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神鼠シリウスと猫族の私 肌を触れ合わせることはできるの?

「リヒトさん、あちらで何かやっているみたいですよ。

行きましょう。」


シリウスは、子供のように背伸びをして、遠くを見ながら歩き出す。


私は、手を繋ぎたいと密かに思ったが、

自分から繋ぐ勇気もなく、シリウスの形のいい手を、

ほんの少し後ろから眺めて歩く。


ふと、さっき、あの手で抱き締めてもらって、

嵐のように口づけをされたことを思い出し、

急に動悸が激しくなった。

カッと頬に血が上る。


思い出すだけでたまらない。

口づけしたときの音まで私の頬を熱くする。

もし…もし…あの口づけを全身にされたら…


されたら…


が、急に、私は心臓が氷の矢が刺さったように感じた。


神鼠と猫族(フェリス)が身体を直接触れ合わせることは、大丈夫なんだろうか。


でも、シリウスが三年かけて研究した封殺や神通力の最小化は、

直接、長時間、肌が触れ合うことを想定しているのだろうか。

肌だけではなくて…もっと…その…体内の肌が触れ合うことは…………?

仮に想定していたとしても、

本当に、うまくいくのだろうか。


シリウスの肉を食べてしまった私には、

数百年かけて研究された鎮静剤はもう効かない。

猫族(フェリス)神鼠(しんそ)と共にいる頼みの綱は、シリウスの技術のみなのだ。


そして、失敗の対価は、【シリウスの命】。


私は、あの日、自分の不安に負けて、

(エデさんに助けてもらって)シリウスを誘おうとしたが、

考えてみれば、恐ろしいことだった。


【一緒に()()()()()()()が運命づけられている猫族の貴女】


ロベルトの言葉が頭にガンガンと鳴り響く。


人混みで、シリウスと距離が離れ、

長身の彼の美しい銀髪だけが見える。

右、左と見回しているよう…きっと私を探しているのだろう。


シリウスは…晩餐会の日に告白してくれたように、

3年前から、ずっと私に「恋」して、

強く想ってくれている。


どんな時でも、助けに来てくれる。

追いかけて来てくれる。


さっきの口づけにだって、

シリウスの私への想いが溢れていた。


私だって…

私だって…

私だって…


シリウスのことが…


自分のシリウスへの想いに「名付け」をして、

彼に打ち明けたい。


本当は、何もかも忘れて抱き締め合いたいと伝えたい。


私がそう伝えれば、

必ず、シリウスは一つになろうとするだろう。


でも、死ぬのはシリウス、殺すのは私。


できるわけがない。


でも、私だって…本当はシリウスと…


私は立ち止まった。

シリウスの銀髪はもう見えない。


【近付こうとすればするほど、

感情が戻るほど、

距離を取らざるを得ず、

あの方の苦しみは深まって…】


ロベルトの言葉が猛然と私を追い詰める。

激しい冷や汗と息苦しさが襲ってくる。


行き交う人々が、ただ立ち止まっている私にぶつかっては足並みを乱し、

すぐにまた、流れが合わさっていく。


私は何とか、出店の影になっている空間にたどり着くと、へたり込んだ。


ああ、私はどうすればいいんだろう。


******


「お姉さん、一人でどうしたの?」


顔を上げると、酔った複数の青年。


「あ、この子、さっき、スゲェ綺麗な男とキスしてた子だ。

エロい感じで!」


「見た見た!」


「振られちゃったのか…エロいキスさせてあげたのに…」


「あんなイケメンはハードル高過ぎだよなぁ…

気にせず次!次!」


「元気出してよ!俺たちとお祭りを楽しもうぜ!」


街の青年たちが、酔って気が大きくなっているだけのようだ。

私は彼らを黙って見た。


私が別の男性と遊んだり、いっそ結婚したりすれば解決する。

ジェイクのときは失敗したけど…


「お姉さん、本当に大丈夫?」


「病気?」


「どこかに座った方がいいんじゃない?」


酔っぱらった青年たちも心配になったらしく、

私に手を差し出す。


私は、口元で握りしめていた手を、彼らに差し出そうとした。


こんなときには…いつもシリウスが風のように来てくれる…


が、そこで響いたのは、シリウスではなく、元気な女性の声だった。


「ホラホラ、アンタたち!どうしたのさ!?」


「レイチェルおばさん!」


「具合悪そうだよ、このお姉さん。」


「なんか、すごい美形と一緒にいたんだけど、

振られたのかも…」


見上げると、「レイチェルおばさん」と呼ばれたのは、さっきのくじ引きの女性だった。



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