再会の季節
学園の正門が、久しぶりに賑わいに包まれていた。
長期休暇を終えた生徒たちが、それぞれの故郷から思い出を携えて戻ってくる。
「久しぶり!」
「背、伸びたんじゃないか?」
「休暇、どうだった?」
石畳の広場には、再会を喜んで友の名を呼び合う声や、重い鞄を引きずる足音が重なり、
弾むような活気に溢れている。
止まっていた時計の針が動き出すように、
学園へようやく“日常”が帰ってきたのだ。
⚜️⚜️⚜️
「失礼いたします」
静かに扉を開け、ジャミーラが顔を覗かせる。
廊下の喧騒とは対照的に、生徒会室には穏やかで、どこか厳かな空気が満ちていた。
重厚な執務机の向こうに立つムスタファ。
その斜め後ろに、影のように控えるアルテリス。
そして、窓辺で軽く手を振るライル。
見慣れた配置。守られてきた距離感。
ほんの数十日離れていただけだというのに、その光景は、ひどく懐かしいものに感じられた。
「……殿下」
ジャミーラの声には、再会の喜びと、自分でも驚くほどの安堵が滲んでいた。
「ただいま、戻りました」
ムスタファは、手にしていた書類を置くと、静かに頷いた。
「無事に戻ったようだな」
「はい」
ジャミーラは一歩踏み出し、
改めて室内を見渡した。
威風堂々としたムスタファ。その背後に佇むアルテリス。そして——
「イルハン様も、お戻りになられていたのですね」
「ええ。一足先に」
いつも通りの軽妙な調子で応じるライル。
それだけのやり取りなのに、胸の奥に灯火が宿ったかのように、ふっと温かくなる。
「シャマル様、お変わりありませんでしたか?」
「ええ。お陰様でつつがなく過ごせておりましたわ。
皆様も、お変わりございませんでしたか」
「大事ない」
「ええ。ご覧の通りです」
二人の返答に続き、ジャミーラの視線が最後にアルテリスへと注がれた。
アルテリスは、主たちの会話を妨げぬよう、すぐには言葉を発しなかった。
ただ、向けられた視線に気づくと、薄く、穏やかな笑みを口元に浮かべる。
そして親愛の情を込めながらも、従者としての矜持を保った深い一礼を返した。
(……本当に、戻ってきたのね)
ジャミーラは微笑んだ。
その笑みの奥に、震えるような安堵が潜んでいることを彼女自身が一番よく理解していた。
窓の外からは、遠く生徒たちの笑い声が風に乗って届く。
その賑わいさえも、今はとても心地よかった。




