八岐大蛇を退治しましたが、その尻尾に宝剣を持っていませんでした。
「「「ギャオーーーーー」」」
8首の巨大蛇の怪物……すなわち八岐大蛇が咆哮してくれた。
凄まじい大音響で私達は思わず耳を塞いでいた。
ヤマト王国建国後の伝説、やまたのおろち、アマテラスの弟スサノオに退治された怪物だ。
それが何故ここにいる?
私は頭を抱えたくなった。
八岐大蛇は八つの首で私達を睥睨してくれた。
余裕綽々の表情だった。
八岐大蛇は8っつの頭がある。
それに対してこちらは5人だ。
数が合わないんだけど……
どうやって退治しよう?
「ようし、頭が八つあるな。早いもの勝ちだぞ」
「ふんっ、貴様になんか負けるか」
何故かアオイとアラレは全く恐れていないみたいだった。
「ようし、儂は一番右の二つをやるぞ」
サツマが大言を吐いてくれた。
一人で2つ首を取るつもりらしい。
「ええええ! じゃあ、私はその隣の右の二つ」
「私はその隣の二つを」
アオイとアラレは不満そうだ。
「仕方が無い、最後の二つは俺がやろう」
ソウヘイまで言いだしてくれたんだけど……
「えっ、私は?」
私の出番が無い。
「姫様はクサナギの剱を探すんでしょ」
「全ての尻尾をお任せします」
「ええええ!」
私の不満を無視して、
「死ねーーーーー!」
アオイがいきなり魔術を全開にした。
いきなり三番目の顔が炎に包まれた。
「ギャーーーー」
断末魔の声を上げて一つ目の首が崩れ落ちていたんだけど……
残りの7つの顔がぎょっとした。
「おのれ、先を越されたか」
サツマが駆け出した。
「負けはしません」
「俺も」
アラレとソウヘイも駆け出したんだけど……ええええ! 真打ちの私の出番はないの?
私が呆然としているうちに、
「「「「「ギャーーーー」」」」」
断末魔の八岐大蛇の咆哮が聞こえてきたんだけど……
その時には3つの首が落とされていた。
アラレなんて蹴飛ばしてヤマタノオロチの首を落としていたし……なんて蹴りの力なの。ナニワが絶叫したはずよ。あの一撃で宦官になったのは確実だった。
ソウヘイが恐れるわけだ。
「ギョエエエエエ!」
やばいと察知した八岐大蛇が逃げようとし出した。
しかし、もう遅い。
「「「「ギャー!」」」」
次の瞬間には4人には断末魔の声を上げて首を落とされていた。
ドシーン!
八岐大蛇は全ての首を落とされて地面に倒れたいた。
あっけない最後だった。
でも、それからが私は大変だった。
「姫様、すぐに八岐大蛇の尻尾を切らないと。クサナギの剱が消えたら大変でしょ」
アオイが慌てて言いだした。
八岐大蛇はほっておくと消えるのか?
知らなかった。
「儂は一番右の奴だと思いますぞ」
「これか?」
私はサツマの言葉に従って一番右の尻尾を斬り裂いた。
しかし、黒い血潮が飛び出しただけだった。
「変ですな」
「姫様、一番左ですって」
今度はソウヘイの言うように一番左の尻尾を斬り落とした。
でも、何も出てこない。
「三番目じゃないですか?」
「いやいや、五番目でしょう!」
皆が言うように次々に斬り裂くが出てこなかった。
「ええい、こうなれば自棄だ」
私は剣が出てくるまで尻尾を切ることにした。
しかし、七本目まで斬ったが出てこなかったのだ。
なんとも不運だった。
私は八岐大蛇の黒い血で染まって真っ黒になっていた。
「はあはあ」
肩で息をしていた。
「ようし、これで最後だ」
これでいくら何でも出てくるだろう。
私は渾身の力を込めて八岐大蛇の最後に残った尻尾を斬り裂いたのだ。
スパッ
しかし、黒い血が流れただけだった。
そこには何もなかったのだ。
「な、なんでよ?」
私は唖然とした。
「変ですな」
残りの四人も驚いて私と八岐大蛇の死骸を見比べていた。
「あっ!」
ソウヘイが突然素っ頓狂な声を上げた。
「どうしたの、ソウヘイ?」
不審な顔でアオイが尋ねていた。
「そう言えば初代アマテラス帝はクサナギの剱を剱岳の頂上に奉納されたのではなかったですか?」
そう言えばそうだった。
何でここに八岐大蛇が復活したのか判らなかったが、剱岳の頂上にクサナギの剱はあるはずだ。
それなら八岐大蛇の尻尾に入っているはずは無いのよ。
「ええええ!」
私は思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
今までの私の努力は何だったの?
確かにアオイ等五人は戦闘では圧倒的に強い。
帝国軍も押し返せるだろう。
でも、ダメだ、脳筋ばかり揃っても!
私はその事を本当に思い知らされた。
この場にヒロトがいればもっと早い段階で教えてくれたはずだ。
クサナギの剱を取ってくるのは、戦闘しか関係無いからとヒロトは必要ないと思った私が浅はかだった。
脳筋が5人が揃っても、0かける5は0にしかならない。
その事を改めて理解できた。
「グーーーー!」
アオイのお腹が大きく鳴った。
「何だ、アオイは腹が減ったのか?」
ソウヘイが馬鹿にしていた。
「何よ。腹が減っては戦はできないって言うじゃない!」
アオイは居直っていた。
「それはそうだけど」
「判った。めしにしよう。少し疲れた」
私達は、シオジリの宿で握ってもらった握り飯を食べた。
「「「……」」」
皆静かなのは疲れ切ったからなのか、自分の馬鹿さ加減に少しは気付いたからなのか……
後者であってほしい。私は期待したのだが……
「ちょっとソウヘイ、あなた私の明太子おにぎり取ったわね!」
「何を言うアオイ、俺はこの明太子を最初から狙っていたのだ!」
「はああああ! 私が狙っていたんでしょう。だから私の目の前においておいたんじゃない」
二人はいきなり言い争いを始めた。
こいつらは食べるのに忙しかっただけだというのはよく判った……
こんな脳筋だけ連れて果たして剱が手に入るのか?
私はとても不安になってきた。
ここまで読んで頂いて有り難うございました。
次は剱を守る本命が登場します。お楽しみに!








