死神ランデブー破-21話
40分間、手を繋ぎ音痴な死神の
完成度の低い、音としても低い
オリジナルソングに悶えながら
カラオケ館へと向かう旅路
ヨルが「尿より旅路」と歌いまくる
ものだから、私の方が今トイレに行きたい
店のちょっと前の、脇道に外れ
人が居ない事を確認し、ヨルの手を離す
「もうすぐ着くから」
ヨルは首を縦に振る、ニコニコしている
もう目と鼻の先にカラオケが見えていたから
めちゃめちゃ早歩き、カラオケに向かい
ソッコー受付を終わらせた。
フリータイムにした。
トイレに行きたかったからだ。
だが..これが痛恨のミスになる
用を済ませ、受け取った番号16の部屋に行く
ヨルは私と一緒に部屋に入ったや否や
「貴女も歌が好きなのだな、
こんなにそそくさと店に入るだなんて
私の歌は、どうだった?今日は
沢山歌おう、とても良い日だ」
….フリータイム且つ早歩きの私は
空気の読めない、宗教概念、ヨルにはカラオケを信仰している女の子にしか映っていない。
カラオケ館の「館」が「棺」(ひつぎ)のかん
のような気がしてならなかった。
私はもう、諦めた。
「よし、ヨル、今から私が低い声で
発声練習をするわ その後貴方が
歌いなさい、そしたらただの低い声の女の子
でしかないから」
ヨルは首を縦に振った。私は大きく息を吸う
「オオオオオオッッッッ!」
….まさか、子供の頃の兄の
デスボイスを真似するようになるとは
思いもしなかった。ましてや
大学生になってからだ
「オオッッッッ!」「オオッッッッ!!」
「ヴォアオアアア!!!」
3分くらい叫んでやった。やっつけだ。
ヨルの目はまん丸になっていた。
「オオオオオオオオッッッッ!!!!」
ヨルも叫んだ….!
この声は側から聞こえてるのか
ルールの概要は曖昧だったがもう、知らない。
「こうよ!ヨルッ!ウオオオッッッ!」
「こうか?オオオオオウオオオッッッ!」
隣の部屋からJ POPのラブソングの
棒読みの歌声が聴こえてきた
その傍ら、私たちは15分ほど叫び続けた
「発声練習は終わり、ヨル私がマイクを持って
口パクをする 貴方がマイクで歌いなさい」
私はヨルに指示した、その後電モクを打った
兄が小学生の頃、母の影響で好きだった
「Dragon Ash」の「fantasista」をかける
コイツのラブソングは絶対聴けたものじゃない
と判断してこの曲にした、
コイツがこの歌を知らなくても良い
私がうろ覚えにラップをしてしまえばいい
頭は回った、むしろヨルが知らない事を願った
だが….
「it’too early to da party…」
ヨルは下手くそに歌い出す。
くそっ..知ってるのかよ….
ろくに拍もとれない歌が続く
「oh〜〜!」
サビの歌い出しの
タイミングがズレている
下手くそな歌の口パクはとても難しい
だが私は女優だ、また演じる
「….私も男の子だったらそんな声に産まれ
たかったわ」
ヨルは私のお世辞を否定でも肯定でもするなく
「もう一回いれてくれないか?」
と私は電モクを持った。
「次は何がっい」
「Dragon Ash」「えっときょくは」
「fantasista」 えっ…
「同じの?」 「うん」
また死神はろくに拍も取れない同じ
歌を私に口パクをさせた
歌い終わってすぐ
「もう一回」と指示するヨル
….私は戸惑いながらも
受け入れ、同じ展開が続き、死神は
6回連続同じ歌をを私に口パクさせた
「….飲み物ついでくる」
逃げるようにドリンクバーに向かう
飲み物を注いでいると話し声を拾う
「隣の部屋、伴奏だけ
何回も同じのかかってるよね」
….声を観測できるのは私だけだと知れた。
だが、少し恥ずかしくなった
「後、なんか最初の方、女の子めちゃめちゃ
シャウトしてなかった?」
….作戦変更。私が歌う事にした
アイスコーヒーを持って部屋に行くと
お行儀良くヨルは座っていたので
私はドカッとソファに座り
「私にも歌わせてよ!!」
と大きな声で伝える
ヨルはこくりと頷く、
私はaiko のカブトムシを入れた
私が歌うとヨルはカラオケの
画面に釘付けになっていた
目はとろんとしてきている
歌い終わると、
ヨルは「もう一回」と
電モクを私に渡した。
とても、儚げな顔をしていた
次はKissHugを歌う。
「夏髪が頬を切る」の歌詞の頃
ヨルに目を向ける
….ヨルは眠ってしまった。
この歌はすごく好きだから、歌いきった後
起こす事を決め、ヨルを揺さぶってみた
だが、全く持って起きる気配がない
….フリータイムにしといて良かった
その後、J-POP を何回も何回も歌って
歌って、疲れては、ジュースを飲んで過ごすが
ヨルはずっと眠っている。
声をどんどん大きくして歌っても
どんどんヨルの睡眠は深くなる、
心地良さそうな寝息が聞こえてくる。
もう、この際一人でしか歌えない歌を歌おう
私は少しだけHIP HOPも好きだ。
大学生からApple musicの
サブスク会員になったのでHIP HOP
のおすすめをランダムに自動再生で
聴くようになった。少しだけ今は詳しい
私は「舐達麻」の「BUDS MONTAGE」
を歌ってみた
【上を見て振り返る 繰り返しては
下を見て 探してた 半透明な結晶】
驚いた事、それは私でも意外と
歌えてしまった事と歌ってて
気持ちが良かった事。
….ヨルは私の歌を聴くと
何を歌っても起きてくれない事を知れた。
私は一人ずっと難しそうな歌を歌ってみた。
17:40頃、歌い疲れ
ジュースを飲んでいるとヨルが起きた
私は「お腹減ったからどっかいきましょ」と
促す。ヨルは黙って首を縦に振った
一人分の料金を払って、カラオケ館を出る
棺として利用したのは死神だった。




