帝国総督視点 ヤマトの王になろうと思いました
俺は外交関係の仕事をしている関係で東の大国イースタン王国の大使のライトル伯爵とは親しかった。
彼は外交畑では私よりも大先輩で、彼にはいろんな事を教わった。
そんな彼が黄金の国ジパングに執着しているのは知っていた。
「ボドイン侯爵。ジパングには私の血を分けた娘が嫁いでおりましたな。その息子がいずれジパングの国王となるのですよ」
会うたびにライトル伯爵は自慢していたものだ。
結局はジパングはそのライトル伯爵の孫ではなくてその兄が国王に就いたのだが……
ライトル伯爵としては残念な結果になっただろう。
少し前から情勢は悪いと宣っていたが、最後は後ろ盾のライトル伯爵が亡くなったのがとどめだった。
父はその時外務卿を拝命していて、俺はその頃はまだ父の下隅で一生懸命外交のイロハについて習っているところだった。
「アラン、イースト王国に大使として就任するか?」
父はライトルの後釜に俺を推薦してくれた。
「しかし、父上、イースト王国は大国です。ライトル伯爵の後に若造の私が行けば侮られるのではありますまいか」
俺は懸念事項を口にした。
「そうだな。その懸念もある。何しろイースト王国はしたたかだからな。それに他国の大使もやり手を配しておる」
父は少し逡巡した。
「判った、その方はヤマト王国に大使としていけ。そこで実績を上げてその後でイースト王国の大使として赴けば良かろう」
「ジパングですか?」
俺は少し考えた。
「不満か?」
「いえ、判りました」
俺はライトルから散々ジパングの話は聞いていたので、練習するならヤマトで良いと思ったのだ。
以来十数年。
俺はヤマトに留まり続けていた。
父は他界して他の者が外務卿を拝命していた。
イースト王国の大使の話しもあったのだが、俺は何故かこの地に留まることを望んでいた。
イースト王国は列強諸国が虎視眈々と狙っており、何をやるにしても他国との調整が必要でそれはそれで外交官としてはやりがいがあるのだが、何かとやりにくい。
それに比べればヤマトは辺境の国という事で他国の干渉も少なかった。
そんな中、俺はライトルの孫の皇子、臣籍降下してナニワ伯となった男と親しくなった。
今の皇帝陛下は領土欲が旺盛だ。
ここで、ヤマト王国を帝国の属国にすれば陛下の歓心も買えるだろう。
いざとなれば最後は併合しても良い。
その実績を持って帝国に帰れば外務卿の席も容易かろう。
上手くいけばその属国の国王となるのも可能かもしれない。
俺は万難を期してナニワに反逆することを指嗾したのだ。
ナニワは単純だった。
あっという間に兄である国王を殺してくれたのだ。
そして、そのまま軍をキョウに進めてくれた。
しかし、ヤマトは国王が死んでも軍は健在だった。
凄まじい抵抗にあったのだ。
東部方面軍から借りた軍勢では歯も立たなかった。
このままでは不味い。
ナニワの軍も我が軍もキョウに攻め入ったは良いが、何回もはじき返されていた。
俺は東部方面軍司令官に頼み込んで東部方面軍の誇る魔導師四天王を借りた。
さすが魔導師だった。
ヤマトの地にはあまり大した魔導師はいなかったらしい。
ヤマトの武士達は四天王の攻撃で崩れると一気に敗走した。
俺はそのまま、王宮に乗り込んだ。
美貌の誉れ高い王妃をヤマトの側女にしようとしたのだ。
しかし、王妃は既に自死した後だった。
ナニワも王妃を狙っていたらしい。
余計な事をしてくれたものだ。
俺はせっかくの楽しみを取られて癪に障っていた。
江戸の地を租借して皇帝陛下には褒められたが、これだけではどうしようもなかった。
そんな中、大和王朝の生き残りの王女が帰還してきた。
ユキとか言う女だ。
女だてらに冒険者として今まで諸国を漫遊していたらしい。
俺はその女と息子を婚約させた。
「ええええ! 親父、あの脳筋と婚約するのは嫌だ。俺はバルバラの方が良い」
長男のアデラールは侍女に産ませた息子だからか頭の少し抜けたところがあった。
ユキは正当な大和王朝の王女だ。
武士達の中でも未だに信奉している者は多いという。
その娘を息子と結婚させれば俺の孫は大和王朝の正当な後継者となる。
最悪、邪魔な、ナニワを始末しても良かろう。
そうすれば完全にヤマト王国は俺の物となる。
それが理解できないのだ。
この男で大丈夫か?
俺は息子に一抹の不安を覚えた。
その予感は当たってくれた。
俺の息子はやはり所詮役立たずだった。
なんと学園の卒業パーティーでそのユキを婚約破棄してくれたのだ。
挙げ句の果てにはそのユキに返り討ちに遭うという失態をおかしてくれた。
せめてユキを捕まえてくれればなんとかやりようもあったが、殺されてしまってはどうしようもない。
俺は直ちに本国に援軍を求めた。
これはヤマトを併合する大チャンスだ。
帝国本土からは、第六皇子と三頭の竜とその竜使いの一行が、東部方面軍からは一人欠けた四天王が送られてきた。
俺は第六皇子が何かで活躍したという話は聞いたことがなかった。
皇帝陛下の第六皇子など初めて聞いた。
何でも反逆したユキ王女とは知り合いらしい。
その関係で皇帝陛下が寄越してくれたのだとか。
俺は志願してきた第六皇子を使者に反逆者に降伏を勧めた。
今降伏すればナニワ伯の治めていた土地を与えるという帝国にしてみればとても寛大な処置だった。
しかし、第六皇子は王女に親書さえ渡せなかったそうだ。
本当に役立たずだ。
本国ももう少し使える奴を送って欲しかった。
まあ、皇太子殿下が出てこなかっただけましだろう。
皇太子殿下が出てくれば俺の手柄を全て取られるところだった。
こうなればその王女と戦うしかあるまい。
戦力はヤマトの方があるのかもしれないが、こちらには三頭の竜と三人の魔導師がいるのだ。
負けるわけはあるまい。
俺は三つに別れたユキ王女の本体を全軍を使って襲うことにしたのだ。
軍を分けるなど素人の戦い方だ。
王女さえ倒せば首謀者を無くしたヤマト軍は降伏するしかなくなるだろう。
そうすれば俺はこの国の王に成れるかもしれない。
俺はほくそ笑んだ。








