自然の家キャンプのフィナーレで、まさかのあの人までもがノリノリに⁉
色々とあった自然の家キャンプも、残すイベントは、キャンプファイヤーのみとなった。
そして、キャンプファイヤーが始まった。
すると、機嫌が悪かった【美雪】は……。
さらに、あの人も……⁉
私と大隈が楽しく話している事を良く思っていなかったのは西園寺だった。
「おい、大隈‼ いつまでサボってんだ⁉」
「はぁ? サボってなんかねえし‼」
「時間がねえんだ‼ 片付けなんか小松にやらせといて、さっさと行くぞ‼」
「分かってるけど、洗い物が沢山残ってんだって!
小松さんに全部任せられねえだろ‼」
「お前のその手で洗い物なんか出来んのか?」
「そ、それは……」
大隈は西園寺に尻込みした。
そして、気まずそうな顔で私を見た。
大隈は昼間、右手首を捻った。
軽度のものらしく、数日間動かさなければ良いみたいだ。
ちなみに、彼はバスケット部で、ポイントガードというポジション。
さっき聴いたばかりで良く分からないけど、かなり重要なポジションらしい。
そんな彼はこの夏、中学生最後のバスケットの試合に中学人生を懸けているみたいだ。
私はその試合に彼を無事に出場させたい。
そもそも、負傷者に洗い物をさせる気は、全くない。
なので、
「こっちは私がやるから、大丈夫だよ!」
と、爽やかに言ってみた。
すると、大隈は気まずそうな顔のまま、ごめんと謝り、西園寺と何処かへ行ってしまった。
それから私が残りの洗い物をしようとすると、美雪が手伝いに来てくれた。
「ちょっと、みどりちゃん‼ 何なの、あの男子達は‼」
「多分、キャンプファイヤーの時にやるダンスの最終的な打ち合わせをするんじゃないかな?」
「そんなの勝手すぎ‼」
「でも、大隈君は怪我してるしねぇ」
「そうかもしれないけど、西園寺はこっちの手伝いなんて、なぁーーんにもしなかったんだから‼」
美雪が言う、こっちの手伝いとは、飯盒と火の後始末の事である。
先程、分担した事の後処理だ。
一応、常識として終わった者は手伝う事にはなっていたので、美雪は手伝いに来てくれた。
だが、私の手伝いに来てくれたのは、美雪だけだった。
「美雪ちゃん、他の人は?」
「それがさ、みんな、いないんだよね……」
「何で?」
「うーーん……。何か、お昼のリクリエーションの時から、みんな、変なんだよねぇ……」
美雪は、まだ知らないみたいだ。
八木が、私達に仕向けたあれの事を。
とりあえず、私はその事を美雪に伝えた。
すると、
「なぁーーに、それ⁉ メェメェの奴、何がしたいの?」
と、美雪は案の定、怒り出した。
「分からないけど……」
「それにしても佐藤さんまで巻き込むなんて最低‼ そんなに私達を省きたいの?」
「そうだね……。でも、大隈君は、分かってくれてるし」
「そうかもしれないけど‼ 何かメェメェの奴に罰でも当たらないかな‼」
美雪と話していて、私は不安になった。
いくら大隈が分かってくれていても、他の生徒はどうなんだろう……。
もし、分かってくれなかったら?
美雪は好きだけど、そんな関係とは思われたくない。
そんな複雑な心境の中、二人で洗い物を進めていくと、
「あの料理長以外にも、メェメェの事を信じていない者もいるようですよ……」
と、安心出来るハイカラさんの声が私にだけ聞えた。
ハイカラさんとは、私の後ろにいる女性の幽霊の事である。
この黒髪で、年齢不詳の女性の幽霊、ハイカラさんは、私の守護霊である。
言うまでもなく、ハイカラさんの姿は、私以外には見えず、声も聞こえない。
そして、私とハイカラさんは、心でも会話が出来る。
「他にもって……」
私が振り返ると、そこに、ハイカラさんと並んで平井がいた。
「平井君、どうしたの?」
「どうしたのって……。小松さん。何か手伝う事は?」
平井は徐に私達に近づいて来た。
「えっと、もう、大分、美雪ちゃんと終わらせちゃったし……」
「悪かったな。炭の処理、俺一人だったから時間が掛かっちまったんだ」
平井は私達を避けていた訳ではなかった。
唯、力仕事を一人でこなしていただけだったのである。
それが分かると、さっきまであった複雑な気持ちは薄れていった。
そして、
「そうだったんだ。ありがとう、平井君!」
と、私は色々な思いを込め平井に感謝を伝えた。
それから、
「じゃあ、俺は生ごみの処理しとくわ」
と、平井は私達の手伝いをしてくれた。
「へえ、ぷにの奴、案外良い奴じゃん!」
「美雪ちゃん……。ぷにって、平井君の事?」
「そう。何かあいつ、ぷにぷにしてんじゃん!」
美雪の あだ名のセンスは時々、どうかと思う時がある。
だけど、
「ぷに殿は、みどりさん達が心配で、
マーちゃん殿の飼い主殿に先に みどりさんの下へ行くように伝えたのです」
と、ハイカラさんは大抵の美雪が付けたあだ名をそのまま使う。
「ハイカラさんまで……」
私は苦笑いをしながら美雪と洗い物を終わらせた。
それから少し休憩を挟み、キャンプファイヤーが始まった。
静かなキャンプ場にキャンプファイヤーのバチバチという音が響き、辺りが明るくなると、
生徒達から歓声があがった。
そして司会を務める男女二人が拡声器を使い色々な余興の進行を手助けし、
いよいよ自然の家キャンプはフィナーレを迎えた。
司会の紹介でキャンプファイヤーの前に何所からともなく現れた、
大隈、西園寺を含めた男子九人がフォーメーションを作った。
その彼等の服装は先程迄のとは違い、洒落たものに変わっていた。
そして、西園寺の掛け声の後すぐに、今流行の音楽が流れだした。
すると、女子生徒の黄色い声援が飛び交い出し、
その中を今流行の音楽に合わせ男子九人はキレッキレのダンスを踊り出した。
私は黄色い声援とは程遠い世界の人間なので、黄色い声援を飛ばす事はなかったが、
そのダンスに見惚れていた。
しかし、美雪はのりのりで、ハイカラさんもそうだった。
「いいぞ! 西園寺‼ 大隈‼ 伊藤‼」
「箸を返さない殿方も、料理長も、格好良いですね!」
「ハイカラさんまで……」
また苦笑いをしてしまった私だったけど、またこの自然の家キャンプに来て良かったと思えた。
そして、ハイカラさんに感謝した。
だって、今までの私なら絶対にこういうイベントには参加しなかったんだもの。
こういう楽しみを、知らないままだったのだから。
そんな温かい気持ちのままキャンプファイヤーは終了した。
少し寂しい気持ちになった私だったけど、美雪とバンガローに戻った。
そして、慣れない集団の中で寝る事となった。
静かすぎるバンガローは、虫の声、そして、私以外の女子生徒の寝息だけが聞こえた。
そんな中、眠れない私は瞳を閉じていた。
すると、ハイカラさんが優しく話し掛けてきた。
「みどりさん、眠れませんか?」」
「うん……。こういう大人数で寝るのに慣れてないから……」
「ほほほ。まあ、私の時代では家族が多く、大勢で寝る事が普通でしたのに」
「ねえ、ハイカラさん。ハイカラさんの家族って、何人だった?」
「そうですね……。曾祖父等がいた時は、一二人ほどでしたでしょうか」
「一二人⁉ そんなに家に住めたの?」
「ええ、住んでました。それに、女中の方もいらしたので」
「どんな広い家なの……」
「ほほほ。いくら広くても、兄妹が多いと大変でしたのよ?
兄弟の寝相は悪いですし、小さい妹は夜中、もようしたくなると言い出しますし……」
「ハイカラさん……」
「何でしょう、みどりさん」
「トイレに行きたくなった」
ハイカラさんの話を聴いていいたら、私までもトイレに行きたくなってしまった。
だけど、ここは自然の中。
電気等ほぼ皆無である。
それに、何か出そうだ。
そんな中、現代っ子である私は一人でトイレに行けそうになかった。
その私の気持ちを察してくれ、
「幽霊の私でよろしければ」
と、言って、ハイカラさんは私に付き合ってくれた。
私は、小松 みどり。
ねえ、ハイカラさん。
キャンプファイヤー、凄かったね!
西園寺君達、いつダンスの練習してたのかな?
ね、ねえ、ハイカラさん。
ちゃんと、付いて来てくれてる?
あっ、見て、ハイカラさん!
星が凄く綺麗だよ!




