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華麗な怪盗向けブランド〈ヴァジュラレガリア〉

 天水晴那 AP0 VS インディ・オーラAP0



 吹き込むぬるい突風に虹色の風が混じる。


 その勢いは、遊園地を見下ろす曇天の雲をずいずいと押し流すほどに。



「こちらのドッキリに成功させたとはいえ、相手は天水晴那だ。油断するなよ」


「うん。分かってるよ、アイラ」



 柄を掴まれたスキャナーが、半球型の液晶画面を点滅させながら、やや機械じみた声を発して、インディに警戒を促す。


 それとは反対に、インディは気軽に返しながら、はじめの手札の四枚を眺める。


 舞台やテレビ慣れしているだろうが、遠くから見守る大勢の観客達、そして対戦相手でもある私も含めて、無数の視線に晒されまくっても動揺しない軽快さは、かなり肝が据わっている。



「インディのスキャナーも随分と喋るのね。あれも、あんたと同じオリジナルマスコット?」


「いや、マスコットを模した完全なロボットだ。中身はAIだろう」


「確かに〈バイチャヤンチャ〉はスキャナーのレプリカ玩具を作っていたけど……アートマンストラ以外にも、あんな独自のスキャナーを作れる企業があるなんて……」



 アイドル産業のパイオニアになろうとしたアートマンストラとは反対に、レプリカを作るからこそ玩具メーカーとしての意地と努力の象徴が、あの象型マスコットなのだろう。


 超電磁怪盗というガールズコンテンツ以外にも、海外で実写映画化した変形ロボットの玩具まで手がける〈バイチャヤンチャ〉だ。


 レプリカだが、汎用性重視のアートマンストラ製の質素なスキャナーの量産なんて造作のないこと。


 むしろ、もっと先の技術を用いて、独自のアイテムを作ろうとしている。


 その最たる例が、あの超電磁怪盗のお供として、高性能な戦術AIを搭載した、動物型の自立マスコットスキャナーだろう。



「あのマスコットを見る限り、ますますあの企画書に記された、スキャナーの秘密の信憑性が増したって感じね」


「だが、見せてもらうには奴に勝たないとだな」



 もとよりそのつもりとはいえ、改めて超電磁怪盗インディ・オーラの挑戦を受ける気概を固め、私もデッキの上から四枚のカードを抜いた。


「――先行はいただいたよ!」



 先手を得たインディが、デッキからカードを一枚引き抜いてゲームを始める。



「手札から、〈ヴァジュラレガリア マルティストップスS〉をコーデ!」



 五枚に揃った手札から一枚引き抜いてスキャナーに読み取らせて自身に着せたのは、元からきている群青色のスーツに、縁や表面に少し装飾が付いて見栄えが豪華になったフォーマルっぽいブレザージャケット型のトップスだった。


 そのAPは500。



「このカードをコーデしたとき、デッキから反対の極を持つ、〈ヴァジュラレガリア〉ブランドのコスチュームを手札に加える!」


「反対の極?」



 私は思わず吐露した。アイドル系どころか、通常のカードゲームですら聞かない用語だ。



「〈ヴァジュラレガリア〉自体は、超電磁怪盗の衣装を古くから作成している〈バイチャヤンチャ〉のお抱えブランドだ。


 そして、そのブランドが得意とする特殊ギミックは、まるで磁石の様な極を持っていることだ」


 ここでビャコが珍しくサポートAIみたいに即時に相手のブランドを分析し、自身の半休型モニターに〈ヴァジュラレガリア〉の詳細を表示しながら要約する。



「今、奴が出した衣装にはSが付いていたな。あれは磁石のS極がモチーフだ。ということは、その効果でデッキから探すのはN極、つまりNと付いた衣装だ」


「ご名答だよ!」



 解説をくれるビャコの声にインディが応えると、正解の実物を見せるように一枚のカード――スカートのコスチュームカードを公開していた。



「そして、私がS極のコスチュームを着ている時、N極を持つ〈マルティススカート〉は手札から追加コーデされる!」



 引き抜いてから即スキャナーにそれを読み取らせると、上半身に続いて下半身にも同じ意匠のスカートが履かされた。


 怪盗の正装っぽいロングパンツから、突然晒される素肌が覗くスカートに代わる。


 この着替えを予期していたのか、長ズボンの下に、あんな長いハイソックスを仕込んでいたことに驚きだ。



「このスカートを履いた時、デッキから〈超電磁〉と名の付くアクシデントカードを一枚選んで、準備する!」



 発動したスカートの効果に従って、スキャナーがデッキの真ん中あたりから、一枚のカードを差し出す。それを受け取ったインディは、すぐさまプレートに読み込ませる。


 足下に等身大サイズのカードが出現し、まるで埋められた罠だと言わんばかりに、すっとステージの床に溶けていった。



「さらにカードを一枚準備して……ターンをチェンジする!」



 手札に握っていた一枚も続けてスキャナーにセットし、伏せたカードを二枚に増やしてから、インディがターンを明け渡した。



 天水晴那 AP0 VS インディ・オーラ AP1000


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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