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夜は朝を知らない  作者: -1twelv2-


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岩永の話-2話

苦労知らずの原体験、それらが私の卑屈を形づけた。


地元は都心から少し離れていて少し田舎

コンビニもスーパーもゲームセンターも割とある


私は地元が好きだ、ここからは家族の話


父は工場勤務、稼ぎが良い。母はスーパーのパート

をしている。兄は歳が3つ上


父は専門分野の工業学校に出ていなければ採用される事さえも難しい工場で管理職になった

 

小学3年生の時だったろうか?

「お父さんの職業」という題材の作文を課された


「なんで工場で働いてるの?」と

尋ねるが父は即答だった。

「家から工場が近かいからだよ」

..聞き取りやすい速さで父は述べる


「お金はさ、やりたくないことを誰かが代わりにやる事でお給料が発生するんだ、だからさどうせ嫌な事をやるならさ仕事場までの移動にさ

時間を失うのは勿体無いだろ?」

 

小学生の私は、すぐには相槌を打たず

感心して耳を傾ける。


「小学3年のゆりはここからの話は退屈かもしれないね

例えば、時給1000円だとするでしょ?仮に仕事場まで往復1時間かかる道のりなら一日に1000円

余計な仕事をしてることになるんだ週5日働くとして、週に5000円、月になると、かける4で2万円人生の価値が飛ぶしかもガソリン代で月に1万円プラスで

かかったとしたら….仕事なんて続けてしまえばぜーんぶ嫌になるだからさ、地味な仕事でも月に3万円

損をしない選択を僕はとりたいなぁ


二ヶ月で6万円、一年で36万10年で360万..ってなると歩く方がいいかな!あーでも父さん、今時給だと

2860円くらいだからぁ

一年だとぉいくら損してないのかな」


私の合理主義が形成されたのは間違いなくこの瞬間。


その時の声は無垢な声だったであろう

今じゃとても出す事のない無邪気な声


「お父さん!頭がいい〜!」ぱちぱちと


手のひらを叩いた..作文発表は父が言ったことをそのまま作文に移し!先生に誇らしげに渡した


発表の日は授業参観父は仕事だから母が観にくる

うまくいく!……はずだった


土曜日3時間目その日最後の授業で作文の発表。


「父はこの仕事にやりがいがあるから」

「誰かの笑顔のために」


クラスメイトの発表が続くが..みんな金回りのことではなく誠実でキラキラとした発表内容だったのだ


小学3年生ながらに気まずくなり書き直す訳

にもいかず緊張が募る作文に触れられたくない思いか


早口で温もりのない発表をしてしまった

「それでは岩永さん!」


「ハイっ!」


「チチハ、イエカラチカイシゴトをエラビました……」

——-

時給〜ガソリン代のくだりは誰も聞き取れ

なかったであろう一度原稿に目を通してるので

先生は察してくれた。


「あの工場に勤めてる、ゆりちゃんのパパすごいね 

次は渡辺くん!」



..早口で無感情な発表はすぐに終わった全員の発表は

終わりチャイムが鳴る。帰りの支度を皆がする中

母が私の元へ

「ゆり!滑舌いいわね!てかもうウチ、かえる!」


有無を言わさずいなくなる。母はクラスメイトは愚か

娘の発表もちゃんとは、聞いていない

寂しいなんてない、多大なる安心を覚える。


ここは心配してなかった。


けれど、嫌な予感は当たるものだ。発表の時から声にならない嘲笑の気配を私は汲んでいた。

——

次の登校先生が来る前の教室、甲高い声の男の子達が近づく


「チチガッ、!コウジョウニツトメテイルノワ!」


「Yo!Yo!ヒップホップ〜!ラッパーゆりー!」


父が工場勤務なのと早口の発表が重なりラッパーだのロボットだのと茶化された


男子も女子も嘲笑し、一番のお調子者の清水がエスカレートして鼻水を啜りながら私を指差した


「ゆりっでぇ!Siri?? 携帯の!」

清水のセンスとデカい声に教室は爆笑に包まれた


「ヨクワカリマセン」と返すと

「ゆりおもしれぇおんなぁ!!!!」

また笑い声に包ままれる..小3ながらムキにならず

賢かったと思うなぜなら返しが単調だし意味合いが

最適解だったすぐに飽きてもらるとも踏んだ

計算通り2日で「Siriゆりブーム」は終わる


ロボットだのラッパーだのSiriだといういじりも

「ヨクワカリマセン」で返せる


この返答なら悪い気もしない上に

最適解の返ししまいには女の子もさえも


「ゆりちゃんこれ、わかる〜?」


と分かるはずもない漢字や英単語を小学生3年の私に

見せてきたが予定調和の

「ヨクワカリマセン」済ませられた


双方コテコテで飽きてきてSiriゆりブーム2日目

面倒に思ってきた頃


——ガキ大将の太っちょが終止符を打ってくれた

「ゆりちゃん!セックスってしってる!?」

と私に放った..先生もいた..戦慄が走る。


……私は冷静に返す「ヨクワカリマセン」


【オモンナッ!】


笑ってたのは彼一人、無敵の男こてつくんは一人で

欠けた前歯を剥き出しに廊下を駆ける


彼が1番いじめの対象から程遠いであろう彼の父親

は医者だった。ガキ大将は訂正しよう

「野良の大将」だ。


スポーツマンシップガキ副大将の坂田は采配が上手い、「デュクシ!」田上(たのうえ)をつつく

「おいて!なんやバカタ」

「昼休みもったいねぇやろ!行くぞアホうえ!」


昼休みの獲物はサッカーへと変わった—-


私は両親に似て綺麗な顔立ちだから男の子は

いじめづらかったであろう


Siriと茶化されるきっかけとなった授業参観の日も

勉学に勤しむ高校生になった今も

母の薫(かおる)は勤め先のスーパー安く買った食材で私達に手料理を作ってくれている



学生時代の母はヤンキーなのかギャルなのか分別が難しかったそうだ、兄は母に似た部分が多い


薫は中学ではバスケ部、チームメイトも当時の薫も

「薫はバスケが下手なのか上手いのか

よく分からなかった」…...らしい


とにかく動くしとにかくボールを獲る

シュートはよく外す、だがシュートを打った数は

全試合で誰よりも多かったと聞いた


..チームメイトからパスがこないのに


地域の大会で薫のチームはベスト4まで登り詰めた。


薫のせいで負けたのか、薫のおかげでここまでいけたのか未だに分からないと家でのご飯の時によく話て

いてこの話は正直何回も聞きすぎて飽きていた


涙で溢れた最後の試合、薫は同調して嘘泣きをした

らしい、正直勝ち負けとかどうでもよくて自分の

シュートが「入るか」「入らないか」にしか

興味がなった薫、この話も18回くらい聞いた。


服とコスメが欲しかったからか高校生の頃は

コンビニでバイト高校生ながら月に6万円を

稼いだそうだ、先生と喧嘩した日には

当日の昼に勤務先へ平気で昼にシフトを入れたという


あろう事か、嫌いな先生の授業やサボるため遅刻という体でコンビニに朝6時〜朝10時という無茶な

シフトを出していたと当時はいろんな事の

コンプライアンスが緩かったらしい。


「あの時間帯の廃棄あたり多いんだよね!あと

禿げたおっさんばっかりやつれた顔でくるから

おもろかったわ!」と

食卓で話す母、薫まさにギャルとヤンキーの

分別がつかないJK


性に少しだけ奔放になった時期もあったらしい、

聞きたくもない夜の話を思春期を越える前から

母は告げていてセックスは正直小3の頃から


「よくわかっていた」


けれど紛う事なき愚かな母は人間においては

頭が良かった、コンビニのバイト先で出会う

ヤンキーでお洒落な大学生に薫は惹かれたという。


相手の男はチャラくてさらっとしたファッションセンス煙草を吸うのだがふかして「いない」たばこに

轢かれたらしい煙草の銘柄はセブンスター当時

高校一年の6月に薫は自分から告白して交際を始めた


..のだが、10ヶ月くらい付き合ってはみたものの

大学生の彼氏は親の学費で「いきがっている」

と思うと急に冷めたとの事、薫は全日制なのに

バイトもお洒落も友達との遊びも全力


偏差値の低い学校と言えども単位は落とさなかった


それに引き換え大学生の彼氏は遊んでばかりで留年。

肝心な所で賢い薫は何も言わずに


「別れよう」と一言、手紙を書いて連絡先を消したそうだ粘着されるのも嫌だったし

チャラい彼氏がよく口にする「地元の先輩」

もなんだかんだ怖かったから元が誰だか分からなくなるように高校生ながら金髪に染めていた

薫は金のロングヘアーを黒髪のボブカットにした


肝心な事を見抜けない大学生の元カレ


チャラついた格好で彼女を探したとの事だが

見つけられず校門の前、挙動不審に


黒髪の薫はニコニコとした顔で中指を彼の前で立てて家へと帰ったそう、元彼のチャラ男はタイプではない元カノには目もくれず、半べそかきながら

追い出されていたとその後は真面目な男に

惹かれるようになったそうだ


高校卒業後はアパレルに勤務同じモールの掃除のアルバイトとして働く、当時専門学生の岩永健(たける)と出会ったそうだ


パワフルな母は未に落ち着きがない

そしてとにかく食べても太らない。


歳を重ねスマートなファッションもカジュアルな装いも似合う綺麗な女性へと変わった母は今も尚

老けていく気配がない——


岩永ゆり18歳


岩永家は見た目に関しては悪くない、何より

母と兄はスタイルがいい遺伝子としてはかなり優秀なのだろうと思う。私は鼻が高い二つの意味で


父の健(たける)は背丈こそ低いもののパッチリとした目に少しだけ厚い唇、男性としてキャーキャー言われるイメージ持てないが父に顔が似たおかげか

私は顔が可愛い


母の薫(かおる)はキレ長の目にシャープな輪郭だ


父のはっきりとした顔立ちと

母の天然モデル体型..とまでは行かないが

私も綺麗な骨格ではあると思う?ただ背丈は

そんなには伸びなかったけれどそれが良かった。


——目立たないから


155cmくらいかな?中学一年で成長は止まる


案の定自分の容姿に前は調子に乗っていた。


歌う事が好きでカラオケに行けばらくらくと

採点機能92点みんなは上手いと大絶賛


家族から友達から親戚まで

「ゆりちゃんは将来アイドルだな!」

「ドラマに出てた〇〇に似てる」


みんな「ゆり」に大絶賛「まあねっ」と返した

嫌味にならない言い方と美貌?だったんじゃないな?


アイドルに少しの間はなりたかったと思うな、けれど実際なってしまうとしんどいだろうなと思う事が

増えこの思いは沸々と薄れ今では完全に消失した


「地獄耳」の私は小学2年くらいで妬みから私への陰口に気づいていた。当然告白される事も増えた。


付き合ってもみたかった美形寄りな男の子も一定数はいた。不可思議なことに約1名は女の子からも告白?

されてしまった..….ガールズトークもゴシップも

知りたくないけど私は全部知っている。


告白してきたイケメンは面倒な女が狙っている

女子には派閥がある、ボスや中心の女子に目をつけられないように「友達じゃだめかな」と身を引く

「女の子」が怖かった


角が立たないやり方は告白された時にびっくりする

事だ。特に顔がいい子には告白された時にはパタパタとおどろいてみせた


少しだけの過呼吸はわざと感がないかなぁ?

とか思案したり顔が赤くなるようにふとももあたり

をよくつねったりした


——

「気持ちは嬉しい、でも尊敬してるけど

 友達として遊べなくなるのが私は辛い」


1回しか昼休みで遊んだ事がない男の子に感じのいい言葉を並べる正直な所私はアイドルよりも

女優が向いている


——-小学校6学年の秋頃

放課後、夕暮れ。場所は音楽教室-2


「ぼっぼぼ…っ!ぼくとつきあってくれぇませか!」


少し蒸し暑い田舎の教室運動音痴の冴えない

石田くんからの告白


..この日を境に誰からも告白されていない

石田君と長く退屈な交際を選んだ


彼を選んだ理由

【彼の噂話をする人が一人もいなかったから】


付き合ってる事は割と知られてしまうけれど

噂にはならなかった、私は中身を見る

素敵な女の子?という印象になったのだろうか。

いいや、この頃には

【オモンナイ真面目カップル】という

レッテルがベッタリと張り付いた


陰口はピタリと終わり話題にも出ない羨まれもしない「埃」のような存在。小学6年になる頃に

は私より可愛い子がゴロゴロといた


私は地味を選ぶ。髪型、休日のメイクも私服も

「ダサすぎて浮く事もなければ」

「派手で浮く事もない」……で済ませている


高校生活は異性絡みが面倒になり

片道1時間もかかる、偏差値の高い女子校へ進学した


——


そして高校2年の夏、冴えない男の子だった石田君は私をフった、意外と異性にモテるようになった石田涼介


地獄耳どころか石田くんが女の子と手をつないでるとこを私は二つの眼(まなこ)で見た。違う子にいった。


次の石田くんの恋人は、おっぱいが少し大きかった

その頃、彼の眉毛はとても綺麗だった。


彼からの別れの口実は

「大学受験に向けて集中したい」との事


地獄耳の私は彼へこう伝えた

「尊敬してる、また別の道で頑張ろう」


石田君は隣の県の偏差値の低い大学へ進学した

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