカラさんも気合いを入れ応援した。
私だって、声を出して応援した。
すると、奇跡が起きた。
何と、美雪が応援している選手が一球で決めたのだ。
ボールは一塁と二塁の間を抜けていき、
相手の選手はボールを取りにいく気力もなくその場にしゃがみこんでしまったのだ。
球場中が大歓声に包まれ、美雪は飛び跳ねる程、喜び、ハイカラさんも拍手を贈っていた。
木田は、恐らく分析通りに事が進んだ事に満足していて何度も頷き、
その隣にいた西園寺は絶叫し、木田の肩を乱暴に叩いていた。
この歓喜の中、私は鳥肌が立ち、自然と涙が出てしまった。
でも、それはちょっぴりだったから誰にもバレなかった。
他にも私より泣いちゃっている人もいた事だし。
そんな中、美雪が応援している選手が他の選手から祝福のドリンク掛を受けていた。
その光景は、まるで小学生が悪ふざけをしているみたいで私は、くすっと笑ってしまった。
それから漸く球場内に落ち付きが戻ると、本日活躍した三人の選手がお立ち台なる場所に登場した。
どうやらこれからヒーローインタビューなるものが始まるみたいで、
トップバッターは勿論、西園寺いち推しのピッチャーだった。
色々な質問に西園寺いち推しのピッチャーは、時折笑いを交え全て答えていき、
次の選手のインタビューとなった。
次のインタビューを受けた選手はホームベースを踏んだ選手で、
はにかみながらも全てのインタビューに答えていったのが印象的だった。
そして、最後の選手は勿論、美雪が応援していた選手だった。
美雪は興奮しっぱなしで、その選手に手を振り続けていた。
こんな感じで行われたヒーローインタビューを西園寺はしっかりとスマホに納め大満足していて、
私達の班の自由行動は大反響で無事に終えるはずだった。
だが、木田がある事に気付いた。
「み、皆さん⁉ 大変ですぅ‼」
「どうしたの、木田君?」
「何よ! せぇーかく、いい感じなのに?」
「いいいですか、皆さん! 今、時刻は午後四時を回ろうとしております!」
「あっ? それがどうした?」
「ですから、今から帰っても、門限の午後五時までに帰る事は不可能なのです‼」
そうだった。
自由行動の門限は、午後五時だったのだ。
今から帰っても一時間半はかかるので、完全にアウトだ。
「どぉーすんのよ! 西園寺ぃ‼ あんたのせいよ‼」
「知るか‼」
「ま、まあ、こんな所で言い争っている暇はありません‼ 出来るだけ早く帰りましょう!」
私達は全速力で走った。
でも、結果は大して変わらなかった。
門限を約三〇分オーバーで帰り着き、私達は石川から怒られた。
当然の結果だった。
でも、何でだろう。
怒られているはずなのに、何とも思わないのは。
いや、遅れた事には悪いと反省の気持ちはある。
だけど、以前の私なら唯、反省もなく泣いていただけだった。
それは、きっと一緒に怒られているこの班のみんなのおかげなんだろう。
西園寺は、何を言われても悪びれる事がなく、余裕の顔をしていた。
木田は、石川をすり抜け明後日の方向を見つめ、謝っていた。
そして、美雪は必死に謝ってはいたが、これは演劇部で鍛え抜かれた演技だ。
親友の私だから、分かる。
こんなみんなと怒られているから、石川に何を言われても私は泣かなかった。
寧ろ、少し楽しんでしまっている自分がいて、少し不思議な気持ちになった。
そうやって石川の説教の時間は過ぎ去り、私達は解放され、笑って別れたのだった。
俺は西園寺 清孝。
ふん! 石川の奴、うるせぇな!
いつまでも、ぐだぐだ言ってんじゃねえつーっの!
それに、宮本‼
余計な事言うんじゃねえぞ‼




