3木曜日「誰だって、幸せになりたい」
【木曜日】
お、おはよう。
委員長「おはよう・・寝不足?」
親友にメール出したりして、返事来ないか待ってたら寝るの遅くなったんだ。
来なかったけど。
委員長「まだ見つからないのね。」
うん。
取り巻き「だからさあ、今は目下殺人者として逃亡中なんだよ。」
委員長「やめなさいそんなこと言うの。」
取り巻き「まあまあ。そのうち連絡してくるぜ。人殺して逃げ回ってるけどもう限界って感じで。」
取り巻き「その時は、お前が味方になってやるんだぞ。んで一緒に殺しの旅だな!」
委員長「そんなこと言ってると、またガキ大将に殴られるわよ。」
取り巻き「はーはっはっ。あいつは今日葬式で休みだ!」
取り巻き「曾祖父が亡くなったんだって。」
お悔やみ申し上げます。
・・あ、携帯が鳴った。
・・・・親友のお母さんからだ!
委員長「もしかして見つかったのかも。」
取り巻き「捕まったとか。」
不謹慎だけど、殺人犯でも構わない。無事でいてさえいてくれれば・・
俺は電話に出た・・
親友は行方不明のままだった。
ただ・・火曜に殺された俺の元クラスメイト・・まぁ親友のクラスメイトなんだけど。
そいつが・・親友をいじめていたことがわかったって・・
いじめは・・俺が転校してすぐ始まったって・・
取り巻き「やっぱり!僕の言った通りだ!お前の親友が殺して逃げ回ってるんだよ!」
委員長「やめてよ・・ね、だからといって犯人だって決まったわけじゃないんでしょ?」
うん。
あいつは・・そんなことするやつじゃない。
取り巻き「僕がいい言葉を授けよう。”窮寇は追うことなかれ”」
取り巻き「日本でいうところの、窮鼠猫を噛むだね。」
取り巻き「追い詰められたお前の親友に、思わぬ反撃を受け被害者は亡くなった・・あ、なら事故かもな。」
委員長「その状況だと殺人でしょ・・情状酌量は十分あるけどね・・」
・・そうなの?なんかもうよくわからなくなった。
何があったんだよ・・親友・・
いじめられていたことも知らなかった俺は、親友の資格があるのだろうか?
・・
・・・・
お昼になった。
みんな動画のことが気になっているようだ。
クラスメイト「献金とかさ、GOTOトラベルのことネットで調べたら本当だったし。」
クラスメイト「殺されたら嫌だけど、不幸なやつを救わないのも変だろ?」
クラスメイト「なんだかんだ興味深いこと言ってるよ。自分が殺されたら嫌だけど。」
まぁ、俺も殺されるのは勘弁してほしいな。
取り巻き「はーはっはっ。評判は上々で嬉しいことだ。」
取り巻き「今日はどんな話をしてくれるか気になるよな。気になるよね?」
大体の話は昨日で終わった気もするけど。
5日間も話す内容なさそう。
委員長「そうね。長々と話しても理解しにくくなるんじゃない?」
取り巻き「そんなことないさ。この国の闇は深い。」
取り巻き「5日間と言わず毎日放送してもいいくらいだ。」
委員長「・・一般人が真偽を確かめられないことだから闇なんでしょ。」
委員長「今までの話はネットで調べればわかるような話ばかりだから。そんな話するかしら?」
そうなの?
委員長「殺人件数とか自殺者数とか、統計出てるからね。」
委員長「でも妄想は調べられないわ。他人を殺せば救われるとは思わない。」
取り巻き「未来は常に未知数さ。信じて進めば光明が開ける。」
委員長「手段も大事だと思うの。」
取り巻き「結果がすべてさ。不幸な人に、過程はがんばったから不幸でも構わないよね?なんて言うのか?」
どういう状況かわからないけど、とりあえずお昼食べようよ。
放送はもうすぐだし見ればわかるさ。
・・
・・・・
私は双星。天使に出会った者です。
”不幸な人を救う方法”
5日間連続放送の4回目です。
不幸な人たちが他人を殺していれば救われるのでしょうか?
大抵の人が救われないと答えるでしょう。
ですが、その人たちは不幸なあなたを幸せにしてくれますか?
高望みしすぎだの、あなた次第だの、努力すれば幸せになれるだの、誰もが無責任なことを言います。
そんな口上で幸せになれるなら、日本に不幸な人はいません。
不幸になるシステムは個人の努力では解決しません。
不幸な人みんなの力が必要です。
しかし・・もし、不幸なあなたに対して・・他人を殺すのを後押しする人がいたら・・
その人を信じて大丈夫でしょうか?
不幸なあなたは利用されているだけかもしれません。
不幸なあなたが他人を殺すのを見て、笑っているかもしれません。
不幸なあなたが他人を殺すのを撮影して売るつもりかもしれません。
不幸なあなたが他人を殺すのを、権力を得るために利用するだけかもしれません。
他人を信じてはいけません。
誰にも相談してはいけません。
耐えがたい不幸であるのなら、その時は、自分の意思で決めましょう。
あれ?と思いましたか?
私の話を信じるなら、私の話は信じられないことになりますね。
では、今日は私の話をしましょう。
私が誰なのか。
言葉で説明しても伝わらないこともある。
冒頭の・・私が天使に出会ったと聞いて信じましたか?
SEEING IS BELIEVING.
言葉に騙されないで。
私は不幸なあなたの仲間。
この動画を見ればわかる。
―――――
画面が変わった。
そこは、俺の知っている場所だった。
転校する前の地元。何度も行ったことがある駅近くの裏通り。
・・カメラを持って歩いている?
いや、体にカメラを固定しているように思える。
あ!カメラの前方に男が映った。
でも、あれは・・俺の元クラスメイト。
ついこの間、他殺体で見つかったっていう・・まさか・・
女の人の手が画面に映った。
その手には・・刃物が握られている。
俺は、初めて人を殺すところを見た。
いや、見てられなくて途中で画面から目を離した。
・・他のクラスメイトたちも見ないようにしたり、眉をひそめていた。
再び画面を見ると、もう終わったようだ。
今度はペンで紙に何か書いている。
【不幸な人は他人を殺す】
・・そう書いた紙を、死体の上に置いた。
カメラが少し離れた路地裏まで移動して、死体を遠くから映し続ける。
しばらくして死体が見つかり警察が呼ばれた。
警察が来て死体を確認したところで動画は終了した。
―――――
動画はここまで。
私は、不幸な人の仲間。そうでしょう?
力の弱い人でも殺せる。不意を打てば、道具を使えばだれでもできる。
そして、私はメッセージを残したけど・・それは報道されなかった。
みんなは騙されないで。
報道されていないだけで、不幸な人は救われるための行動を始めている。
巧妙な権力者たちは、あらゆる手段で不幸な人が間違っていると報道する。
過小に報道して、いくら殺しても救われないと言う・・嘘。
不幸な人を装って、私のことを信じられないと言う・・嘘。
救わなければならない・・など威勢のいいことを言う・・嘘つき。ろくに救わないくせに。
そうやって、不幸な人の不幸を固定化させる。
騙されてはいけない。
ひとりでも多くの他人を殺しましょう。
それが不幸な人を救う方法。
あなたが自殺したら、権力者やその仲間たちは笑みを浮かべる。
弱者が大人しく社会から退場することをあいつらは望んでいる。
そんなのは間違っている。
誰もが幸せになっていいの。
今日の放送はここまで。
幸せになる方法は必ずあるから。人生を諦めないで。
・・
・・・・
殺したのは・・親友じゃなかった。
しかしなぜ?
委員長「ねぇ、もしかしてあなたの親友って・・女の人?」
いや男だよ。
・・動画の人は女の人だったね。
委員長「機械で声を変えていても、口調からそんな気はしてたけど・・」
委員長「まさか殺人事件の犯人だったなんて。」
なんで殺したんだろう。
親友とは関係ないんだろうか?
委員長「関係・・ないかもね。」
委員長「だって無差別殺人をうたってたんでしょ?なら無関係な人をターゲットにするんじゃない?」
・・それもそうだ。
ということは、親友とはまったくの無関係ってことで・・
たまたま、親友が行方不明になった日と同日に、親友をいじめていたやつを殺した・・
取り巻き「おい!おい!おい!!まさかの犯人だよ!」
取り巻き「しかもメッセージは握りつぶされていた!」
取り巻き「権力者は真実を覆い隠している!不幸な人が救われないわけだよ!」
取り巻き「不幸な人よ立ち上がれ!戦いの時だ!」
委員長「だからそういうのやめてよ。外もおちおち歩けなくなるじゃない。」
クラスメイト「そうだよ。お前おかしいよ。」
取り巻き「うるさいうるさいうるさい!お前らみんな権力者側だ!」
取り巻き「お前らなんて・・お前らも殺されてしまえばいいんだ!」
クラスメイト「は?」
クラスメイト「なんでだよ。」
取り巻き「お前らだって・・いじめを見てみぬフリをしていた!」
取り巻き「僕が殴られても止めなかったじゃないか!!!」
委員長「それはあなたがバカなこと言うからでしょ。」
取り巻き「口で言えばいいじゃないか!なんで殴られなきゃいけないんだよ!」
取り巻き「お前も!お前も!お前も!お前も!お前らみんな殺されろ!!!」
クラスメイト「・・あいつやべえよ。」
クラスメイト「いっちまってるよ。」
取り巻き「ぶつぶつ・・そうだ・・動画の人は天使に会ったんだ・・」
取り巻き「ぶつぶつ・・きっと試練を人間に与えたんだ・・あの人は選ばれた使者なんだ・・」
取り巻き「ぶつぶつ・・これは聖戦だ・・僕は救われるんだ・・」
午後の教室はいつもより重苦しい空気だった。
・・
・・・・
今日も親友の携帯に連絡してみる。
だけど返事は無かった。
・・
・・・・




