星渡りの石列編 102話 足音を数える少女
リシアたちは、星渡りの石列にたどり着いた。
そこでは、自分の足音が遅れてついてくるという噂の通り、歩いた後から砂を踏む音が返ってきた。
石列の奥から逃げてきた旅人サージは、亡くなった母の足音を聞き、石列へ引き戻されかけていた。
リシアは聞くだけでは間に合わないと判断し、サージの足を本人へ返すための歌を歌った。
サージは踏みとどまったが、石列はリシアの声も覚えてしまう。
石守り見習いの少女リーネは、夜の石列では足音が本人より先に帰り道を知り、追いついた足音はその人を一番戻りたい場所へ連れていくと告げた。
石守りの小屋には、時計がなかった。
代わりに、床一面に小石が並んでいた。
丸い石、欠けた石、白い石、黒い石。大きさも形もばらばらだが、無造作に置かれているわけではない。入口から奥の壁へ向かって、細い道のように列を作っている。
リシアは小屋へ入ってすぐ、その小石の列に足を止めた。
石列の外れに建つ小屋は、外から見るよりずっと狭い。壁は厚い石で積まれ、屋根は木と干し草で補強されている。窓は小さく、外の風が入ってこないよう布が掛けられていた。
けれど、音だけは妙によく通る。
鞄についた返る鈴が、少し揺れただけで鳴った。
ちりん。
その音は小屋の中で丸く響き、石の床に落ちた。
リーネはすぐに小石を一つ動かした。
白い石を、黒い石の横へ。
リシアはその手元を見つめる。
「今のは?」
「鈴の音です」
リーネは淡々と答えた。
「外の石列へ少しだけ触れました。返ってくるかもしれないので、数に入れます」
「音も数えるんですか」
「音を数えないと、足音と混ざります」
リーネは短い棒で床の小石を軽く叩いた。
かつん、と乾いた音がする。
その音に、肩の上のシルが耳を立てた。
シルは焼き菓子の残りを両前足で抱えている。けれど、さっきから一度もかじっていない。あれほど大事そうに音を合わせていたのに、今はただ石の床とリーネの手元を交互に見ていた。
リシアは小声で尋ねる。
「食べないの?」
シルは焼き菓子を抱え直した。
まるで、今は音を増やしたくない、と言っているようだった。
「……賢いね」
ちい、とシルは小さく鳴いた。
褒められたことには満足したらしい。
リシアは少しだけ笑いかけたが、すぐに視線をサージへ戻した。
サージは小屋の壁際に腰を下ろしていた。
膝を抱え、ほどけた靴紐を何度も結び直そうとしている。だが、指先が震えてうまく結べない。結び目はすぐほどけ、彼は苛立ったように息を吐いた。
「手伝います」
リシアが膝をつくと、サージは一瞬だけ拒むように足を引いた。
だが、すぐに力が抜ける。
「……悪い」
「大丈夫です」
リシアは靴紐を取り、ゆっくり結び直した。
旅人の靴だった。
底はすり減り、つま先は傷だらけになっている。長い距離を歩いてきた足だ。けれど、その足が今は持ち主の意思を疑っているように震えていた。
「痛みはありますか」
「足は平気だ」
サージは答えた。
「平気なのが、気持ち悪い。さっきまで、自分の足じゃなかったみたいなのに」
リシアは結び終えた靴紐から手を離す。
「今は、動かせますか」
サージは恐る恐るつま先を上げた。
少し遅れて、踵が床を擦る。
ざり。
小屋の中に、砂を踏むような音がした。
誰も外を歩いていない。
リシアの背筋が冷えた。
リーネがすぐに小石を二つ動かす。
「今のは本人の音ではありません」
サージの顔が強張る。
「おい」
「小屋の中までは入っていません。ただ、入口の石に触れました」
「どう違うんだよ」
「入っていたら、あなたはもう立っています」
リーネの声は平坦だった。
恐ろしい内容を口にしているのに、表情は変わらない。
サージは青ざめた顔で扉の方を見た。
厚い木の扉は閉まっている。
その外で、夕方の風が石列を撫でていた。
リシアはリーネへ向き直る。
「足音は、小屋へ入れないんですか」
「入れないようにしています」
リーネは壁に掛けられた石札を指した。
薄い石板に、細い線が刻まれている。星座のようにも、足跡のようにも見える線。その線の端には、小さな鈴が一つ結ばれていた。
「石守りの小屋は、歩かなかった場所として数えられています。だから、足音は入り口で迷います」
「歩かなかった場所?」
「昔の石守りが、ここだけは星渡りの道から外しました。足を休めるためではなく、足音を休めるために」
リシアは小屋の床を見る。
石の床には、踏み跡がほとんどない。
毎日人が出入りしているはずなのに、砂も泥もあまり残っていなかった。小石の列だけが、静かに時間を数えている。
「リーネさんは、ずっとここで足音を数えているんですか」
「見習いなので、昼の数だけです」
「夜は?」
リーネは小さく首を横に振った。
「夜は師匠が数えます。でも、今はいません」
リシアは眉を寄せた。
「どこへ?」
「石列の中です」
サージが顔を上げる。
「中って、今夜は入らない方がいいって言っただろ」
「だから、戻ってこないと困ります」
リーネは当たり前のように言った。
その言葉が、小屋の中を急に冷たくする。
リシアはリーネの表情を見た。
灰色の髪の少女は、泣きそうには見えない。
怖がっているようにも見えない。
けれど、心歌は違った。
リシアの耳に、細い音が触れる。
『数えなきゃ。乱したら駄目。泣いたら数を間違える。師匠は戻る。戻らない数なんてない』
リシアは息を詰めた。
リーネは落ち着いているのではない。
感情を床の小石へ置いている。
泣く代わりに、数えている。
怖がる代わりに、数えている。
それが彼女の役目であり、自分を崩さないための支えでもあるのだろう。
リシアはその心歌へすぐに踏み込まなかった。
けれど、見なかったことにはしない。
「リーネさん」
「リーネでいいです」
「では、リーネ。師匠さんは、いつ石列へ入ったんですか」
「日暮れ前です」
「理由は?」
「子どもの足音が、一つ迷い込んだからです」
リシアの喉が止まった。
「子ども?」
サージも立ち上がりかけた。
リーネがすぐに床の小石を叩く。
「動かないでください。あなたの足音はまだ外にいます」
「子どもって何だよ」
「旅芸人の一座が昼前に通りました。その中の男の子が、石列の中へ小さな銀笛を落としました。取りに行くと言って、入口を三歩だけ越えた」
「それで?」
「戻ってきたのは、その子だけです」
リシアは言葉の意味を考えた。
戻ってきたのは、その子だけ。
「足音は?」
「戻っていません」
リーネは小石を一つ、列から外した。
「足音が戻らない子は、夜になると眠れません。眠った瞬間、夢の中で歩き始めます」
サージが呻く。
「何なんだよ、この場所は」
リシアはリーネを見る。
「その子は今、どこに?」
「隣の物置です。母親が付き添っています」
「会えますか」
「会えます。でも、歌うなら先に言ってください」
リーネの目が、初めて少しだけ鋭くなった。
「この小屋で歌うと、石列が覚えます。覚えた歌は、遅れて返ってきます。返ってきた歌が誰の足を動かすかは、石守りでも全部は分かりません」
リシアは胸の奥がわずかに重くなるのを感じた。
さっき歌った短い守護詩。
あれでサージは踏みとどまった。
でも、リーネの言う通りなら、石列はその歌を覚えている。
助けるために歌ったものが、遅れて別の誰かへ届くかもしれない。
届き方を間違えれば、足を止めるどころか、別の道へ引くかもしれない。
リシアは手を握った。
歌う責任。
その言葉が、ミレネを出る前よりずっと重く感じられる。
それでも、喉を閉じる理由にはしない。
「分かりました。歌う時は、必ず伝えます」
リーネは頷いた。
「では、こちらです」
小屋の奥には、低い扉があった。
リーネが開けると、干し草と古い木箱の匂いが流れてくる。物置と言っていたが、中は急ごしらえの休み場所になっていた。毛布が敷かれ、小さなランタンが一つ置かれている。
その毛布の上に、十歳ほどの男の子が座っていた。
黒い髪を耳の下で切り揃え、膝を抱えている。足元には靴がちゃんと二つ揃っているのに、彼はまるで自分の足がそこにないかのように、何度もつま先を見ていた。
その隣に、赤い頭巾をかぶった女性が座っている。
母親だろう。旅芸人らしい派手な布を腰に巻いているが、顔は疲れきっていた。
「また誰か来たの?」
男の子が小さく言った。
「歌術師です」
リーネが答える。
その瞬間、女性の目に期待が灯った。
「歌術師様……!」
彼女は立ち上がりかけ、すぐに膝をついた。
「お願いします。この子を眠らせてください。昨日から一睡もしていないんです。眠ると歩き出すって言われて、怖がって、ずっと起きていて」
リシアは男の子を見る。
「名前を聞いてもいいですか」
「……ピオ」
「ピオくん。足は痛い?」
ピオは首を横に振った。
「痛くない。でも、ないみたい」
「ないみたい?」
「ここにあるのは分かる」
ピオは自分の足を指差す。
「でも、歩いた音が向こうにある。だから、ぼくの足は本当は向こうに置いてきたんじゃないかって」
小さな声だった。
リシアは膝をつき、ピオと目線を合わせる。
心歌が、かすかに触れた。
『笛を取りに行っただけ。三歩だけ。母さんに怒られると思った。戻ったのに、音が戻らなかった。寝たら、音の方がぼくを呼ぶ』
リシアはゆっくり息を吸った。
子どもの心歌は、痛いほど正直だ。
ピオは何か大きな罪を抱えているわけではない。
ただ落とした笛を拾おうとした。
その三歩だけが、彼の中で出口のない恐怖になっている。
「銀笛は、まだ石列の中ですか」
リシアが尋ねると、ピオは頷いた。
「師匠さんが取りに行ったんですか」
リーネが答える。
「笛を拾えば、足音も戻るかもしれないと言っていました」
「でも、戻ってきていない」
「はい」
物置の空気が重くなる。
ピオの母親が両手を握りしめた。
「歌で眠らせることはできませんか。少しでいいんです。この子、目を閉じるのも怖がって」
リシアはすぐには答えられなかった。
眠らせる歌はある。
旅先で子どもへ歌ったこともある。
歌が日常の灯として届く場面も、確かにある。
けれど、この場所では違う。
眠りが、歩き出す入口になっている。
安易に眠らせれば、ピオの体がここに残っても、心だけが足音に引かれる可能性があった。
だからといって、歌わないだけでは何も変わらない。
ピオは眠れない。
師匠は戻らない。
夜は近づいている。
リシアはリーネへ視線を向けた。
「眠らせる歌ではなく、目を閉じても自分の足がここにあると感じられる歌なら、どうですか」
リーネは床の小石を見て、しばらく考えた。
「弱い歌なら、小屋の内側で留まるかもしれません」
「弱い歌?」
「遠くへ届かせない歌です。石列へ渡さないよう、ここに落とす歌」
リシアは頷いた。
歌は届けるもの。
そう思ってきた。
けれど、ここでは届けすぎないことも必要になる。
閉じ込めるのではない。
押し出すのでもない。
ただ、今いる場所にそっと置く。
「ピオくん」
リシアは言った。
「少しだけ歌ってもいいですか。眠れと言う歌ではありません。目を閉じても、足がここにあると確かめるための歌です」
ピオは母親の袖を握った。
「歩かない?」
「歩かせません」
リシアはそこで言い切りそうになり、言葉を止めた。
万能な約束はできない。
けれど、曖昧に逃げてもいけない。
「歩き出しそうになったら、私が止めます。リーネも数えてくれます。お母さんも、手を握ってくれます」
ピオはリシアを見た。
「ぼくも、止める?」
「うん。最後に止まるのは、ピオくん自身の足です」
ピオの表情が揺れた。
怖い。
でも、眠い。
その二つの間で、彼は小さく頷いた。
リシアは床に座り、ピオの靴の前に手を置いた。
リーネは小石の列の横に膝をつく。
ピオの母親は、震える手で息子の手を包んだ。
サージは物置の入口に立っている。
自分もまだ怖いはずなのに、目を逸らさなかった。
シルはリシアの隣へ降り、焼き菓子の残りを床に置いた。
鈴型の焼き菓子。
食べれば鳴る。
でも今は、鳴らさずに置いている。
リシアは目を閉じた。
歌を遠くへ飛ばさない。
石列へ渡さない。
ピオの足元へ、手のひら一枚分だけ置く。
息を吸い、低く歌う。
〔ここに、かかと。
ここに、つま先。
置いた足は、今を知る。
遠い音よ、まだ呼ばないで。
眠る子の足は、毛布の下に。〕
歌は小さかった。
ランタンの火よりも小さく、シルの息よりも静かだった。
リシアは声を抑え、旋律を床へ落とす。
すると、ピオの靴先がわずかに動いた。
母親が息を呑む。
リーネが小石を一つ動かす。
「一つ」
ピオの瞼が震える。
また靴先が動く。
「二つ」
リシアは歌を強くしない。
強くしたくなる。
恐怖を抑えたい。
すぐ眠らせてあげたい。
でも、それはピオの足をリシアの歌で縛ることになる。
だから、細く、近く、短く置く。
〔ここに、重さ。
ここに、ぬくもり。
誰かの道へ、急がなくていい。
君の足は、君の朝までここにある。〕
ピオの肩から力が抜けた。
母親の手の中で、小さな指が緩む。
瞼がゆっくり下りる。
リーネが小石をじっと見つめる。
サージは息を止めている。
シルも動かない。
小屋の外で、風が石列を通った。
ひゅう。
その奥に、かすかな足音が混ざる。
ざり。
ピオの足が、毛布の下で一度だけ跳ねた。
リシアは歌を切らず、床に置いたまま保つ。
リーネが低く言う。
「三つ。まだ中です」
サージが小声で尋ねる。
「何が三つなんだ」
「外の音が、三歩分だけ近づきました」
母親の顔が青ざめる。
リシアは目を開けた。
ピオは眠りかけている。
だが、足音は近づいている。
歌が、やはり石列へ触れたのだ。
弱く置いたつもりでも、完全には閉じ込められなかった。
リシアの胸に焦りが走る。
失敗したのか。
いや、まだ失敗にしてはいけない。
ここで歌を止めれば、ピオは恐怖で目を覚ます。
強めれば、石列がさらに歌を覚える。
なら、歌の向きを変えるしかない。
リシアは旋律をほんの少し傾けた。
ピオへ向かうのではなく、ピオの足元から母親の手へ。
そして、母親の手から小屋の床へ。
一人で耐える歌ではなく、ここにいる人たちで足を留める歌へ。
〔ひとりの足を、ひとりにしない。
握る手があり、数える声があり、
灯る火があり、待つ朝がある。
帰る音よ、今夜は外で眠れ。〕
リーネの手が止まった。
小石の列が、かすかに震える。
サージが無意識に自分の足を踏みしめる。
ピオの母親が、泣きながら息子の手を握り直した。
「ここにいるよ、ピオ」
その声に、ピオの足の震えが少しだけ収まった。
外の足音が、小屋の入口で止まる。
ざり。
それきり、動かない。
リシアは歌を終えた。
喉が痛い。
強く歌ったわけではないのに、細く保ち続ける方が難しかった。
ピオは眠っていた。
深い眠りではない。
すぐ目を覚ましてしまいそうな浅い眠り。
それでも、眠っている。
足は毛布の下にあり、靴は揃ったままだった。
ピオの母親が声を殺して泣き出す。
「ありがとうございます……」
リシアは首を横に振った。
「まだ、終わっていません」
リーネが小石を一つ、入口の列へ置いた。
「外にいます」
リシアは頷く。
「ピオくんの足音ですか」
「たぶん、半分は」
「半分?」
リーネは扉の方を見た。
「もう半分は、師匠の足音です」
小屋の中が凍りついた。
外から、また音がした。
ざり。
それは子どもの小さな歩幅ではない。
もっと重く、ゆっくりした足音。
ざり。
ざり。
そして、その合間に、笛の音がかすかに混ざった。
細い銀笛の音。
ピオが落としたという笛。
母親が口元を押さえる。
リーネは立ち上がった。
初めて、表情が揺れている。
「師匠が、笛を拾いました」
「戻ってくるんですか」
リシアが尋ねる。
リーネは答えなかった。
小石を数える手が震えている。
心歌が、さっきよりはっきり聞こえた。
『戻って。戻って。数えれば戻る。私が間違えなければ戻る。だから泣くな。泣いたら数がずれる』
リシアはゆっくり立ち上がった。
ここでリーネに、大丈夫とは言えない。
師匠が戻るとも、戻らないとも言えない。
けれど、彼女を一人で数えさせてはいけない。
「リーネ」
リシアは言った。
「私も数えます」
リーネが振り向く。
「歌術師に、石守りの数は分かりません」
「分かりません。でも、音は聞けます」
「聞き間違えたら?」
「その時は、あなたが直してください」
リーネは言葉を失った。
サージが壁際で、自分の靴紐を握りしめる。
「俺も……数えるだけなら」
声は震えていた。
「外の音が俺のじゃないって分かるなら、数えられるかもしれない」
ピオの母親も、涙を拭って顔を上げた。
「私も。息子の足音なら、分かります」
リーネの灰色の瞳が揺れる。
数を一人で守ることだけが、石守りの役目だったのかもしれない。
でも今、小屋には足音に怯える者たちがいる。
そして、だからこそ聞ける音がある。
リーネは長く息を吸った。
それから、小石の列を四つに分けた。
「では、数えます」
外で足音が鳴る。
ざり。
リーネが言う。
「師匠、一つ」
続いて、軽い音。
ざり。
ピオの母親が震える声で言った。
「ピオ、一つ」
少し遅れて、別の砂音。
ざり。
サージが顔を歪める。
「俺のじゃない。俺の音は、もっと引きずる」
シルが耳を立てる。
リシアは扉の向こうへ耳を澄ませた。
足音は一つではない。
師匠。
ピオ。
サージ。
そして、もう一つ。
細く、軽く、けれど妙に近い音。
リシア自身の足音ではない。
いや。
違う。
それは、さっきリシアが石列の入口で踏んだ最初の一歩に似ていた。
ざり。
リシアの胸が冷える。
石列は、彼女の声だけではなく、足音も覚えていた。
リーネがリシアを見る。
「今の、あなたです」
小屋の返る鈴が、何も触れていないのに鳴った。
ちりん。
その少し後、外から同じ音が返る。
りん。
リシアは扉を見つめた。
夜の石列は、もうすぐ始まる。
師匠はまだ戻らない。
ピオの足音は外にいる。
サージの足音も、完全には離れていない。
そしてリシアの歌と足音も、石列に覚えられてしまった。
リーネは小石を一つ、リシアの前へ置いた。
「あなたの数も、始まりました」
外で、遅れてくる足音がまた一つ鳴る。
ざり。
それは、小屋の扉のすぐ向こうにいた。
お読みいただきありがとうございます。
今回は、石守り見習いのリーネと、眠れなくなった少年ピオを中心に進めました。
101話ではサージを止めるために歌いましたが、102話では「歌を遠くへ届けすぎない」難しさを描いています。
リシアは歌わないのではなく、歌う範囲、届き方、その後に返ってくる影響まで引き受ける段階に入っています。
そして最後に、石列はサージやピオだけでなく、リシア自身の足音も数え始めました。




