超電磁トラップ!×2
「私のターン、ドロー!」
迎える最後のターン、スキルではなく普通のドローとしてデッキからカードを一枚引く。
強風に押されるように、降り注ぐ雨の勢いが一瞬だけ増した。
ヒラリと面を返して確認する。
アクセサリーカード〈ディープインプネックレス〉――これならいける。
「相手だけが衣装を着ている時、〈シノビタートルディフィニ〉を手札より追加コーデ!」
呼び出したのは、深緑色の布で出来た忍者の衣装。
本場の忍者装飾じゃなくて、ちょっとアイドル様にリファインされたくノ一型衣装だ。
「こっちが怪盗だからって、君は忍者で勝負する気かい?
でも、そんなAPで張り合うのは厳しいとおもうけどなぁ」
インディの言うとおり、ディフィニは一枚でフルコーデ状態になるカテゴリーだが、そのAPは1000。
とても勝負できる衣装ではないが、役割はここからだ。
「このカードをランドリーに送って、効果発動!」
発動の合図として、私の足下からボフンと爆発が起こり、白い煙に全身を包ませる。
「自身の効果で追加コーデされた場合、デッキから〈RDティアーズ〉ブランドの衣装一着をターン終了時まで追加コーデし、その下に自身をAP0にしてアンダーコーデする!」
再び湿った風がステージに吹き込んで煙を吹き飛ばすと、さっきまで忍者に代わって、真っ赤な〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉に一瞬で着替えていた。
「来たね! 天水晴那の第二のエース!」
「あいつが出るってことは……」
忍法みたいな衣装チェンジだが、演出上はショー向け。
今までもハイテク技術による着替えは何度もみせてきたが、手品のようなアナログなチェンジは今でも通用するのか、第二のエースを出した晴那の格好に、インディは警戒し、観客席から再び感嘆の声が上がる。
「〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉の永続効果! 私がこのカードを着ている限り、〈RDティアーズ〉ブランドのコスチュームのAPは100ポイントアップする!」
これでコーラルワンピのAPに自動で100ポイント加わって、AP1330となる。
アンダー分も加えるとさらにプラス100。
「さらに! 〈ディープリムネックレス〉を通常コーデ!」
読み込ませて自分の首に駆けさせたのは、透明な釣り鐘のような花の飾りが下がったネックレスだ。そのAPは150。ワンピの効果で250。
「自身のAPを0にすることで〈ディープリムネックレス〉の効果発動!」
首に提げていた透明の花飾りが、生きているようにぐぐっと動いたかと思うと、自分からぽとりと花弁を落下させ、ステージ上に細かなガラス片となって散った。
APを0にする表現として、肝心の飾りが散り、残ったのは小さな花托の部分だけになる。
「このターン、通常コーデ加えて一度だけ、〈RDティアーズ〉ブランドのコスチュームをコーデできる! 私は〈ヴァルナーガシューズ〉をもう一度コーデ!」
アクセのAPを引き換えに、もう一度〈ヴァルナーガシューズ〉を呼び出す。
APは750でワンピの効果で850になるが、それでもまだ追いつかないが、これでこっちのデッキもフル稼働できる。
「〈ヴァルナーガシューズ〉の効果! 煌方陣展開!」
今度は脚を高く引き上げ、槌の様にカツーンと靴音を響かせる。
それに併せて、方陣も一気に展開させる。
魔方陣の光りに当てられて、〈シノビタートルディフィニ〉と〈ディープリムネックレス〉が液状化していき、ヘッドドレス型のヘアアクセとなって私の頭に乗った。
「リンケージコーデ! 現れろ〈ヴァルナーガカチューシャ〉!」
ワンピとシューズに次いでアクセも出たことで、私もやっとフルコーデになって巻き返せた。
「〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉の効果! 一ターンに一度、自身の衣装の下に〈シェルベッコチャーム・トークン〉をアンダーとして追加コーデする! 私はシューズにトークンを追加する」
これで何度目か、シューズに再び鼈甲のチャームがつけられる。
「そして〈コーラルワンピ〉の永続効果により、〈RDティアーズ〉ブランドのAPはそれぞれ100ポイントあがり、私の合計APは2530となる!」
現時点で、天水晴那側もフルコーデとなって巻き返し、さらにはAPの合計値もインディ・オーラを上回った。
観客からは白熱した逆転の接戦に見えるのか、それともより一層天候が悪くなったのか、あれる風音に混じって妙に席側が騒がしくなった。
「うーむ、さすがは天水晴那。そのしぶとさは伊達じゃないか……。噂じゃあ、Q-key.333の間ではスッポンって呼ばれていたみたいだけどな」
「スッポンって……あの、噛んだら雷がなるまで離さないっていう亀でしょ? でも……さっきから鳴りまくってるけどなぁ。天気も、私も含めてだけど」
逆転されて唸るマスコットとは反対に、インディは暢気にも冗談を交えて答えていた。
「でも……まだショーダウンには早いよ!」
インディの目が鋭く光り、割り込むように手をかざした。
「永続アクシデント〈超電磁コンバイン〉発動!」
二枚目に起き上がったアクシデント。
本人は女児向けコンテンツのキャラだが、扱うカードは五機の戦闘機っぽい乗り物がVの字にフォーメーションをとりながら電流で繋がっているロボットアニメのワンシーンという、イメージとは違うイラストをしている。
「一ターンに一度だけ、自分の着ているコスチュームと極が異なるコスチュームを、手札からアンダーとして追加コーデさせる!」
「ここでアンダーコーデだと!」
仰天するビャコを尻目に、インディが読み込ませた一枚が〈ヴァルドラミスワンピ〉の中に吸い込まれていく。
チラリと見えたカードは、AP500の〈マルティストップスS〉だ。
「さらに! もう一枚の永続アクシデント、〈超電磁ルアー〉も続けて発動!」
すかさず三枚目も起き上がらせる。
前のターンにスカートの効果で引き寄せたアクシデントが、ここで発動された。
イラスト部には、テグスにU字の磁石をくくりつけて、小銭や釘や空き缶など鉄製のなにかを釣って集めている絵があった。
「こっちは一ターンに一度だけ、自分の着ているコスチュームと極が異なるコスチュームを、ランドリーからアンダーとして追加コーデさせる! この効果で、私は〈マルティススカートN〉をS極の〈ヴァルドラミスシューズ〉にアンダーとして追加コーデする!」
今度は〈マルティススカート〉のカードの立体映像がシューズに重なり、吸収されるように溶けていった。これで合計二枚のカードがアンダーとして加わり、インディに着られたワンピとシューズがより一層濃い色のオーラを放ち始めた。
どちらもAP500で、併せて1000。合計APは2800と大台に乗った。
「手札だけじゃなくて、ランドリーからも追加コーデをするなんて……」
「しかも、相手のターン中にまで発動できるのがやっかいなところだなぁ……」
お互いにとってラストターン故に、思った以上にAPレースが激戦になっている。
「でも! 〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉が合って……しかも、今はこっちのターン中! そんな一気に追い上げちゃっていいのかなぁ~?」
だが、そんな中、ビャコがフフンと何かを察したかのようにインディの猛攻をせせら笑う。
何が言いたいのかは分かる、だが……。
「この布陣を展開できる奴が、そんな雑で向こう見ずな戦略をすると思う?」
「え? するかもしんないじゃん!」
顔は見えないが、明らかに口をすぼめて変な可能性をもって反論する。
「なんか、彼女のマスコット……アイラと同じ役割や機能を持っているはずなのに、随分と知識に偏りがあるみたいだね……」
「あれがオレの元になったオリジナルなのか? 戦術的頭脳を持ち合わせていると聞いたが、あまりにも物を知らなさすぎだろう」
確かにビャコ本来の役割は、状況解説やそれによる最適解を算出するサポート役なのだが、やりとりというか問答の立場が逆転している様をみて、インディ達にディスられる。
「なんだとぉ!」
「初めて言われたわけじゃないんだから、いい加減慣れなさい」
握っているのにスキャナーの自由がとられそうなほど捲し立てるビャコ。
ぐっともう片方の手で押さえつける。
このやりとりがギャグに見えているのか、観客席から笑いが起こる。
「それよりも、前のターンで派手に凝った口上や演出まで見せて呼び出した〈ヴァルドラミスワンピ〉が、未だに静かなのが気になる。インディ・オーラの切り札の能力が、ただ少し特別なコーデ方法や地味な極選択だけのはずがない」
今のところ確認できたのは、SとNの双極を持つ衣装をコストに追加コーデする場面と、登場時にどちらかの極を選択する効果。
AP1240は大台でエース級としては申し分ないAPだが、たったそれだけの効果で終わるはずがない。
嫌な予感がする……。
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