表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/84

【毒殺事件編】神牛トロス州の大災害 シリウス最大限の神通力を発動

挿絵(By みてみん)


早朝


大神殿が急に騒がしくなった。


神牛トロス州で大規模な山火事が発生したとの報が入ったのだ。

乾燥した強風のため、あっという間に燃え広がって、

既に死者も出ているようだ。


シリウスは即座に、各所に指示を出しながら、

報告用の独楽鼠(こまねずみ)を先んじてトロス州に送り込み、

自分も現場に向かう準備を整える。


親衛隊や災害部隊の混合第1部隊は既に出発した。


シリウスが、

「トロス州民と豊かな州土を必ず救う」

と号令をかけると全隊が整然と奮い立つ。


自身の出発の直前、シリウスは、親衛隊長ダンテスに「30秒で戻る」と耳打ちするや、

猛然と走り出し、


「神通力 神鶏【飛鳥(あすか)】!」


と飛翔する。


大神殿の奥の宮殿が見えると、最上階の一部屋の窓がパッと開いた。


「シリウス!!!」


リヒトだ。

シリウスは窓に飛んで行く。


「聞いたわ!!!山火事!!!」


シリウスは何も言わずに、窓の外からリヒトを抱き締めた。


今日は一日こうしてギュッとしていよう、と言った…

が、こんなときに言葉は紡がないでよい、とシリウスは知ったのだ。


リヒトも思い切り抱き締め返したが、すぐに身を離し、

万感の思いを込めた夕日色の瞳で、シリウスを見つめた。


「気を付けて…!」


シリウスは黙って頷き、すぐに飛び去る。


最後に一度振り向くと、

リヒトが胸の前で手を組んで祈りを捧げているのが見えた。


***************


山火事は恐ろしい勢いで広がっている。


「大王様のご到着だ!!!」


人々が湧きかえる。


シリウスは、いくつもの指示を周囲に出す。

鍛え上げられた精鋭部隊は、瞬時に散っていく。


シリウスは、山火事の真上に浮遊すると、

オレンジの炎の熱気にあおられながら、

全精神を集中させ始めた。


「神路…開放……」


空に巨大な青い光の渦が出現し、シリウスに向かって収束していく。


「出でよ 神通力【方位陣 鳥瞰(ちょうかん)】 我が力の礎になれ」


シリウスの足元に、光の方位陣が出現する。

その方位陣には、山火事周辺の詳細な地形を示す模様が細かく入っている。


「戻れ 我がもとに 【無限独楽鼠(こまねずみ)】」


瞬時に、四方から無数の透明な独楽鼠が舞い戻り、

方位陣の上を駆け回る。


「地形図…」

「火の位置、風向きだ…」


人々は、この大王の姿を、茫然と、固唾を飲んで見上げている。


独楽鼠が全て消えると、

再びシリウスは、目を閉じ、刻印に手を置いて、

轟々と収束する神通力を受けながら、集中を続ける。


シリウスの髪や睫毛の一本に至るまで、恒星のような青白い光を発している。


シリウスが、スゥと瞳を開いた。


「神路開放 神通力 【叢雨(むらさめ)】」


その瞬間、空のかなたから、ずるずると雲が引き寄せられ、

無常に燃え広がる山火事の上に来ると、

滝のような雨を降らせた。


山火事は一気に収束していく…

が、シリウスは、まだ集中を止めない。


「神路よ まだ我が前に その路を開け…」


一時的に降る雨だけでは、完全に山火事を終焉させられないからだ。


「神通力 【篠突(しのつき)】」


山火事の上に固まっていた黒雲が、巻物を転がすように広がり始め、

今度は広範囲に雨を降らせ始める。


これで、火の粉の一つまで燻りを消し、仮に風で飛んだ灰があっても、

周囲の湿り気で自然と消失するようにするのだ。


「我が分身 【独楽鼠(こまねずみ)】」


独楽鼠がシリウスのもとに集まって、周囲を猛然と走り回る。

周囲の消火状況を聞いているのだ。


独楽鼠の動きが透明になって消えるころ、

徐々にシリウスから発された青い光も消えて行き、

同時に雲の隙間から太陽の光が差し込む。


光を受けたシリウスが、朗々と告げる。


「山火事は今、全て終息した。

この災害により失われた命に哀悼の意を捧げる。」


人々も黙とうする。

シリウスが再び凛とした声を上げる。


「ここトロス州は、前王ロベルトの死去以降、

新しい神牛が見つかっていない。

しかし!


遠くない未来に、必ずや、光溢れる新王が見つかるだろう。

新王を迎えるまで、そして、新王を迎えてからも、

皆が力を合わせて、この惨事を乗り越え、

美しいトロス、活気にあふれるトロスを、再び、僕に見せてくれないか。


いや、見せてくれるだろう。

偉大なる神牛の州に住む、お前たちなら!」


猛り立つ者、涙を流す者、抱き合う者、祈りを捧げる者…


シリウスは下を見やり、神虎ファリスが到着していることを確認した。


「ここから、現場の指示を、神虎ファリスに移譲する。

僕は、

神牛のトロス州、

そこに住む民を信じている!!!」


人々の大歓声を受けながら、シリウスはスゥと下に降り…

しかし、地面につく前にフッと意識を失った。


が、その瞬間、駆け寄ってきた神虎ファリスが、

あたかもシリウスが目覚めているかのように力強く支え、

馬車に乗り込ませる。

馬車はトロス宮に向けて走り出した。


馬車を見送りながら、ファリスは呟く。


「…底知れないな、シリウス様は…

やっぱり、最高だよ…」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ