王女の家臣視点 やけ酒を飲んでいたら妾になれとふざけた事を言われてたので爆裂魔術をお見舞しました
「くっそう、何だってのよ!」
私は今日も行きつけの店で飲んだくれていた。
1年前はこんな事になるとは思ってもいなかった。
私の名前はアオイ・タンバ、元王都キョウのすぐ北にある伯爵家の長女だった。
私は物心ついた時からヤマト王国の長女ユキ様の側近になるべく徹底的に教育された。
私の専門は魔術師だった。魔術を使って姫様を守るのが仕事だった。
まあ、もっともユキ様は私なんかの護衛等いらないほど強かったんだけど……
ユキ様は剣術の腕前において初代国王陛下のアマテラス様の再来とまで言われていた。
アマテラス様は異国の皇子と一緒に魔王を退治してこの地にヤマト王国を建国されたのだ。
以来千年が経ち、一時期は大陸の多くの国を従えたヤマト王国も今や島国ヤマトだけの領地になっていたけれど、大国とは言えずとも中規模国ほどの国力はあると思っていたし、次代に頼りがいあるユキ様がいらっしゃるの安泰だと思っていたのよ。
私達は主の姫様と一緒に大陸で将来にわたって見聞を広めるために3年ほど過ごしていたのよ。
その時は本当に楽しかった。
それが帰ってきた途端に、王弟殿下から国王夫妻が亡くなったことを聞かされたのよ。
何とあの煮ても殺しても死なない戦姫ユキ様がそれを聞いて気絶されてしまったのよ。
私には信じられなかった。
竜に叩かれてもピンピンしていたあの姫様が、気絶するなんて…………
でも、それから姫様はおかしくなられた。
それから三日三晩高熱を発して倒れたられたままだった姫様だが、起き上がられるとすぐに、我々は暇を取らせられたのだ。
即座に反逆した王弟を血祭りに上げて、帝国に討ち入って仇を取るのかと思って準備していた私達臣下は目を剥いた。
「姫様、直ちに仇討ちに参るのではないのですか?」
私は姫様に直訴したわ。
「事ここに至っては止む無しだ」
なんと、姫様は肩を落とされてそう言われたのよ。
私はこれは機をみるために一時期潜伏することだと勝手に思い、地元に帰って一命あれば直ちに駆けつけられるように準備をしていたわ。
しかし一月待ち、二月待ち、何もなかった。
それどころか姫様はあろうことか憎き仇の元ヤマト大使で今はヤマト総督のボドインの息子と婚約したと言う知らせが入ってきたのよ。
私には信じられなかった。
ボドインは国王陛下を斬り殺し、あろうことか王妃様を自分の物にしようとして自害させた悪逆非道の大罪人だ。
幼いシンノジョウ様もこのボドインに処刑されたと聞く。
その息子と婚約するなど私には信じられなかった。
「どういう事だ、ヒロト! こんな事が許されるのか?」
私は一応姫様の懐刀と言われた文官のヒロトの仕事部屋に怒鳴り込んだのよ。
「まあ、落ち着け、アオイ」
私はヒロトに別室に連れて行かれた。
「確かに姫様は気絶されてからおかしくなられた。俺が知る限り姫様が3日も高熱で寝込まれるのは初めてだ。と言うか姫様は今まで風邪もほとんどひかれたことが無いのはお前も知っている通りだ」
「それだけシンノジョウ様の処刑が堪えたのか?」
私が尋ねると、
「それが判らん。王弟殿下に魅了魔術でもかけられたのかとも思ったが、そうでもないらしい」
そう言うとヒロトは首を振ってくれた。
「まあ、姫様は戦姫様だ。いつまでも黙ってそのままという事は考えられん。少し待つしかなかろう」
ヒロトはそう言って私を押えようとしてくれたのだが、
「いつまでって、いつまで待てば良いのよ?」
「そうだな。来年の3月の学園の卒業パーティーの時だろう。それが終わると姫様はあのどうしようもないアデラールと結婚させられるからな。その卒業パーティーの時に決起できるように準備しておいてほしい」
「卒業パーティーの時ね。判ったわ」
私は仕方なしに、それまで待つことにした。
しかし、私は待つのは苦手だった。
その間にエドにある総督府からは次々にとんでもない命令が出て来た。
我がタンバ伯爵家は降格させられて帝国のタンバ子爵家になって、帝国の伯爵達に馬鹿にされるようになり、更には断髪令が出て髷を切って断髪せよとか言うとんでもないものまで出て来た。
総督のボドインは好き勝手にやってくれているらしい。
そのせいで領内には不穏な空気まで流れ出す始末だ。
暴発しようという奴らを押えるのも中々大変だった。
「姫様、姫様までユキ様と同じでふぬけになられましたか!」
老武士達につるし上げに会う日々は本当に辛かった。
でも、私はひたすら1年間待ったのよ。
しかし、卒業パーティーの前日になっても何も連絡は来なかった。
いくら何でも今来ないとどうしようもない。
私は呆然としていた。
私は城下町のカメオカの居酒屋でその日の朝からやけ酒を飲んでいた。
「おい、親父、酒だ。酒を持ってこい」
私は完全に切れていた。
「姫様、いい加減にされたらどうですか」
よく知っている親父が私を諫めてくれたが、
「すまん。今日はやってられないのよ」
私は親父に首を振っていた。
「ほお、姉ちゃん、いい飲みっぷりだな」
そんな私の所に遊び人風の男達が寄ってきた。
「何だ、貴様等は」
私はゴミをみるように見てやった。
「まあ、そう言うなや。あちらの夷人様がお前に用があると呼んでいるんだよ」
男の指さす先にはいかにも偉そうにした赤髪の夷人がふんぞり返っていた。
「何だと、私に用があるだと、用があるならそちらから本人が来い!」
私は相当酔っていたのよ。
ヒロトや両親からはできる限り自嘲せよと散々注意されていたから、しらふならそんなことは言わなかったわ。
「何だと、生意気な。こちらにおはすお方をどなただと心得るのだ」
夷人の側役のらしきヤマト人がいきり立って私の前にやってきた。
「ふんっ、誰だというのよ。ボドインとでも言うの?」
売り言葉に買い言葉よ。私は聞き返してやったわ。
「な、何を言うのだ。貴様。総督閣下の御名を呼び捨てにするとは許せんぞ」
男が更にがなり立ててくれた。
「まあ、待て、デハ、中々威勢の良い女ではないか」
男が立ち上って私の前にやってきた。
「こうしてみると中々いい女ではないか。女、喜べ儂の妾にしてやろう」
男はいやらしい笑みを浮かべて私に言ってきたんだけど……
私は絶対にその時正気ではなかったのだ。
正気だったら絶対にそんな事はしなかった。
でも、その時は姫様の事で切れていたし、もう自棄になっていたのだ。
その上私、この私爆煙の魔女を妾にするだ?
その言葉に完全にぷっつん切れていた。
「伏せろ!」
親父さんが伏せるのと私の手から爆裂魔術が飛び出すのが同時だった。
ドカーーーーーン!
次の瞬間、凄まじい爆発が起こって生意気な妾発言した男共々、吹っ飛ばしていたのよ。
爆煙の過ぎ去った後には生意気な男達の姿形はどこにも残っていなかった。
ユキ姫の側近の爆裂の魔女の登場です。
主従もろとも暴発する時は同じ…………
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