とあるエドの民視点 第六皇子殿下に助けられて恋してしまいました
私はユイ、エドに住んでいて今はエドの飯屋で働いているの。
飯屋って巷で言う変なところじゃないわよ。
ここは普通にご飯食べるところよ。
最近異国との交易が盛んになって、旅籠や飯屋で女郎を置きだしたところもあるんだって。
でも、このハンバーグ亭は最近話題のハンバーグを安く食べられる店としてエドの町でも繁盛しているのよ。
私はその給仕をしていてねその看板娘って訳。
だから給金もそこそこもらっていた。
でも、ここ二三年急に帝国とか言う偉そうな異国の人が威張りだしたのだよ。
なんでも、その領事館がエドの町に出来たそうで、帝国街っていう夷人だけの街もシナガワの方に出来たみたい。
だから最近柄の悪い人が増えて結構お店も大変になってきた。
そんな時よ。
反逆が起こったのは。
なんでもナニワの国を治めていてた王弟のナニワ伯が、その兄である国王様を殺して、国を乗っ取ったんだって。
反逆なんて起こるのは私が知る限り初めてよ。
新しい王様は綺麗だった王妃様やその息子で可愛らしいと私達の間でも人気のシンノジョウ様も処刑したんだって。
私には信じられなかった。
やっぱり夷人の血を引いているナニワは野蛮人だったんだ。
でも、そんなの平民の私達が言えることじゃあないけれど。
一番の大問題はこのエドの町がその帝国の領地になったって事よ。
「平民共、よく聞け。この地は今から畏れ多くも大陸の過半を占めるトゥール帝国の領土となったのだ。これほど喜ばしいことはないぞ」
その旨を書いた立て札を掲げた夷人の役人が偉そうに宣言してくれた。
「何という罰当たりな」
それを聞いて隣で見ていたおばあちゃんが声を出していた。
「な、何だとばばあ、何か文句があるのか?」
役人がいきり立っておばあちゃんを見た。
「この国は畏れ多くも天神アマテラス陛下のお作りになった国じゃ。それを異国が取るとは神をも恐れぬ蛮行じゃ」
「そうだそうだ」
「出て行け夷人共!」
周りの血気盛んな男達も叫んでくれた。
「何だと、貴様等、我が帝国に逆らうのか?」
「ふんっ、何が帝国じゃ。所詮夷敵の国じゃ」
「そうだそうだ」
「消えろ夷人共」
男達はそう言うと役人達に石を投げ出した。
私は見ているだけだったが、あっという間に皆暴徒と化していた。
役人達がもみクチャにされて看板は倒されていた。
私は暴力は良くないと思いつつ、私はざまあみろと心の底では思っていた。
その時は……
でも翌日だ。
帝国は大規模な兵を動員して、昨日暴れた者達が捕まったのだ。
おばあちゃんは拷問にかけられて殺されたと風の便りに聞いた。
帝国に逆らうとやばい。
私達庶民は心の底から振るえ上った。
エドの町は帝国の兵士達や商人が威張って闊歩するようになって、周りの国からの観光客はバタリと来なくなってしまった。
私の働いているお店のハンバーグ亭も当時は客足はガラガラになって、私はクビも覚悟した。
最近だ。やっと客足も少し戻ってきたのは。
お昼時は忙しくなりつつあった。
「おまちどおさま」
私が常連さんのところに煮込みハンバーグを持っていった時だ。
「おい、小娘。俺達の分はまだか?」
帝国の厳つそうな兵士が怒り出したんだけど、
「済みません。順番にお持ちしていて、もう少しお待ちください」
私は必死に頭を下げた。
「ちっ」
男は舌打ちしたが、それ以上は言ってこなかったので、ほっとした。
「はい、ユイちゃん、出来たよ」
親父さんは私達を見て、兵士さんの分を早めに作ってくれたみたいだ。
「ありがとうございます」
私は喜んで兵士さんの所に持っていった。
「おまちどおさまでした」
そして、トレイをお客さんのところにおいた時だ。
いきなりその兵士に抱き寄せられたのだ。
一瞬何をされたか理解できなかった。
「ねえちゃん、中々いい体つきしているな」
兵士が私の体をまさぐりだしたのだ。
「きゃっ」
私は思わず悲鳴を上げて、逃れようとした。
「止めてください」
「何を言う。お前いくらだ? お前なら金を払ってやって良いぜ」
男は下卑た笑みを浮かべてくれた。
「何言っているんですか? 私はそんな女じゃありません」
「そんな女じゃないってここは飯屋だろうが」
「お客さん。ここはそういう飯屋じゃないんです」
親父さんが飛び出してきて止めさせようとしてくれた。
「煩い、親父は引っ込んでいろ」
男は親父さんを突き飛ばしてくれた。
「きゃっ」
親父さんは別の人が食事している机に吹っ飛んでいって机毎ひっくり返していた。
「親父さん」
「お前は自分の心配をした方が良いんじゃ無いか」
男はそう言ってにやけると手を私の胸元から差し込もうとしてくれた。
「嫌ーーーー!」
私が筆死に叫んだ時だ。
「何をしている?」
氷のような冷たい言葉が聞こえた。
「じゃまするな!」
男は前にいる若い男に叫んでいた。
「で、殿下」
前でにやけていた男が慌てて立上がった。
「で、殿下だと?」
「第六皇子殿下だ」
前の男が直立不動でそう言っていた。
「…………」
私を捕まえていた男も慌ててその男を見た。
そして、慌てて私を放すと直立不動になった。
その第六皇子と言われた男が怒り狂っているのは見て判った。
「貴様。昨日総督が全兵士に再度徹底したことを覚えているか」
「はい。民間人に不埒に事をするなかれ」
私を抱いていた男は青くなって言っていた。
「それを破ってどうする」
第六王子様は男の顔を思いっきり殴り倒してくれた。
ダンッ
男は顔中血まみれにして地面に倒れ込んでいた。
「貴様もだ」
目の前の男も殴られていた。
「こいつらを連れて行け」
「「はっ」」
後ろに立っていた憲兵とおぼしき男達が二人を引き連れていった。
私はほっとした。
「あ、ありがとうございました」
そして、はっとして男の人に頭を下げていた。
「大丈夫だったか?」
男の人は私に話しかけてくれた。
「はい」
私は赤くなって頷いていた。
「なら良かった」
第六皇子はニコリと笑ってくれた。
私はその綺麗な笑顔をみてぼうっとしてしまった。
「親父、兵士が迷惑をかけた。これは少ないがとっておいてくれ」
皇子殿下は親父さんに金貨を10枚渡すと
「しかし、こんなに沢山は」
「なあに迷惑料だ」
そう言うと颯爽と部下を連れて出て行ったのだ。
私はそれをただただぼうっとして見送っていた。
私が第六皇子殿下に恋した瞬間だった。








