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Jardin miniature 神々の箱庭で、少女たちは軌跡を紡ぐ  作者: kitty
第1章 聖エリュシア学園入学編
3/90

少年の探し人

空が赤らみ、影が濃くなる時刻——

少年は一本の木に寄りかかり、遠くの大聖堂を静かに見つめていた。


ほどなくして、鐘が高らかに鳴り響き、扉がゆっくりと開く。


(定刻通りですね)


大聖堂からは招待客、生徒たちが続々と姿を現す。

貴婦人、紳士。茶髪の少女に、紺髪の少女——。


少年は流れ行く何十、何百もの顔をひとつずつ確認していく。


手には、

艶やかな漆黒の髪、宝石のような赤い瞳、褐色の肌の美しい少女——

その肖像画が固く握られていた。


(前列に、お座りだったのでしょうか)


だが探し人の姿は、どれだけ目を凝らしても見つからない。


──この混雑から一人を探し出すのは、あまりにも骨が折れる。


ふと、見知った顔と目が合った。

気味の悪い笑みを浮かべ、数人を引き連れてこちらへ向かってくる。


(……なんて間の悪い)


人探しどころではない。

これから起こるであろうことが容易に想像でき、少年は小さく落胆した。


⚜️⚜️⚜️


聖エリュシア学園、体育館——


「ハムザ様ぁ、準備はよろしいですかぁ?」


ケラケラと嘲るような声。

わざとらしく確認を取る自称“審判”と、

その横に一人の男子生徒。


向けられる侮蔑の視線。

少年は何も言い返さず、ただ時間が過ぎるのを待つだけだった。


少年の視線の先には、茶髪の男子生徒——ハムザがいた。

上部に丸みを残した髪を揺らし、入念に準備運動をしている。


やがてハムザが顎をしゃくり、準備完了の合図。


審判が高く手を上げる。


「——それでは、訓練開始!!」


その瞬間、ハムザが拳を振りかぶった。


少年は反応した。

──けれど、避けなかった。


防御の体制はとるけれど、それでお終い。


「はあぁぁぁっっっ」


ダン!!


拳が腹にめり込み、少年の身体が折れ曲がる。


「っっっ」


視界が一瞬白む。

咳き込むたびに鋭い痛みが腹を走る。


「ハムザ様流石ですぅ」


「まだまだここからだ」


蹴り、殴打。

容赦ない攻撃が次々に降り注ぎ、少年の服は擦り切れ、肌のあちこちが赤く染まっていく。


何度目かの衝撃の後、少年は床に転がった。


「ハハハ、見ろよ。下民にはお似合いだろ?」


地に這う姿を見て、取り巻き達が嘲笑う。


「悔しかったらやり返してみな、おチビちゃん」


髪を掴まれ、無理やり顔を上げさせられる。


(あの方を探しに行かなければいけないのに)


あとどれほどすれば、彼らの興は尽きるのだろう。

そんなことを考えながら——


「——おやめなさい」


その一声が、少年の未来を一変させる始まりであったことを、まだ誰も知らなかった。

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