3.婚約者が殺そうとしてきたので返り討ちにしました
私は捕まっても良いかと一瞬思ってしまった。
サイタマとかエドとか礼嬢達も帝国の施政に既にどっぷりと浸かっているし、私を煽るのは戦闘狂のサツマの狂人くらいだ。
両親や可愛い弟のシンノジョウも殺されてしまったし、友人だと思った帝国の皇子にも裏切られていた。
もうなんだか生きる望みも何もかも失われていたのだ。
このままこんなぼんくらの嫁になったところでどうなるものでもないし、シンノジョウ達の後を追って処刑されても良いかと……
「ユキ、後の事は頼むぞ」
その瞬間だ。私の脳裏に反乱軍に斬られて倒れるお父様の姿が浮かんだ。
「ユキ、後の事は頼みます」
毒をあおるお母様の姿が……
「姉上。お願いします」
処刑されるシンノジョウの姿が頭に甦ったのだ。
そうだ、帝国の皇子に騙されたショックを引きずって死ぬなど許されることはないのだ。
シンノジョウの為にもやらねばならなかった。
このヤマト王国は我が母国、帝国に蹂躙されて殺されていった者達の呪いの声が私に聞こえてきた。
今なお多くの民が帝国に搾取されている。
それを王族の私が放置しておく訳にはいかなかった。
死ぬならば、それ相応の責任を取ってから死ねと家族からは言われた気がしたのよ。
「やむを得ん」
私は立つことにした。
「ユキ・ヤマト、貴様を反逆罪にて捕縛……」
私は私を捕縛しようと罪状を宣告して私を捕まえようとした騎士に鉄拳を浴びせていた。
「ギャー!」
男は悲鳴を上げてそのまま飛んでいった。
そして、その正面にアデラールがいたのだ。
「ギャッ!」
男はそのままアデラールにぶつかると、2人で地面に叩きつけられていた。
「おおおお、戦姫ユキ様。ついに立上がることを決められたのですな」
サツマは私の後ろで感激していた。
「何か言う暇があたら貴様も働け」
「御意」
サツマはそう言うと剣を完全に抜き放っていた。
これは殺人狂を野に放ったのかもしれない。
私は一瞬、誤ったかと後悔した。
まあ、どのみちここは血の海になるのだ。
多少増えても問題ないだろうと思い返したけれど……
サツマは捕縛しようと襲ってきた帝国騎士をあっさりと叩き斬ってくれたのだけど……
「「「アデラール様!」」」
騎士達が慌てて下敷きになっているアデラールに駆け寄る。
「おのれ、貴様ら、良くもアデラール様を」
私の周りの騎士達が全員抜剣してくれた。
「ふんっ、高々帝国の侯爵の息子風情が頭が高いわ」
私はそうアデラールに言い放っていた。
「何だと!」
騎士達が大声で叫び声を上げてくれた。
「貴様、ユキ、気が触れたか。総督の息子の俺様にさからってただで済むと思うなよ!」
騎士の下から慌てて起こされた激高したアデラールが叫んでくれた。
「ふんっ、アデラール。頭が高いと私は言ったのだ。聞こえなかったのか?」
「何だと。父がお情けで生かしてやった分際で、生意気な。者ども、その痴れ者を反逆者としてやってしまっても構わん!」
アデラールは騎士達に命じていた。
「愚かな、ここで私に命乞いをすれば許してやったものを」
私はそう言うと斬りかかってきた男を躱して、その剣を掴む男の手に、手力を叩き込んだ。
「ギャ!」
男が思わず剣を取り落としそうになる。
その剣を掴むや、取り上げる。
そのまま私は騎士をその剣で突刺していた。
「き、貴様、帝国の騎士に手をかけるとは、血迷ったのか?」
アデラールが何か見当違いのことを指摘してくれた。
「血迷っているのは貴様の方であろう。ここはヤマト王国、ユキ様はその象徴の戦姫様であらせらるる。その戦姫様を愚弄し剣を向けるなど、言語道断。死をもって贖え」
サツマは血まみれの剣を握ってアデラールに剣先を向けてくれた。
「何だと、貴様、この帝国の総督の息子の俺に手を上げるということがどういう事か判っているのか?」
アデラールは大声を上げて脅してきた。
「あ、はっ、はっ、はっ、はっ!」
サツマが大声で笑ってくれた。
「な、何が可笑しい?」
アデラールが怒声を発していた。
「帝国と言っても儂の相手になるような騎士はここにはおらんぞ。ギャアギャアいう間にその方の首が落ちる方が早い」
「何を言うやら。そんなこけおどしなど効かんわ。ユキ、貴様の弟のシンノジョウは最後まで貴様の名前を呼んで命乞いをしていたぞ」
アデラールは笑って言ってくれたのだ。
余計な一言を!
渡しの可愛い弟を殺したこいつだけは許さん。
私は心に決めた。
「者どもこの反逆者共をひっ捕まえろ。最悪殺しても構わん」
アデラールの声に騎士達が剣を抜いて殺到してきた。
「全員伏せろ」
私は一応忠告してやった。
「伏せぬと死ぬぞ」
サツマも横で剣を抜きながら叫んでくれた。
「「「キャーー」」」
女達の悲鳴が聞こえた。
皆その場に伏せようとする。
当然騎士達はその言葉を聞くわけはなくて、全員抜剣してこちらに斬り込んでくる。
次の瞬間、私は剣を構えると横殴りに思いっきり払っていた。
ブンッ!
「「「ギャッ!」」」
凄まじい風切り音とともにことらに向かってきた騎士達に向かって私の剣から発せられたソニックブレードが飛んでいた。
騎士達が一瞬でぶった斬られる。
ズドーーーーーン!
「アデラール様!」
アデラールは傍にいた護衛が身を挺して地面に倒していた。
その上を私のソニックブレードが飛んでいった。
「ぎゃあ!」
サイタマが胸から血を吹き出して倒れていた。
わざわざ忠告してやったのに……何故立っている?
まあ、自業自得だ。
何故かバルバラは地面に這いつくばって無事だったらしい。
騎士の大半が私のソニックブレードにやられて吹っ飛んでいた。
「おのれ、化け物め、死ね!」
アデラールを助けた男が立ち上がると手を突き出してきた。
こいつは魔術師だったらしい。
その手から炎の魔術が飛び出した。
ファイアーボールだ。
それは私目がけて飛んで来た。
私はそれを剣に魔力をのせると撃ち返していた。
バリンッ
さすがのなまくら刀だとソニックブレードとファイアーボールの攻撃には耐えられなかったみたいで、折れてしまった。
ドカーーーーン!
私に向かってファイアーボールを放った魔術師に直撃していた。
魔術師は黒焦げになって後ろに倒れた。
そこには一人になったアデラールが青くなって立っていた。
取り巻き達はもう一人もいなかった。
皆逃げ出したらしい。
私はゆっくりとアデラールに近付いて行った。
途中で倒れた騎士の傍に転がっていた剣を掴む。
「待て、ユキ、話せば判る」
アデラールは必死に言い訳してきた。
「貴様、戦姫様を呼び捨てで呼ぶな」
サツマが一喝した。
「ひぃぃぃ、ユキ様。お願いです。命ばかりは」
アデラールが命乞いをしてくれた。
「貴様等だろう、命乞いした私の弟を殺したのは」
私は許すつもりは毛頭なかった。
私の名前を呼ぶシンノジョウをこいつらは処刑したのだ。
絶対に帝国の奴らを許すことは出来ない。
「いや、違う。言い間違いだ。許してくれ」
そう言うとアデラールはしゃがみ込んでくれたのだ。
私が一瞬躊躇した時だ。
「死ね!」
アデラールが顔を上げるとその手には護身用の魔導銃が握られていた。
ダンッ
アデラールが私目がけて銃を放つ。私が剣で弾いた。
バリン、
なまくら剣ではまたしても折れてしまった。
「死ね!」
アデラールはにやりと笑って私に銃口を引こうとした。
どこまでもゲスはゲスだ。
性根まで腐っているらしい。
私はそのアデラールに無造作に折れた剣を投げていた。
「ギャッーーーーー!」
次の瞬間、私の投げ倒れた剣はアデラールの胸に深々と突き刺さって、吹っ飛んでいた。
私を婚約破棄して殺そうとした婚約者は、私に返り討ちに遭ったのだった。
仇の一人を倒したユキでした。
ここからユキの反撃が始まります。
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