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私の守護霊は、ハイカラさん  作者: 紅p
 一学期
12/75

中学三年生の五月は、山ばかり!

 【みどり】は、【ハイカラさん】と中学三年生の四月を無事に乗り超え、五月を迎えた。

 だが、そんな【みどり】に、安息の時間は訪れず、

【みどり】に、まさかのあの魔の手が忍び寄っていたのだ。

 

 ハイカラさんとがんばり、私は中学三年生の四月を乗り超えられた。

 そして、五月を迎えた。

 五月と言えば、五月病という言葉がある。

 その言葉は四月になり、新生活を迎え、疲れと四月の終わりから五月の初めにある

ゴールデンウィークの長期の休みで新生活に戻りたくない気持ちにより主に引き起こされるらしい。

 でも、私にゴールデンウィークという休みはなかった。

「みどりさん、朝ですよ。みどりさん、朝ですよ……」

「ハ、ハイカラさん……。今日は、憲法記念日だよ?」

「はあ、それが何か?」

「だから、祝日。学校はお休みなの!」

「ですが、みどりさん。あなたにそれはないのですよ」

「どういう意味?」

「数日前の昭和の日とやらの時にも申し上げましたが、

あなたはこの約二年間、学業を怠ってこられました。

 それを少しでも挽回するには、みどりさんに休日等、ないのです!」

「そ、そんなぁ……」

 そして、私はしぶしぶベットから下りた。

 この黒髪の、厳格で、日本人形のような顔をした、年齢不詳の女性は、ハイカラさん。

 私の守護霊である。

 ハイカラさんが私の守護霊になってから、私に休日はほとんどない。

 あると言えば、日曜日くらいだ。

 その日曜日ですら、起床時間がほんの一時間くらい遅いというだけで、

あとは、平日と変わらない。

 こうも厳格だと五月病の前に違う病気になってしまいそうだ。

 でも、そんな病気になんてなっている暇もなさそう。

 何故なら、ハイカラさんの指導に加え、両親が面白いからだ。

 私が普通に起きて、普通に勉強し、普通に食事をし、学校に行く。

 唯、普通に生活をするだけで両親は驚きを前面に出す。

 少し鬱陶しい事もあるけど、からかい甲斐がある気がして、

普通に生活をするのも悪くない気がしてきた。

 そうして普通に生活をして、世間で言うゴールデンウィークはないまま、

私の中学三年生の五月が、本格的に始動した。

 私の中学では五月に体育祭がある。

 四月にタイム測定を行った結果、私は、男女混合リレーのアンカーに抜擢されてしまった。

 かなりの大役である。

 なのに、練習期間はほとんどなかった。

 その少ない練習機会の中で、私の次に走る最終ランナーは、西園寺である事が分かった。

 西園寺は野球部で体格が良いのに、足は他の陸上部の男子よりかなり速かった。

 だから、数回行われた男女混合リレーの練習において、

私が二位でリレーのバトンを西園寺に渡したとしても、

西園寺は悠々と前のランナーを追い越し、いつも私達のクラスを一位に導いてくれた。

 そうやって体育祭の練習は行われ、男女混合リレーの最終練習日も終わり、

また、私が西園寺を尊敬の目で見ていると、何故か、八木が私に話し掛けてきた。

「小松さん、お疲れ様」

「八木さん⁉」

「小松さんって、やっぱり、足が速いんだね」

「そ、そんな事ないよ」

「そんなに謙遜しないで。実際、タイム測定でも私より速かったんだから」

「まあ、そうだけど……」

 私は嫌な予感がした。

 だって、理由なく八木が私なんかに話し掛けてくるなんて有り得ない事だったから。

 そして、この後すぐにその予感は的中した。

「でもぅ、ちょっと、もったいないよねぇ……」

「えっ⁉ もったいないって、どういう意味?」

「小松さんってさ、ちょっと、足が速くても、バトンを渡すのが下手過ぎじゃないかな?

 あれじゃあ、西園寺君がかわいそう……。

 小松さんは気付いてないみたいだけど、いつも西園寺君がフォローしてくれてるんだよ?

 西園寺君に負担かけちゃって、本番で一番取れなかったら、どうする?

 多分、小松さんのせいになっちゃうよ?」

 始まってしまった。

 これが、八木に近づけない理由の一つ。

 私は何故か、八木の機嫌を損ねてしまったらしい。

 このままでは、あれの対象になってしまう。

 どうにかしてそれだけは阻止するんだ!

 私は無い知恵を巡らし、話し出した。

「えっと、八木さん。どういう風にすれば、良いのかな?

 私、去年まで体育祭なんて出てなかったから、分からないの」

「そうねぇ……。こういうのって、センスの問題だから、小松さんには、無理かなぁ?」

「そ、そんな事、言わないで。教えてほしい! 本番でも、一番になりたいの!」

「一番になりたいの? へえ……」

「そ、そう! みんなに迷惑を掛けたくないし……」

 私は必死に訴えた。

 すると、八木は冷たく笑って、話し出した。

「じゃあ、私と走る順番、代わって」

「えっ⁉ で、でも、それは無理じゃないの?」

「どうしてぇ? 石川先生に頼めば、出来ると思うけど? 何なら、私が頼んであげようか?

 去年まで私が西園寺君にバトンを渡して上手くいってたんだし。

 石川先生も、いいよって、言ってくれると思うなぁ」

 これが、答えらしい。

 ここで私が、yesと言う事が八木のあれの対象にならないベストアンサーみたいだ。

 別に、リレーの順なんか特に拘ってないし、今まで体育祭なんて参加していなかったから、

リレーになんか、拘っていないはずだった。

 だから、そう言うのは容易だったのに。

「あの婦女子……。気に入りませんね‼」

 ハイカラさんが、そうは言わせてくれなかった。

 ハイカラさんの風を感じると、私の傍に西園寺が現れた。

「おい、小松‼」

「は、はいぃ⁉」

「こんな所で駄弁ってないで、さっさと、あれを貸せ‼」

「あ、あれって、何?」

「箸に決まってんだろ‼ 石川の野郎に言うのが、面倒なんだよ‼」

「ま、またなの⁉」

「文句あんのか?」

「いいえ‼」

「じゃあ、さっさと教室に戻れ‼」

「はいぃ‼」

 そして、私は逃げるようにこの場から離れ、着替えを済ませ、

教室で心配性の母が入れてくれている割り箸を西園寺に貸した。

 きっと、この割り箸は返ってはこない。

 けど、これは返ってこなくても、いいんだ。

 だって、私が先に西園寺に貸があったのだから。

 あの時、私は本当は、yesとは、言いたくなかった。

 八木に逆らうとかではなく、私はリレーはあそこで走りたいという気持ちが何処かにあった。

 だから、ハイカラさんの手助けがなくても、yesとは言わなかったかもしれない。

 でも、今の私では、yesと、言っていたかもしれない。

 なので、私に前者を選ばせてくれたハイカラさんと、西園寺に感謝しながら、

天敵である、牛乳と白いご飯の組み合わせを、私は瞳を閉じて食べ続けた。

 それから今日は無事に学校生活を終えられ、またハイカラさんと家路に着くと、

心配性の母から出迎えられた。

 この光景も、もう一ヶ月は続いてるから、慣れてしまった。

 けど、今日は割り箸が消えている事に気付いた母は、何故か、自分が入れそびれたと言い出し、

しかも、私は困っていないのに、謝ってきた。

 ごめんね、お母さん。

 あの割り箸は、訳ありなんだ。

 でも、入れててくれて、とっても助かったよ。

 ありがとう。

 私は心の中で心配性の母に謝罪と、感謝を伝えた。

それから体育祭の練習で疲れている体に鞭を入れ、

いつも通りハイカラさんと勉強をして、休んだ。

 そういった日々を続け、次の日曜日を迎えた。

 この日曜日こそが、体育祭の日である。

 結局、リレーの順に関して、あの日以来、八木に何かを言われる事はなかったので、

私の走る順番は、変わらなかった。

 今更、バトンを渡す事が上手くなる訳はない。

 けど、それを挽回出来るくらい、速く走るんだ!

 クラス、いや、西園寺に迷惑が掛からないように。

 私は、そう心に誓った。

 そして、私は、期待と不安、それに、母お手製の弁当を持って、

美雪と共に、いつもと違う雰囲気で中学校へ向かった。


 私は、小松 みどり。

 あ、あの、西園寺君。

 あ、あのね……、話が……。

 ひええ⁉

 そんな怖い顔しないでぇ‼

 バトンを渡す時、手が震えちゃうよぉ……。

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