この日はこうでねぇと-33話
カーテンを開ける10月の朝。ピリついた空気
気持ちがいい、二階の窓から外を眺めるとヨルが飛んでいた——
サークルメンバーの5人の女子大生
内3人はバイトを始め今日は日曜
全員の休みが合致したプライベート
その予定はなんとも、女らしい事だろうか
「みんなで服を買いに行く」
そして、その後
文化祭当日の発表の音合わせ〜衣装合わせを
岩永家でする事になった。
場所は共有クローゼット 「衣装部屋」
母と父に友達達を招く事を伝えると
「いいよ〜」と二つ返事だった。
….友達を家に招くのは何年ぶりであろう。
繁華街へ集まる。こはると初めて服を買った
あのモールから、ヨルと一緒に服を買った
あのモールへと、商業施設のはしご。
歩き疲れるのは想定しているけれど
形からだ、今日履く靴はティンバーランド
私達はHIP HOPサークルなのだから
イヤホンで塞ぐ耳。みんなが歌う曲を
聞きながらバスに乗る 最近は
自分趣味の音楽を全く聴いていない
HIP HOPは特段
好きだったわけじゃない
憧れた世界ではないけれど
ラップの世界に片足を突っ込んだのならば
歴史からアーティストまで色々調べるのが
礼儀、随分と私は詳しくなったものだ。
兄とも「ラップの事を教えてくれ」と
語り合い、カルチャーを教えて貰う度に
「ガキの頃既に全部話してたけどな」
「話を最後まで聞かない」と何度も言われた
….そしてこの言葉、サークルを設立して
同性からも言われる事が増えた。
自分を優秀だと思っていた私だが
ホテルの清掃バイトを始めてからも
「詰めが甘い」 「説明聞いてた?」
….岩永ゆりは「そういう人間だった」
と気づいた19歳にして。
HIP HOPカルチャーだけでなく
自分自身の愚かさを知れた、大学生活。
携帯のボリュームは真ん中よりやや下の位置
Apple Music 歌詞の再生
EDWARED(我) Sixteen!の歌詞を
目で追う
こはるとは、高校生時代たくさん話した。
..だが本当の音楽の趣向を知れたのは
ここ最近、こはるが歌いたい歌の一つ。
歌詞に、共感はできない。
..けれど何故だろう?
「こはるっぽい」
……..そう思いながら
作成したプレイリストを聴いていた。
こはるの事を知れた?というより
..こはるの事をよく分かってなかった
そんな事を思うや、
バスの窓に黒い羽が当たって青い砂が舞う
———ヨルが近くを飛んでいる。
バスを降りて東へと歩く
2分も歩けば、黄色と赤のMの文字
マクドナルドの看板と2人の女の子が見えた。
三つ編みに髪を結んだ少女
紺色のPコートの丈は腰より少し下、
ピンクのフリルのブラウスを中に着て
黒いスキニー、靴は白の平らなadidas
川崎花子。学校でも見たコーディネート
彼女の頭と顔はとても小さい
二重瞼のつぶらな瞳に、短い鼻筋
可憐な彼女からナルシズムが伝わる事はない
彼女の興味はいつも、内ではなく外へ
小さいな頭を右へ左へキョロキョロさせる。
またもナルシズムを感じない少女
彼女は「興味」ではなく「警戒」を外へ
彼女も紺色、裏起毛のパーカーは
フードの裏がもふもふとしていて
赤いガレッジロゴの英語文字が中央に
洗濯して色落ちだであろう生地の薄い
ジーンズは太もものボディラインを拾い
足元1番下は茶色いスニーカー
霧島凛だ。
手が丸く、顔も丸く、ふくよか
かけた眼鏡のフレームは四角、一重瞼
規律を感じるその瞳。だが意外にも
親しくなると融通を利かせる彼女は小ネタ話
が好きだ。
「ゆりりーん!」三つ編みの少女が手を振ると
ゆっくりと眼鏡をかけた少女は首の角度を
私に揃え、目を凄めた後、微笑み
お辞儀をした。
「二人とも、はやいね〜」
母がくれた着心地のいい黒の無地のパーカーに
カーキのナイロンパンツとティンバーランド
学校でもたまにするコーディネートの私。
各々の顔つき、身なりはもう見慣れたものだ
——ピロン 「ん」
「おっ」 「あ!みんなどこー?っだって」
グループラインが届いて間も無く
肉声が聞こえる。
「あーウケる!部長以外全員いんじゃん」
金色の髪はうねりを覚え、付け足した
まつ毛は黒く上り、健康的な色の肌
彼女曰く、「男も女も焼けてていいの」と
シャギー素材の丸みを帯びた黒い短丈のニットは
ベージュで英単語も織られていて
肩周り、白いタンクトップの布を露わにする
柔らかそうなフェイクレザー素材のスカート
に同じくフェイクレザーのロングブーツ
を履着こなす。
底のある靴を履くと160cm半ばになる
大崎咲。 肉付きがよく
目も口も横に長い、存在感のある彼女。
「おつ、咲ちゃんなんか狙ってる服あるの?」
「可愛いやつ、てかこのトップス最近買った
アゲ」
「Yo!Yo!私はパーカー買いたいよー!」
「はっくしょん!」
霧島凛がくしゃみをした
「りんりん、ウケる!」
——ピロン個人LINEが鳴る
「あっこはるだ」
「ごめん!昨日バイト長くなって
車で帰ってたら渋滞してて
夜遅くなって色々してたら
寝るの遅くなって、寝坊して
メイクも今日、時間めちゃ
めちゃ時間かかって本当に申し訳ないけど
後25分くらい時間かかる、今日に限って
本当にごめんね( ; ; )」
「….だって」
「ウケる、いつも通りやね」
「バイト大変そうですね、こはる殿」
私は促した。
「寒いし、マックいかない?」
「りょ」大崎咲は携帯をいじる。
私がマックに行きたい理由、
寒いからでもお腹が減ったからでもない
….さっきから死神のような存在。
ヨルがずっと後ろにいるから
落ち着かないのでマックへ逃げたい
集合時間は-11時半
ランチを食べるかどうかわざわざ
決めてなかったが今日はみんなと、どこかで食べる気配がある
なので私はドリンクメニューのマックシェイクを頼む
「え、ゆりりん寒いって言ったやん」
「ん?別腹..?じゃないや、別喉、別喉」
「とか言って、ゆりりんMなんでしょ
あんたそういうのばっか見てるじゃん」
「たわけものー!ここでそういう話をする
でないー!あっゆり殿とは場所を変えて
個人的にマックシェイクより濃密な話を後で..」
「私サムライマック!ポテトはL!」
「あんた、お小遣い飯に全ベットじゃん!服!
衣装買うんだよ!」
….川崎花子以外は飲み物だけの注文
注文が届き4人はテーブル席
こはるも間も無くマクドナルドに来る
居心地のいいはずの時間と場所にて
私は談笑に混じれずにいた
「ゆり?なんか今日、落ち着きなくない?」
咲がカフェモカを一口。
「ん、あぁ、ああ、えっと 昨日
ダークナイトファンタジーやりすぎちゃった
眠くてね、ぼーっとしてる」
「ゆり殿は生粋の黒夢厨ですね」
昨日、ゲームをプレイしたのは事実だが
…….私が落ち着かない本当の理由。
——
「私を観測していたいヨル」
—————
繁華街のマクドナルド お客さん
ひしめく お昼時の店内
バサバサとヨルは飛び回り、黒い羽が
落ちては、落ちて、青い砂が
螺旋状に舞っていた。
「凍えたいからシェイク飲んでるのね」
咲が茶化す。
ダークナイトファンタジーのシナリオにて
死んだ女を抱きしめ「凍えている」
と放った、ゲームキャラクタークロル
….と瓜二つのヨルに付き纏われて
私は凍えたシェイクで喉を潤し冷静を保つ。




