剱岳の崖を登っていたら 黄金の竜に襲いかかられました
私達はお弁当を食べるとその先に進んだ。
登りが急になってきたので、途中で馬を降りた。
この先は徒歩だ。
いよいよ登山道だった。
まあ、皆脳筋だから体力だけは問題ないだろう。
私は楽観していた。
しかし、途中まで晴れていたのに、急に曇ってきた。
そして、辺りが白くなってきたのだ。
雲の中に入ったようだ。
「ガスって来ましたな」
サツマが渋い顔をした。
下手したら一瞬先も見えなくなった。
簡単な地図を持ってきたが、この白い霧で周りがほとんど見えなくなる。
ツルギ岳は標高は三千メートル近くてこの辺りでは一番高い山だ。晴れていれば頂上を目指せば良かったが、視界が悪くなると、頂上がどこかが判らなくなった。
「こちらです」
アオイが先頭に立って登ってくれた。
ぐんぐん標高を稼いでくれる。
獣道に沿って登ってきたのだがいつしか獣道もなくなっていた。
道なき道を草木をかき分けて進む。
私達は汗だくだった。
「痛い!」
二番目を歩くソウヘイが叫んでいた。
アオイが跳ねた木が当たったのだ。
「何をしているの? 鈍臭いのね」
「貴様が木を跳ねたんだろうが」
「それくらい避けなさいよね」
「何だと」
「おい、いい加減にしろ」
見言い合う2人に私が注意した。
「本当にこの道で合っているのか?」
ソウヘイがアオイに質問した。
道も何も既に道なき道を藪漕ぎして進んでいるのだが……
「当たり前でしょ」
「その理由は?」
「野生の勘よ」
アオイの答えを聞いて私は本当にこのルートで合っているのかとても不安になった。
「おいおい、大丈夫なのかよ?」
「黙って付いてきなさいよ」
「お前の野生の勘を信じられるか!」
ソウヘイは文句を言ったが、
「ここまで来たんだ。信じるしかあるまい」
私はソウヘイをなだめた。
そう、ここまでアオイについてきたのだ。ここはアオイの野生の勘に従うしか無いだろう。
しかし、そのルートもいきなり草木がなくなって、目の前の高い崖の壁にぶつかってしまった。
周りがガスっているというのもあって当然上は見えない。
相当高い崖だというのは判った。
「やっぱりお前を信じて来るんでは無かったな」
ソウヘイが文句を言い出したが、
「煩いわね。方向はこちらで合っていたのよ。少し道を探してきます」
「俺も行こう」
「別に来なくても良いわよ」
「そういうわけにもいかない」
ソウヘイとアオイが先行した。
これだったらこの辺りの地理に詳しい者を連れてくれば良かった。
私は少し後悔した。
脳筋だから体力だけはあるから遭難しても問題は無かったが、ツルギ岳の山頂に行けないのはまずい。
「姫様、どうやらこの崖を登るしか無いです」
帰ってきたアオイが報告してきた。
「この崖を登るのか」
私は崖を見上げた。
ガスっているから当然上は見えない。
どれだけ高いかも判らなかった。
私はため息をつきたくなった。
「ここは私が先行しましょう」
横からアラレが言うと身軽に登り出してくれた。
岩に手がかりや足場を一瞬で見つけてひょいひょいと登っていく。
猿みたいだと思ってしまったのはアラレには秘密だ。
「ちょっとアラレ、待ちなさいよ」
慌ててアオイがそれに続いた。
こちらは強引に体力で勝負するタイプだ。
手がかりも足場も関係なしに力業でドンドン登っていく。
何も無いところを走るように登っていくんだが……
「サツマ、お前はここに残っても良いぞ」
私はサツマにそう言ったが、
「何を申されます。姫様。この様な崖、どうということはございません」
サツマは粋がっていうが、こういうことは不得意そうだ。
「ソウヘイ、お前が殿をしてくれ。頼むぞ」
「えっ、私がサツマ伯の面倒を見るんですか」
「何じゃ若造、不満か? 儂はまだまだ貴様等よりも体力はあるぞ」
不満そうなソウヘイとサツマを置いて私はアオイに続いた。
まあ、崖はある程度、掴まるところや足場になりそうな所はありそうだ。
私は慎重に登った。
少し登って下を見るとサツマとソウヘイも見えなかった。
サツマは体力はありそうだが、こういう崖登りとかは得意そうには見えなかった。
ソウヘイには悪いが面倒は任せよう。
それより先の2人だ。
2人の姿もとっくに消えていた。
猿のアラレはともかく、体力馬鹿のアオイにまで置いていかれたらしい。
私は少し休めるくらい広い場所を見つけた。
そこに座って少し休憩した。
風が吹いてきて気持ちよかった。
背嚢から水筒を取り出して口に含む。
衣服も結構濡れていた。
霧で濡れたのだろう。
汗もかいているし、早めに片付けないと風邪を引くかもしれない。
私が登ろうとした時だ。
「ギャオーーーー」
凄まじい咆哮が崖の上から聞こえてきた。
ドシーーーン!
という凄まじい衝撃音がした。
「アオイ!」
アラレの悲鳴が聞こえた。
「何があった?」
私は慌てて登り出した。
もう、手がかりも足場も関係無かった。
力に任せて青い方式で一気に登る。
風が吹いて、上の霧を払ってくれた。
そこには崖の上にとまっている巨大な黄金の竜がいた。
「何で竜がこんなところにいるんだ?」
私は思わず口に出していた。
「ギャオーーーーー」
私の呟きを拾ったのか、竜がこちらを見てくれた。
その瞳は獲物を見つけた猛禽類のそれだった。
竜はそのまま私に向かって襲いかかってきたのだ。
掴まるところもほとんど無い崖の途中で竜に襲われるユキの運命や如何に?
続きは今夜です。
お楽しみに








