竜を引き連れて進軍を始めたら帝国の第六皇子が現れました
竜ちゃんは宙に浮き上がると、そのまま大きく羽ばたいて空に向かって飛び出してくれた。
見る間に今までいた地上が小さくなる。
あっと言う間に地上は豆粒みたいになってくれた。
「お母様、私もアマテラス様みたいに竜に乗って空を飛んでみいわ」
建国神話を読んでもらう度に私は母に自分の希望を口にしていた。
「そうね。ユキが良い子にしていたら竜神様が乗せてくれるかもしれないわ」
「判った。私良い子にしているわ」
「でも、ユキや、良い子にしていただけでは無理かもしれんぞ。もっともっと努力してアマテラス様みたいに強くならないと」
お父様が笑って諭してくれた。
お父様なりの励ましだったんだと思う。
私はお父様の言うように死に者狂いで訓練してここまで強くなった。
「姉様。姉様が竜神様の背中に乗せてもらったら僕も一緒に乗せて」
「判ったわ。そうなったら絶対にシンノジョウも乗せてあげる」
弟のシンノジョウの言葉に私は約束したのだ。
私は小さい時から空を飛んでみたいと望んでいたけれど、その夢が叶うなんて想像だにしていなかった。
この姿をシンノジョウに見せたかったけれど、もうシンノジョウはいない。
私の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
ビュービュー
凄まじい風切り音と共に風が私の正面からぶつかってくる。
その風が涙を吹き飛ばしてくれた。
悲しくなった私は竜ちゃんの首にしっかりと抱き付いていた。
竜ちゃんはとても暖かかった。
私の冷え切った体を温めてくれた。
今まで馬を駆ってきた山々が模型のように小さく見える。
私は感動していた。
そして、ものの30分もしないうちにシオジリの宿が見えてきた。
シオジリの宿場町は本当にジオラマみたいに見えた。
「おい、竜だぞ!」
「大変だ、竜が現れたぞ!」
「直ちに戦闘態勢に入れ」
下では武士達が叫んでいるのか見えた。
その騒いでいる武士達が徐々に大きくなってきた。
「おい、竜の上に誰かいないか?」
一人の武士が叫びだしたのが見えた。
「そんな訳あるか」
「いや、誰か乗っているぞ」
「おおい!」
私は大きく手を振っていた。
「あれは姫様だ!」
「あっ、本当だ!」
「姫様が竜に乗っておられるぞ」
「凄い、姫様が竜を手懐けて戻られたぞ」
「「「ウォーーーー」」」
住民や武士達は喜んで騒いでくれた。
私は宿場町の外れに竜ちゃんを着陸させた。
「姫様、まさか竜を手懐けて戻られるなんて、想像だにしていませんでした」
飛んで来たヒロトに言われた。
「一体どうされたのです?」
「いや、竜ちゃんが私に向かってきたので、殴り倒したのよ」
「竜を殴り倒したって……」
私の言い訳にヒロトが絶句していた。
いつもは後ろでそれを説明して話を大きくするアオイ等が静かなのが気になって後ろを振り返ると、
「だ、大丈夫ですか」
皆に助け起こされてふらふらになって竜から降りるところだった。
「えっ、アオイ達、一体どうしたの?」
私が尋ねると、
「どうしたって、普通の人間はこうなりますよ」
「振り落とされないようにするのが必死で」
「姫様みたいにピンピンしているのが信じられないです」
いつもは元気なアラレにまで言われてしまったのだが……
皆じろじろ私とアオイ達を見比べてくれた。
「ちょっと私は化け物じゃないわよ」
「ピー」
皆を下ろして小さくなった竜ちゃんが私に頷いてくれたんだけど……他の誰もその言葉に頷いてくれなかった。
私が初代アマテラス様のように竜を従えたという噂は直ちに街道を通して全国に広がった。
それと同時に帰順する武士や貴族が次々に現れたのだ。
それはトウカイドウを束ねるタンバの行軍にも影響した。
今までは領主を味方に付けるのも一苦労のことも多かったみたいだが、私が竜を従えたという話が広まったためか、今度は領主自ら東征軍を出迎えるようになったそうだ。
我がナカセンドウ軍はこれまで集まっても5千しかいなかった。
率いてきた軍と併せて1万五千だ。
それが私が竜を従えたと聞いた途端に膨れ上がって3万を超えた。
私は軍を分けた。
温厚なイガ伯、ソウヘイの祖父に集まった2万を付けて、ナカセンドウを進撃させたのたよ。
私自身はエドへの最短ルートコウシュウ街道を元々率いてきた1万を率いて通ることにした。
進軍は順調で可愛い竜ちゃんを抱きしめている私を見る度に領主達は平伏して私に従うことを約してくれた。
カイの国の国都コウフではカイ伯の大歓迎を受けて、一路エドに向かいだした時だ。
「姫様、前方に土下座をしている帝国の騎士がいます。姫様の知り合いだと申しておりますがいかがいたしますか?」
前方を偵察に出ていたアオイが報告してくれた。
「帝国の騎士?」
私はそれを聞いて嫌な顔を思いだしたいた。
「誰だ? 帝国の騎士になど知り合いはいないぞ」
私が否定すると
「セドリックと申しておりますが……」
アオイは最悪の名前を挙げてくれた。
そのまま剣を抜いて駆け出さなかった私を褒めて欲しい。
でも何をしに来たんだ?
私はしばし固まってしまった。








