反逆者として王弟を攻撃することにしました
私は弟の侍女のサクラにナイフを突き刺されて唖然とした。
それだけ私が帰ってこなかったことに対しての恨みが深いのかと思いもした。
「貴様!」
私の横にいたアオイがサクラに魔術攻撃を加えようとした。
「アオイ!」
私はそれを制していた。
「しかし、姫様!」
アオイは不満たらたらだった。
「ひ、姫様!」
「貴様、姫様に何をしている」
次いで私の周りにいた武士達がサクラがナイフで刺したことを気付いてサクラに殺到しようとした。
「止めよ!」
私はそれも大声を上げて制していた。
「しかし、姫様」
「構わん」
私は言い募ろうとした近衛の騎士を止めた。
「サクラ、それほど私が憎いのか?」
私は自嘲した。
「ちょっと、なんで貴方は笑っていられるのよ。私のこのナイフは猛毒のトリカブトの毒が塗られているのよ。普通は即死するはずなのに! そうバルバラ様は言われたわ」
サクラがヒステリックに叫び出してくれたが、
「なんじゃと、貴様バルバラの手下か! 近衛武士、直ちにその女をひっ捕まえろ」
「サツマ、構わん」
「しかし、姫様!」
私はサツマを制していた。
「何故、貴方はピンピンしているのよ!」
「姫様は初代アマテラス陛下の血を色濃く引いておられる。普通の毒は効かん」
私の横でヒロトが説明してくれた。
「そ、そんな」
サクラは黒い瞳を大きく開いて唖然としていた。
「そんなに私が帰ってくるのが遅くてシンノジョウが処刑されたせいで私の事が憎いのか?」
私はサクラに尋ねていた。
「違うわよ。それはシンノジョウ様が亡くなったのは悲しいわ。でも、彼は王族だった。戦に負ければ殺されるのは当然よ。
でも、私達侍女まで何故王弟や帝国の総督等のおもちゃにならないといけなかったの?
王弟が国王になってからずっとよ。
それもこれも、今まで両親や弟が殺されたのに、のほほんと王弟の下で過ごしていた貴方のせいよ。なんでさっさと反抗しなかったのよ。そうすれば私がこんなにも長い間王弟におもちゃにされる事も無かったのに! 今頃反抗してくれても手遅れよ。私はもう汚れきってしまったわ」
サクラの瞳は絶望に染まっていた。
「何を言う、貴様。それを姫様に言うのは違うだろう! 文句はそうしたナニワに言え!」
アオイがサクラに目を怒らせて叫んでいた。
私がいなかったら既にサクラは魔術で攻撃されてこの世にいなかったいただろう。
けれど、私はサクラの言うこともよく判った。
王族の私がさっさと反抗していれば、サクラの苦痛の時間も少なかったはずだ。
王族とは全ての者の期待に添って行動しなければいけない。
そして、誤った行動をする王がいれば命がけで諫めないといけないのだ。
そういう意味では、苛政を、少なくとも侍女達をおもちゃにしていたナニワをさっさと退治しなかった私は悪だろう。
両親や弟を殺され、第六皇子にまで裏切られた事にショックを受けて何もしなかった私は侍女達からしてみれば責められる理由は十分にあった。
彼女らからしたら、何もしない私もナニワと同類だと思われても仕方が無かっただろう。
まあ、前世の記憶が甦って、人を殺すのを忌避したくなった私がいたのも事実だ。
何もせずに皆から白い目で見られていた方が楽だったというのもある。
しかし、それを王族が何もしなく唯々諾々と従っていたのは間違いだったのだ。
王族は権力が与えられている分、民の為に働かねばならない。
私はそれを怠っていた。
「私がのほほんと遊んでいたからずっと辛い目にあっていたという事か?」
「姫様。それはこいつらの勝手な理論です」
「それで姫様を刺して良いという法則にはなりますまい」
アオイとサツマがそう私を慰めてくれたが、私は首を振った。
「私が帝国の皇子に騙されて帰って来るのが遅かったのが全ての原因だ。ヒロト、サクラを解放しろ」
私は命じていた。
「しかし、姫様」
「王族の暗殺未遂は死刑と決まっておりますぞ」
アオイとサツマがギャアギャア叫んでくれた。
「判ったな、ヒロト」
しかし、私は再度ヒロトにそう命じていた。
サクラの行動は私の怠慢が生んだのだ。
その者を処刑するわけにはいかない。
「判りました」
ヒロトは諦めたように頷いてくれた。
私はほっとした。
でも、私の希望は通らなかった。
「はああああ! 何を言っているのです。貴方の情けは受けません!」
そう叫ぶとサクラは何かをガリッと噛んでいた。
「止めろ!」
私は止めようとしたが、
「無理です」
ヒロトが首を振っていた。
「ギャーーー!」
サクラは喉元を押えて白目を剥いた。
必死に喉元をかきむしっていたが、やがてその手が止まり、そのまま地面に倒れた。
サクラは歯にでも仕込んでいたのだろう。
「絶命しております」
ヒロトが確認してくれた。
「そうか」
なんともやるせない思いがした。
私の体から剣が何事もなかったのようにポロリと落ちていた。
また一人、人が死んだ。
全ては私のせいとは言えないが前世の記憶が戻った私には辛いことだった。
でも、これからもっともっと死人が出るだろう。
しかし、私が反撃すると決めた時からこのことは定まっていたんだと思う。
「全ての責任は私にある。この者は丁重に葬ってやれ」
私はヒロトに命じていた。
「よろしいのですか、姫様」
サツマが後ろから尋ねてきたが、
「私が立つのが遅かったのだ。私にも原因があろう」
「しかし……」
サツマはまだ何か言いたそうだった。
「敵はナニワにいる。一気に巨悪を葬る。それで良かろう」
私は拳の柄を掴んでいた。
「明朝より、反逆者ナニワを倒すために進撃する」
私は全員に命じていた。








