帝国第六皇子視点 想い人にまず味方になることを許されました
俺は懸命にダンジョン巡りをしたが、最初は全然だった。
小さいダンジョンでもラスボスに負けて大怪我をさせられたこともある。
まだまだ能力が足りなかったのだ。
俺は小さいダンジョンで必死にトレーニングした。
その始まりのダンジョンは何回も潜った。
そして、2週間かけて大方の魔物を刈り尽くした。
次のダンジョンもそうだ。
そうやってダンジョン巡りをしていった。
俺は来る日も来る日もダンジョンに潜った。
そしてそのダンジョンの魔物を刈り尽くす。
それが出来たら次のダンジョンに潜る。
それを繰り返した。
俺は雨の日も風の日も大雪の日も休む間もなくダンジョンに潜った。
そして、1年が経ったときだ。
俺は極東の大半のダンジョンを制覇していた。
そして、最後の大魔術師のところに帰ってきた。
「うん、やっと少しは力がついたの」
大魔術師は呆れたように言ってくれた。
褒めてくれとは言わないが、少しくらい俺の努力を認めて欲しかった。
「ふんっ、何を言うやら。ユキの力はこんなものではないぞ」
大魔術師の言うとおりだ。
俺はまだ入り口に立っただけだった。
そして、次に大魔術師から聞いた話でおれは唖然とした。
なんと我が帝国が騙し討ちのように王弟を使って反逆させて国王一家を虐殺したというのだ。
「貴様は帝国の意をうけてユキをこの地に引き留めたとユキに思われているぞ」
「はああああ! そんなのは知らないぞ」
俺は大魔術師に叫んでいたが、
「ユキは少なくともそう思っておる」
そう言われてユキの誤解を解かないといけないと俺は理解した。
でも完全に理解してはいなかった。
俺はまず帝国に帰還した。
「ふんっ、セドリックか、今までふらふら遊んでおって、今頃貴様は儂に何のようじゃ?」
玉座に座ってふんぞり返った父が聞いてくれた。
俺は父にヤマトに行きたいと希望した。
「まあ、貴様なぞ、いてもいなくても同じじゃ。ヤマトのボドインのところで修行してくれば良い」
父は何も考えずに俺を送り出してくれた。
俺の肩書きはヤマト副総督の地位になった。
俺は大和に着けばすぐにユキに会いたかったが、総督府での副総督の引き継ぎに思いのほか時間がかかった。
そんな時だ。ユキの反逆を聞いたのは。
俺は遅かったと後悔した。
ユキはナニワを占拠していた。
俺はユキのところに帝国の使者として乗り込んだのだ。
まさかユキがいきなり俺に斬りかかってくるとは思ってもいなかった。
俺は這々の体で雪の前から逃げ出した。
そして、エドに逃げ帰った。
まさかユキが俺の話を全く聞いてくれないとは思ってもいなかったのだ。
俺はどうするか悩んだ。
元々ユキのためには帝国を裏切ろうと心に決めていた。
それは大魔術師に言われた事だった。
だから帝都でも母にも最後の別れの挨拶をしてきた。
母はピンときていないみたいだったが、
「今までお世話になりました」
俺の改まった礼に
「また、帰って来るのですよ」
と言ってきたのだった。
俺は今生の別れの挨拶のつもりだったのに拍子抜けした。
でも、別れしなに渡された贈り物の中に金貨百枚があるのを後で知って唖然とした。
母は理解してくれたのだと思う。
何も親孝行らしき事をせずに俺が反逆者の中に入れば母も今後は帝国で生きにくかろう。
俺は後悔したが、行動を改めるつもりは無かった。
再度ユキに面談を申し入れたときはソウヘイが来てくれた。
「何しに来たんだ、セドリック。下手したら姫様に殺されるぞ」
「セドリック、貴様には俺の本心を伝えている」
「本心?」
「姫様が好きだという事だ」
「飲みの席の話だろうが」
「飲み話では無い。俺はその時から本気だ」
俺は自分の思いの丈をソウヘイに打ち明けた。
「だから本当に帝国の侵攻の話は知らなかったのだ」
「判った。どうなるか判らないが姫様には伝えてみる」
ソウヘイはユキと交渉に戻ってくれた。
次にヒロトが来た。
俺はヒロトにも本心を告げた。
それと帝国の情報を持っていると。
ヒロトはそう言うと乗ってくると思ったのだ。
「判った。姫様との席を用意だけはする。後は貴様次第だ」
ヒロトも俺の心を判ってくれた。
ヤマトの奴らは良い奴らだ。
こんな国と争うのは馬鹿のやることだ。
俺はそう思った。
「姫様のところに連れて行く。寸鉄帯びていないか改めたいが」
ヒロトが言い出してくれた。
俺は一も二もなくそこで服を全て脱いだ。
別に見られて困るものなど何もない。
「ええい、やめい」
「いきなりストリップなどするな」
二人は慌てて止めてくれたが、
「中身を改めたいと言ったのは貴様等だろうが」
「いきなり裸になれとはいっておらん」
ヒロトはむっとしていた。
俺はヒロトとソウヘイがくれた服に着替えた。
そして、俺は雪の前に連れて行かれた。
ここが勝負だ。
俺はいきなりヤマトの作法の土下座をしたのだ。
これはヤマトに来てから覚えたことだ。
「ユキ姫様におかれましては私とお会い頂いて感謝の言葉もございません」
「セドリック殿、こちらに」
ヒロトが席を指してくれたが、
「いえ、そのような席に座る資格は私にはございません」
俺は首を振った。
「過日ユキ姫様を危急存亡のおりにダンジョンに留めてしまつた事を深くお詫び申し上げます」
再度土下座した。
「セドリック、やはり貴様、帝国のヤマト侵攻を知っていたのだな!」
それを聞いてユキは刀に手を伸ばしてくれた。
「いや、違う。俺は本当に何も知らなかったんだ」
俺は必死に言い訳した。
「そんな事が信じられるか!」
ユキは中々信じてくれなかった。
「すまん。状況的に誤解されても仕方の無い状況だったのは認める。というか、結果的にユキ姫様をお止めしたのは事実だ。申し訳なかった」
俺は素直に土下座したのだ。
さすがのユキも俺に斬り込んでは来なかった。
「そのお詫びに帝国の最新情報を伝えよう」
「はああああ? 敵にそんなことしていいのか?」
ユキが叫んできた。
俺はユキらに総督が全軍を率いてこの地に向かっていること。古代竜が三匹と魔導師が三人いる事を伝えていた。
そして、ユキが信じたところで俺を先鋒として使って欲しいとお願いしたのだ。
ユキは逡巡してくれた。
最後にはやっと頷いてくれたのだ。
「有り難き幸せ。このセドリックの命、一生涯ユキ姫様に捧げまする」
俺はユキの前に跪いたのだ。
まずユキの味方に入るとこだ。
好かれるのはこの次だ。
この戦いに勝たねば。
俺は古代竜を一匹退治すると宣言した。
そう、ユキの隣に立つにはこれくらい出来ないとむりだろう。
ヒロトやソウヘイは死ぬから止めろと言い出してくれたが、不可能を可能にしない限りユキの隣に立つのは無理だ。
俺はユキの心を得るために賭けに出たのだ。








