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※タイトル・内容変更【毒殺事件編】そうだ、猫を十二支にしよう!!!

挿絵(By みてみん)



顔が、ゆっくりと私を向く。


半分はシリウス、


半分はテレシウス


…恐怖を覚えるほどの、異様な美しさだ。


私が言葉を失っていると、

半分は優しく、

半分は嘲笑うように、

『続けて』

『続けろ』

と共鳴するように促す。


「私がヤブサメ家の養女になっても、

ソイリ家から嫌がらせがあったり、

それにヤブサメ家が反発したり、

化かし合いのいたちごっこになると思う…

そんなの面倒よ。


それなら、私は、私のままで、面倒が起こった方がいい…

少なくとも妙な嘘をつかなくて済む。」


半分シリウス・半分テレシウスは、

黙って私を見つめている。


「それにね、逆立ちしたって、私、名家の生まれじゃない。


亡くなったお父様とお母様から生まれた、

神馬エクウス州の猫族(フェリス)だもん。」


夜風が屋根を通り過ぎる。

半分はフワフワの銀髪、

半分はサラサラの白銀の髪が、

星空の下で夢のように揺らいでいる。


「生活は色々苦労したし、

勉強も大変だったけど…それでも…


やっぱり、楽しかったかな。」


ふいに、この半分シリウスが、私をギュッと抱き締めた。


「断りましょう、リヒトさん。」


ああ、戻ってきた…シリウスが…

私は、彼の胸にしがみついた。


「とりあえず、あの破廉恥な節操のない女を、

夜が明けたら叩き帰します。」


エッと思って思わず顔を見上げると、

美しい銀髪と、

吸い込まれそうなアクアマリンの瞳が、

私を優しく見つめている。


「処刑されないだけ、ありがたいと思って欲しいですね。」


「…なんだか、感化されてない?」


「テレシウスにですか?」


もう完全に「シリウス」になったシリウスが、真面目に問いかける。


「テレシウスだったんですね…

僕が変化しているのは…」


「ええ…ちょっと前から、

仮説は立てていたんだけど、

確信が持てなかったの。

それが、お昼に、書庫でいい資料が見つかったの!!!

興奮しすぎてハシゴから落ちたんだけど…


君に話したかったけど…

結局、今になっちゃったね…」


「…貴女の一族を殺戮した者が、僕の中ににいるなんて…」


シリウスの顔から血の気が引いている。


「でも、君じゃない。

…君は、いつでも、私を猫族(フェリス)だからと言って差別しなかったし、

そもそも、猫族(フェリス)を差別するようなことなかった。」


「それは、貴女だからですよ。

気高くて、

優しくて、

聡明で、

気品があって、

自分の正義を貫いて、

しなやかで、

美しい…」


「エェ、ほめ過ぎでしょ…」


「僕は、貴女に会ったから、

猫族(フェリス)という人々は、皆、こんなに素晴らしいのか』って

逆差別していますよ。」


シリウスは、私の頬に優しく触れる。

…信じられないほどの安心感が胸に満ちる。


「本当は、鼠族こそ差別されていいのかもしれない。

猫をだまして、牛の背中に乗って、

登頂レースで一位になったんですから。

本当は、猫族(フェリス)は、十二支になって良かったんだ…」


ここで、私たちは同時に、


『アッ…!!!!!!!!!』


と叫んだ。


「ねぇ、リヒトさん…今、僕たち…」

「同じこと考えてる?」


思わず、お互い肩を掴み合って、顔を覗き込んだ。




『猫を十二支にする!!!!!!』



どちらからともなく、私たちは思い切り、星空に響くような音を立てて口づけをした。


「そうですよ、リヒトさん!

貴女はエーレントの秘儀を研究してきた。200年後に怨霊として復活できるほどの秘儀だ。」


「それと、シリウスの千年に一度の神通力と研究を合わせて神様に…」


「ああ、どうして思いつかなかったんだ…」


シリウスは大きな手で私の顔を挟むと、暗がりでも輝くアクアマリンの瞳を近づけた。


「猫が十二支になれば、この呪いのような属性から解放されるはずだ。

ああ…」


シリウスは急にこめかみを押さえた。


「何か…何かあった気がする…そういった祈りの方法…ああ、何か…」


息が荒くなってきたシリウスを見て、私はまたテレシウスに変化するのではないかと心配になる。


「シリウス、大丈夫?

また明日考えようよ!()()()()()()()()()()んだから!」


しかし、今度は私がブルリと身体を震わせた。

寒気と共にざわざわと負の感情を持ちあがる。


シリウスは急いで「神通力 【封殺】」と詠唱して、

私の手をとって立ち上がった。


脱ぎ捨てられた重たいガウンを私にかけ、

黒いフードもすっぽりかぶせてくれた。


そして、黙って私をギュッと抱きしめる。


「リヒトさん…()()()ずっとこうしていましょう。

公務も執務も、どうにかしますから。」


私は、飛びつくようにシリウスの首にかじりついた。

シリウスはその長い腕で私を包み込み、

耳元に吐息をかけながら何度も包み直して、私が溶けてしまいそうな熱い抱擁をする。


最高に幸せで、

最高に苦しくて、

この人といると、いつも心臓が跳ね上がっていて、

寿命が縮むんじゃないかと思う。


いや…3年前、私は神に何度か祈った。


シリウスと会えるなら、彼の温もりを感じられるなら、

今ここで死んでもいい、と。


それが何かの意味で実現されるなら、

この幸せに比例する苦しみは、当然なのかもしれない。


そう、明日にでも、この幸せの分量より遥かに大きな苦しみが訪れてもおかしくない。


優しく輝く小犬座の下で愛おしいシリウスの腕に包まれながら、

仮に大きな苦しみが来たとしても、もう、死んでもいいとは思いませんと、

そっと神に伝えた。


*********




そして、そんな二人きりの空間を、

刺すように見上げている人影に、

シリウスも私も、

全く気付かなかった。


(次話に続く)



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