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助っ人から第三勢力へ

「さぁて、戦車杯優勝の気鋭の新人アイドル、福山美祿ちゃん。この私釈帝堵役の印東虎胡がシバマタパークを案内してさしあげましょう」


「えええ! 虎胡ちゃん、私のこと知ってるの!」


「だって有名人じゃないか! ネットじゃあ君の話題で持ちきりだよ。突如現れた、もう一人のイレギュラーだってね。天水晴那がダークホースなら、君は言うならばライトホースだとか」


「えへへへへ~~照れるなぁ!」



 それからも続く会話がだんだん遠くなり、いよいよ聞こえなくなったところで、一同は緊張が解けたようなため息をついた。



「曽場マキノ、貴様も元超電磁怪盗ならば一緒にファン対応しなくてもいいのか?」


「ええ、あなたも引率で行くならね」



 幸神Pがしれっと残っているマキノに退出を促すも、逆にそう返されてしまった。


 そこに、朔真がわざとらしく咳払いを一つついたところで、場が改まって緊張に包まれた。



「白猫くんが無事に復帰したところで、改めて次の段階の話をしよう」



 立ち上がった朔真が、ブリーフェイングの司会を務める。



「先日の作戦については、印東虎胡の助太刀もあって、アーシャの保護については成功した。虎胡が引き起こした陽動に応じて、実はもう一人の助っ人にアーシャの保護をメインで依頼していた」


「もう一人の助っ人?」



 それについては私は聞かされて無く、思わず声を出して割り込んだ。



「君に言ったところで猛反対するだろうから、事後報告させてもらう。艶井鼎にも、本作戦の助太刀を要請していた」


「か、かな先輩にも!?」



 思わぬ要請相手に、私は思わず立ち上がった。



「あのアーシャを怖がらせずに保護できるのは、君以上に彼女が一番の適任なんだ。それは君が最もよく分かっているだろう」



 確かにそうだ。


 艶井鼎。


 私どころかアーシャにとっても師匠でもある存在。


 私と違って裏切りも追放されたわけでもなく、みんなで見送った卒業生。


 内緒で呼ばれたことは腑に落ちないが、適任者という面では納得して私は座り直した。



「ぶっちゃけると、絵に描いたように簡単にタイマンで保護できるとは思ってなかったんだぁ。裏を搔いて伏兵させたと思って頼んだから、悪く思わないでねぇ。まぁでも、結果として作戦は成功したんだし。無事とは言いがたいけど」



 刹那が頬杖をついたままけだるそうに応える。



「カナ先輩にはなんてお願いしたの?」


「そこまで真相に触れた話はしてない。だが、冤罪で追い出した遊生澄香の後釜につこうとしているナガタマホの謎を明かすために、アーシャくんの生きたスキャナーがいる、と持ちかけたら、二つ返事でOKしてくれた。いやーまったく、美しい。恵まれた優しい師匠がいるね、君には」



 からかうようににやついた笑みで皮肉を言う朔真の言葉に、私は思わず背筋が伸びた。


 二人の話だと、いろいろなことが起こりすぎて鼎先輩も混乱してるって聞いた。


 だけど、私のことになると、疑わずに乗ってくれるその行動力には、うれしさと同時に後ろめたさも感じた。


 それから、次に起こるだろう展開への億劫も。



「だが、問題はここからだ」



 一転して、朔真が唸りながら腕を組み始めた。



「アーシャの保護を依頼したはずの艶井鼎が、今日になって引き渡しを拒み始めたのだ」



 さっきまで成功した作戦という雰囲気だったのが、一変して楽屋内がざわつき始めた。



「拒む理由は明かさなかったが、要求だけは叩き付けてきた。――指定する場所に、天水晴那を連れてこい。この一点張りだ」



 私は露骨に顔を嫌そうにゆがめた。


 どうやら、私が思っている以上の億劫な展開が待ち受けている。


 いや、鼎先輩の方がそれを望んでいる。



「私達は作戦の救援依頼の際に、君の名誉のために天水晴那に関してのことは彼女に何も喋ってはない。だが、おそらく先日の対戦で天水晴那に感づいたアーシャが、いろいろ話してしまったと見る方が自然だろうな」



「それに、元々嫌気がさしてたけど敗北して退所したのをきっかけに敵に回ったボク達と違って、円満卒業で抜けた人だから、忠誠心は残っているというのもあるよ。お説教フェイスがしたいってところじゃないかな」



 朔真に合わせて刹那も合いの手を入れるように話に続く。



「どのみち、天水晴那を名指しにしているということは、これまた絵に描いたような穏やかな再会劇にはならないだろう。しかも指定場所は、馬色産業会館のA館。――ホール級の展示施設だ。対決はまず避けられないと見た方が良い」



 馬色産業会館。


 懐かしい場所の名前だった。


 〈アクアクラウン〉を中心にすると地方へ抜けるほど遠くはないが、県をまたぐから近いとも言えない会館。


 様々なイベントを開催するレベルには広さもある。


 プロアイドルとしての舞台にはならないが、カードゲームの大会にはうってつけの複合施設だったのは覚えてる。


 そして数年前、私はそこで開催されたオーディションに参加して、Q-key.333に入ったのだから。



「刹那がいった、艶井鼎にも忠誠心がある。という言葉は引っかかるな」



 低く挙手しながら草薙さんが発言する。それにはエマが拾って応えた。



「ええ、私もそう思っているわ。ただ、彼女の性格を考えるなら、刹那の言うとおりお説教か、もっと別の個人的な話をしたいから、また一対一の対決になるとは思うけど――中途半端に巻き込んじゃったから、真意がフワフワしたままなのよね。不安は拭えない……」



 続けてウンウンと頷きながら燦子も加わる。



「できれば、念を入れて戦えるメンバーを揃えたいところだが……刹那も朔真も、先日の対決で完全に再起不能になってしまった……」



 その一声で、一同は再び壁に掛けられた衣装達に目を移す。


 吹き込むエアコンの風に揺られた衣装達が、いつ負傷が拡大してハンガーから落ちないか不安になるほどの損傷具合だった。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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