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Jardin miniature 神々の箱庭で、少女たちは軌跡を紡ぐ  作者: kitty
第1章 聖エリュシア学園入学編
6/90

孤立

聖エリュシア学園の授業は、入学式典の翌日から始まった。


文学や算術といった必修科目に加え、

精霊術、神聖術、馬術などの選択科目も用意されている。

生徒ごとに履修内容が異なるため、時間割も使用する教室も、実に様々だ。


しかし——

三日も経てば、新入生たちはそれぞれ小さな集団を作り、自然と共に行動するようになっていた。


(退屈ね……)


放課後。

ジャミーラは頬杖をついて窓の外をぼんやりと眺め、静かに息を吐いた。


(まさか、ここまで忌み嫌われているなんて)


入学してから今日に至るまで、同級生が彼女に声を掛けたことは一度もない。


こちらから話しかけようとすれば、露骨に距離を取られるか、嫌悪を隠さない視線を向けられる。


ランデュート王国に向けられた感情は、想像を遥かに超えていた。


教室のあちこちでは、小さなグループごとの笑い声が弾んでいる。

その中で、ジャミーラだけがぽつりと取り残されていた。


「ご覧なさいよ。

シャマル様、今日もおひとりだわ」


「仕方ないわよ。

あの髪と瞳の色……気味が悪いもの」


「呪われたりしたら、たまらないわ」


「しっ、聞こえるわよ」


ひそひそとした声は、耳を塞がずとも十分すぎるほど届く。


ジャミーラは聞こえないふりをして、静かに鞄へ教科書をしまった。


「……今日も、図書館に行こうかしら」


少しでも気を紛らわせたくて、そう呟き、席を立った。


⚜️⚜️⚜️


図書館に足を踏み入れると、ふわりと紙とインクの匂いが鼻をくすぐった。


司書に軽く会釈し、静まり返った空間へと進む。


入口近くには長机が並び、その奥には背丈より高い本棚が規則正しく立ち並んでいる。


空いている席を探しながら歩いていると——


(あら……?)


雲のようにふわふわとした金色の髪が、視界に入った。

図書館の隅にいるというのに、不思議と目を引く後ろ姿。


見覚えがあった。


ジャミーラはそっと近づき、人違いでないことを確かめてから声を掛ける。


「アルテリスさん」


優しく呼びかけると、少年は本から顔を上げた。

琥珀色の瞳と整った顔立ちが、穏やかにジャミーラを映す。


「シャマル様」


「ごきげんよう。

ここ、座ってもよろしいかしら?

どこも満席で……」


困ったように周囲を見回し、微笑む。


「どうぞ」


アルテリスが頷いた。


ジャミーラは向かいの席に腰を下ろし、ふと彼の手元にある教科書へと視線を落とす。


「えっ——!」


思わず声が上がり、周囲の視線が一斉に集まる。

ジャミーラは慌てて咳払いをし、姿勢を正した。


「……どうかなさいましたか?」


不思議そうに首を傾げるアルテリスに、ジャミーラは小声で尋ねる。


「アルテリスさん、貴方……上級生……なの?」


彼の手元にあったのは、明らかに上級生用の教科書だった。


「はい」


(小柄で、可愛らしいお顔立ちだったから……

てっきり同級生だと……)


今までの自分の態度を思い返し、ジャミーラははっとして頭を下げる。


「申し訳ございません。

上級生とは知らず、無礼をいたしました」


あまりに急な変わり様に、アルテリスはぱちくりと瞬きをし——

そして、ふわりと微笑んだ。


その笑顔は、思わず胸が跳ねるほど優しかった。


「シャマル様……どうか、顔をお上げください。

先程のように、接していただけますか」


「ですが……」


「礼を尽くさねばならないのは、私の方です」


ジャミーラは、わずかに眉を寄せる。


「……それは、身分の違いからでしょうか?」


恐る恐る、尋ねる。

もしそうなら、違うと言いたかった。


ここでは皆、同じ学生。

重んじられるべきは身分ではなく、学年のはずだ。


だが、アルテリスは困ったように微笑むだけだった。


「はい。しかし、それだけではございません。

今は申し上げられませんが……いずれお分かりになります」


「そう……ですの。

なら、一先ずは従いますわ」


釈然としない思いを抱えつつも、ジャミーラはそれ以上追及しなかった。


——アルテリスの言葉が意味を持つのは、

それから数日後、新入生歓迎パーティーの場においてだった。

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