【毒殺事件編】私が処刑したエーレントよ
「ク…クフフフ…」
全てが白日の下に晒されると、
私は笑いが止まらなくなった。
「ハッハッハッハッハッ!!!」
私は、女たちを覗き込んだ。
「…お前たち…
…他にも、何人も殺しているだろう…?」
女たちは固まっている。
「ハッハッハッハッ!!!
人殺しには分かるんだ!!!
人殺しの顔が!!!」
白銀の光が私を取り巻く。
「ハッ!耐えられんな!
こんなゴミが、大王の親族として、大神殿で大きな面を晒していたとは…」
私は、女たちを傲然と見下ろした。
「この大王たる私が!
歴代の偉大な大王たちが!!
尊い犠牲の上に!!
創り上げた!!
栄えあるツヴェルフェト国の中心たる、この大神殿に!!!!!」
轟々と渦巻く白銀の竜巻の中で、
私は、ゆっくりと手袋をはめる。
次の瞬間、女どもの首根っこを掴み上げた。
「実際、リヒトは死にかけた。
今も歩けず、あのザマだ。」
私は、従者の膝に座り込んでいるリヒトにチラと目をやった。
女たちは呻き声を上げている。
「苦しいか?ハッ!ざまを見ろ!!
…聞けよ。
200年前は、血で血を洗い、血には血で応える時代だった。
誰かが疑心に囚われると、血が流れる。
恨み、妬み、憎しみ…
誰かがこの感情を持つと、血が流れる。
その繰り返しだ。
犠牲を肥大化しながら、繰り返す。」
私は、女二人をドサリと落とし、穢れた手袋を脱ぐと放り捨てた。
「これを止めるにはどうする?
…殲滅だ。
全てを殲滅し、大量の血を流し、無にする。
そして、再構築する。
火山の大爆発で壊滅した街に、整備された都市が構築されるように…」
私は剣を抜くと、
ヘスティアとやらは足で踏みつけ、ババアの方には剣を突き付けた。
「エーレントよ…ああ、そうだった。貴様の名は呼んではならんのだったな。」
私は溢れる想いを止められない。
「貴様を処刑して、猫族を殲滅したことを恨んでいるか。
好きに恨めよ。
しかし、私は、リヒトという猫族に会って、
そのリヒトに向き合うシリウスを見て、
我が国の文化や教育はここまで進化したのかと、
なかなかいい気分になったんだ…
貴様を失ったことも、貴様に私を恨ませたことも報われたと…
地獄で貴様に吹聴してやろうかと思った…
ハッ!!!!
ハッハッハッ!!!!
それが見ろ!!!
まさか鼠族のソイリ家が、私の出自の家が、
200年前でも使用禁止になっていた劇薬ヴェノムを使って、
大王の結婚相手を殺すような猿真似をするとはな!!!!!!」
私は剣を大きく振り上げると、猛然と壁に突き刺した。
「ハッ!ハッ!!ハッ!!!
お笑い種だな!
地獄で貴様にあわせる顔がない!!」
(テレシウス…もういい…)
「ハッハッハッハッ!!!!!」
私は、女たちの周りの壁を、何度も突き刺す。
「200年経って、こんな後悔をすることになるとはナァ!!!
私が殲滅した猫族が、気高く、優しく、実直に生き!!!
私が守った鼠族が、暴力と、権力の、悪魔に成り下がったとは!!!
なあ、エーレント!!!」
私の想念に、処刑されるときのエーレントの太陽のように輝く真っすぐな瞳が回り出す。
(テレシウス…テレシウス…もういい…)
「止めてよ!!!
馬鹿―――――――――――ッッッ!!!!!!」
急に、リヒトの絶叫が聞こえた。
振り向くと、私に向かって走ろうとして、
大きく転倒するリヒトが見えた。
「馬鹿とは何だ!!!」
私は、リヒトを抱き起した。
「そんな脅迫したら、シリウスに悪い噂が立つ!!!」
「ハッ、どうせ大王付きが人払いしておろう…」
私の言葉が終わる前に、
ふいにリヒトが私の両頬を、か細い両手で挟んだ。
でも、彼女は何も言わなかった。
夕日色の瞳は、何度も瞬きをしてひどく苦しそうに見える。
「…貴様は、シリウスのために、止めろと言うのか?」
「過去の出来事は変えられない…どんなに後悔しても。
だから、未来のシリウスを守るのよ。
貴方が、後悔しているなら、なおさら…!!!」
魂の奥底から語り掛ける言葉と強い視線。まさに貴様だ。
そのくせ、私の両頬を包む細い手は、優しい。
しかし、すぐに体力が尽きて、手が滑り落ち、
上体が大きく崩れる。
私は彼女を抱きとめ……自分でも驚いたことに、
モジャモジャの黒い髪がまとわりつく額に、そっと口づけをした。
(やめろ、テレシウス!!!
勝手に口づけするな!!!彼女は僕の…)
「ハッハッハッ!!!答えも聞いておらんくせに!!!」
(放っておいてくれ!…僕には…)
「僕の考えがある!!!」
青い光が全て収束し、僕は、「僕」として気が付いた。




