自然の家キャンプの山は、これからだった!
【美雪】と仲良くソフトクリームを食べていた【みどり】に、【八木】が近づいて来た。
そして、【八木】はあの魔の手を【美雪】にまでも向けてしまう。
それからその魔の手は、どんどん拡がっていたが、それに薄々気付いていたものの、
【みどり】達は、取り合えず、夕飯のカレー作りを始めるのだが……。
私と美雪に近づいて来たのは、八木と佐藤だった。
そして、八木が話し掛けてきた。
「小松さん達、中が良いんだね。いっつも一緒にいるんだから」
「そうだけど、何か悪いの?」
「宮本さん、別に、悪いって訳じゃないんだけどぉ……。佐藤さんがかわいそうかなって思ったの。
一人で寂しそうだったよ?」
八木は佐藤を見た。
すると、佐藤は視線を落とした。
「宮本さん、小松さんが好きなのは分かるけど、一緒の班の人を放っておくのって、どうなのかな?」
「別に、放っておいた訳じゃないけど……」
「そう? 私にはそう見えたんだけど……」
八木は美雪を意地の悪い顔で、チラッと見た。
「何が言いたいの?」
「別に? 宮本さん達が佐藤さんを虐めてなきゃいいって思っただけ」
「はぁ⁉ 何でそうなるのよ?」
まさか、八木のあれの矛先が美雪にまで向いてしまった⁉
私の頭が真っ白になっている間に美雪と、八木の言い合いは終わった。
そして、
「行こう、佐藤さん」
と、言い残し、八木と佐藤は私達から離れて行った。
「いーーっだ‼ メェメェの奴、余計なお世話‼ 私達が何を食べようって関係ないでしょ?
ねぇ、みどりちゃん?」
美雪は怒っていた。
そして、同意を求めてきた。
だけど、それが何に対する同意なのか分からなかった。
すると、
「マーちゃん殿の飼い主殿はメェメェが言った、
『二種類の味が味わえるソフトクリームをみどりさん達が選べば良かったのに』
と言う言葉に怒っておられるみたいです」
と、ハイカラさんが教えてくれた。
ハイカラさんとは、私の後ろにいる、黒髪で、日本人形のような顔をした、
年齢不詳の女性の幽霊の事である。
ハイカラさんは私にしか見えず、私にしか、声は聞こえない、私の守護霊だ。
「ありがとう、ハイカラさん」
「いえ。私は、みどりさんの守護霊ですから!
ですが、お気を付けなされ。まだ、メェメェは何かを仕掛けてくるみたいですよ?」
「そうみたい……。美雪には、何もしないでほしいな……」
私と、ハイカラさんが心で話していると、美雪が心配してきた。
「みどりちゃん、大丈夫?」
「う、うん。ごめんね、美雪ちゃん。嫌な思いをさせちゃって……」
「全然! 平気だよ! そんな事よりソフトクリーム、食べようよぅ! 溶けちゃう‼」
「そ、そうだね!」
それから私達は急いで、残りのソフトクリームを食べた。
そして、私達が戻ると思いも寄らない事になっていた。
何がそうだったのかと言うと、他の生徒が私達を見る目があきらかにおかしかった事だ。
さらに、私達は避けられているようだった。
「何か、変だね、みどりちゃん」
「そうだね……」
この時の私達は知らなかった。
八木のあれの魔の手がすぐ傍まで及んでいた事に……。
釈然としない中、私達は他の生徒から少し離れ自然の家キャンプまでの道を歩いた。
そして、自然の家キャンプに到着し、私と美雪はそれぞれの班に別れた。
それから私は自分の班で、八木と一緒になった。
その八木は、とても怖かった。
何かされた訳じゃない。
何もしないのだ。
何もしてこない事が恐怖に感じた。
そんな針の筵の中で私は過ごし、夕食のカレーを作る時間となった。
その時間は、大隈がはりきるはずだった。
何故なら、彼はキャンプ好きでよく家族とキャンプをし、
キャンプ場でカレーを作る事が生き甲斐と豪語していて、かなり楽しみにしていたからだ。
だから、この少しお高そうなクーラーボックスだって持参した。
それに、秘密の調味料だって、こっそり持参してた。
なのに彼は先程のリクリエーションの帰り道、利き手である右手首を捻った。
そして、八木に付き添われ石川の車で送迎された。
それから彼等と合流すると、彼の右手首は哀れな姿となっていて、
どう見ても料理を出来そうにはなかった。
だが、大隈は野菜を切ろうとしていた。
そんな大隈の傍には八木がいた。
「大隈君、カレー造りは私達に任せて」
「八木さん、大丈夫だって! あっ⁉」
その時、大隈の右手から包丁がぽろりと落ちた。
すると、
「きゃ⁉ ほ、ほら、危ないって!」
と、八木の足元に包丁は落ち、八木は大隈に抱き着いた。
そして、大隈の顔は赤くなった。
「ご、ごめんよ、八木さん‼」
「ぅん、もぅ……。危ないよ?」
八木の猫撫で声で大隈の顔はさらに赤くなった。
そんな二人を私が蚊帳の外から見ていると、何故か美雪の班の四人が近づいて来た。
「あっ⁉ 西園寺に、伊藤‼」
「大隈……。何やってんだ?」
西園寺は、大隈達を冷ややかな目で見た。
すると、大隈は逃げるように八木から離れた。
そして、伊藤が大隈に話し掛けた。
「大隈君、約束のカレー、どうだ?」
「伊藤、それがさ、結構、手が痛くって……」
「出来そうにないか……」
「すまん! 野菜さえ切れれば出来そうなんだが……」
「ったく! 大隈の馬鹿‼」
「西園寺……。そんな事言うなよ……」
この三人は何を話しているのだろう?
私の謎に、美雪が答えた。
「みどりちゃん、ちょっと、聞いてよ‼
あの馬鹿三人組ったら勝手に今夜の料理をカレーにするって決めてたんだよ‼」
「えっ⁉ でも、美雪ちゃんの班ってお昼もカレーじゃなかったっけ?」
「そおーなのっ‼ だから今夜は違うメニューだったのに……。
大隈のカレーを食べるって三人で約束してたんだって‼」
美雪曰く、西園寺達は今夜、大隈のカレーを食べる事をこっそり計画していた。
だから、今夜の食材は西園寺と、伊藤の二人で準備していたらしい。
だが、計画実行を前にして、大隈のトラブルが発生した。
それでもこの三人は大隈のカレーをあきらめていなかった。
「野菜さえどうにかなれば後は何とかなるんだって‼」
「誰が切るんだよ? 言っとくが、宮本は駄目だからな‼」
「西園寺⁉ ちょっと、どういう意味?」
「あぁっ? 昼のあれは何だ? 形は悪いわ、皮を厚く切るわ……。あんなのされちゃ困んだよ‼
折角俺達が用意したもんでな‼」
「ムキィーーーッ‼ あれは私一人じゃないもん‼ 佐藤さんだって切ってました‼」
「じゃあ、佐藤も駄目だな!」
「なぁーによそれ⁉ じゃあ、あんたがやればいいじゃん?」
「俺等は忙しいんだ。ちゃんと作っておけよ!」
その言葉を残し、西園寺と伊藤は、何処かへ行ってしまった。
「うぅぅ……。最悪なんですけど‼」
「ごめん、宮本さん。どうしてもあいつらが俺のカレーを食いたいって言うもんだから……」
「そうじゃなあーーい‼ 西園寺の馬鹿の事‼」
「ああ、西園寺か……」
それから暫く美雪は不機嫌だった。
その美雪を含め話し合いの結果、西園寺の為、野菜を切るのは美雪と佐藤以外がやる事となった。
私はそれをやるのは平井と思っていた。
だって、昼食を作る時、彼は料理好きだと聴いていたから。
なのに、それをやるのは、私だった。
どうしてそうなったのかと言うと、飯盒炊飯で火を使う時に、男子がいないのは却下され、
平井はそっちに回されたからだ。
残るは、八木と、私だったのに……。
「小松さん、頼める?」
大隈が私なんかに頼んできた。
「えっ⁉ わ、私?」
驚いた私は自分を指さした。
きっと、顔は嫌そうな顔をしてた。
でも、大隈はそのまま話を進めた。
「そうそう。何か、小松さんなら出来そうじゃん?」
「上手くはないけど……。普通程度なら……」
「頼むよ! 切ったら、後は俺がするから‼」
頼まれたら、断れない性格の私。
そんな私は、大隈の頼みを断る事は出来なかった。
だから、私は大隈と料理をする事となってしまった。
私は、小松 みどり。
ね、ねぇ、大隈君⁉
なんで、私なの?
もう、笑ってないで、教えてよ!
それに、ハイカラさんまで、何で笑ってるの⁉
し、しかも、西園寺君は、何か怒ってる……。
私、無事に、家に帰れるかなぁ……。




