テンモク山の戦いが始まりました
コウシュウ街道のコウフ盆地の入り口近くに、テンモク山の古戦場跡があった。
戦国時代タケダカツヨリがオダノブナガに攻め滅ぼされた戦場だ。
オヤマダの裏切りで逃げてきたカツヨリ勢はもはや、五十人もいなかったそうだ。対する追っ手の織田勢は5千人、味方に裏切られたカツヨリにはもう勝ち目は無かった。
カツヨリらは斬り死にしたと伝えられていた。
私達は今、その近くに陣をひいていた。
「ここに陣を構えるのは不吉ではございませんか? カツヨリ公が全滅したところにございますぞ」
カイ伯が不吉な事を言いだしてくれた。
「何が不吉なものか。我が勢は寡兵とは言え神の化身の竜神様を始め戦力は揃っている。ここで勝って帝国軍を殲滅するのだ。この地こそが大和王朝の朝敵ボドインの死に場所になる。帝国にこそ不吉な場所になろう」
私がカイ伯の不吉な言葉を言い直した。
物は言い様だ。
この地で先手必勝コウフ盆地の手前で迎え撃つのが吉だろう。
ヒロトもサツマもここが良いと頷いていたから問題はないはずだ。
「しかし、裏切り者が出るやも知れませんぞ」
カイ伯は私の隣のセドリックを見た。
「その時は私の剣が一閃する時だ。問題はない」
私はカイ伯の言葉を全く無視した。
セドリックは苦笑いをしていた。
「カイ伯。貴方の疑いが晴れるように私はこの戦いで命をかけましょう」
セドリックはどこまでも真面目だ。
まあ、セドリックはそう言っているが、正直なところ私はセドリックが裏切る可能性は10%くらいあるとは思っていた。
セドリックや本人や周りには言っていなかったが……
ソウヘイは100%ないとみているようだったが、私はそこまでセドリックを信じられなかった。
私は私を足止めしたセドリックを完全に許してはいなかった。
味方が動揺すると不味いから言わなかったが……
なあに、いざという時は私が斬ればいいだろう!
「姫様。帝国先鋒が駒飼の宿を出たとの情報が入りました」
伝令の報告をヒロトが持って来た。
「よし、戦闘用意だ」
「ホラ貝を吹かせろ」
ブォーーーーーー
一斉にホラ貝の音が盆地に響き渡った。
「敵は竜を三頭を先頭に進軍してきます。その後ろに三人の魔導師がいるのを確認しました」
ヒロトが正確な情報を教えてくれた。
「よし、竜は竜神さまの化身の竜ちゃんと、私、それとセドリックが叩く。その後ろの魔導師はアオイ、それとソウヘイ、更にサツマ、頼むぞ」
「了解です」
「姫様、お任せ下され」
サツマ等は頼もしく胸を張ってくれた。
「カイ伯、後の5万は頼んだぞ」
「2万で5万を抑えるので」
カイ伯は不満そうだった。
「まあ、カイ伯1時ほど持ちこたえて頂ければよろしかろうて。その頃には儂の相手の夷人のまやかし妖怪など儂が退治しておりましょう。さすればすぐに助太刀できますからな」
そう言うと豪胆にもサツマは笑ってくれた。
「さようでございますか。サツマ伯が駆けつけて頂けますか、判りました。1時ほどなら、この臨時の柵で持ちこたえましょう」
ほっと一安心してカイ伯が頷いてくれた。
「ヒロト、よろしく頼むぞ」
私はフォローをヒロトに頼んだ。
「姫様。この混成部隊で帝国の正規騎士5万を抑えるのでございますか」
うんざりした口調でヒロトは私を見てくれた。
「竜は1時ほどで倒す、後は掃討戦に入ろう」
私が見込みを話した。
「よろしくお願いしますよ。姫様がやられたらしゃれにもなりませんから」
ヒロトが軽口を叩いてくれた。
「判っているわ。
帝国の奴らはお父様とお母様とシンノジョウの仇よ。
奴らは絶対に許さない」
私は剣を掴むと立ち上った。
私は最前線に進み出た。
私の目の先に竜を先頭にした敵の大軍が見えた。
先頭の竜は真っ赤に光っていた。
その敵に対して私はクサナギの剣を抜き放った。
剣は光を帯びる。
「おおおお、天神の剣じゃ」
「姫様が抜かれたぞ」
「今こそ、天神のお力が放たれるぞ」
「喰らえ!」
私は剣を振り下ろした。
ピカッ
ズコーーーーン!
私はクサナギの剣を敵に向けて叩きつけていた。
その光が一直線に走り、先頭の赤竜を直撃した。
しかし、竜はそれを顔ではじき返してくれた。
横の山にぶつかる。
ドカーーーーン!
凄まじい爆発が起こって山が半分吹っ飛んでいた。
「凄いですね」
「さすが天神様の使われた剣」
皆驚いていた。
もっとも私はその剣の閃光を跳ね返した古代竜の方に驚いていた。
クサナギの攻撃を跳ね返すか?
真っ赤なその竜は火竜なのだろう。
大きさは傍の人影と比べるとどう見ても本来の姿に戻った竜ちゃんの2倍はあった。
大きな顔に飛び出した牙まで見えた。
古代竜は私をじろりと睨み返してきた。
「ギャオーーーー!」
そして咆哮してくれた。
すさまじい音だ。
思わず耳を塞ぐ者もいた。
その口の周りが赤くなる。
「全員伏せろ」
私は叫ぶと更に前に出た。
次の瞬間古代竜は火炎を吐き出した。
火の玉が私目がけて飛んで来た。
私はそれを草薙の剱で叩き斬っていた。
ズカーーーーン!
クサナギの剣で軌道を変えられた火炎は隣の山に激突した。
爆発が起こる。
爆発の後、爆煙が消えるとそこには何も残っていなかった。
山が一つなくなっていたのだ。
私はその威力に戦慄した。
「者ども攻撃開始だ」
「いくぞ」
しかし、セドリックと竜ちゃんはそれにもびくともしていなかった。
私の横に飛びだしていた。
セドリックは青い竜に竜ちゃんは黄色い竜に向かって行く。
ズドーン!
ズドーン!
タンバの兵士達の鉄砲の一斉攻撃が始まった。
鉄砲盾を構えつつ、兵士が帝国兵に向けて鉄砲を放っていた。
帝国からも反撃される。
昼の十二時過ぎに世に言う第二次テンモク山の戦いが開始されたのだ。








