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福山美祿と印東虎胡

「今のは……何が詰まっていたんだ?」



 無事に息を吹き返したとはいえ、後頭部を殴って吐き出させるという荒療治を見て、草薙さんも一瞬の安堵の後で怪訝そうな顔でビャコを見る。



「見たところ、高純度のプリズムストリームの断片だな。目詰まり起こしたパイプみたいに内部に詰まっていたのが原因だな」



 一仕事終えてヨチヨチ歩きながら、リユが美祿の元へ戻りながら応えた。



「高純度のプリズムストリーム?」



 草薙さんが尋ねる。



「ああ。だが、ここまで密度が詰まったプリズムストリームは珍しいな。いくらこいつがずぼらでも、循環器が閉塞するほどっていったら、相当の高純度なプリズムストリームを一気に浴びたせいだろうな。鼻くそが穴を塞ぐほどでかくなったレベルだな。心当たりは……この集会を開くといったらありそうだがな……」



 リユの診断の通り、心当たり以上に原因はすぐに分かった。


 私は眉間に指を当てて思い返す。


 プリズムストリームとの共鳴適性が高い存在――申し子レベルで親和性が高いアイドル蓁原詩弓との対決。


 ただでさえ、通常の効果ですら命がけだったのに、最後に喰らったあのトゥルーワードミュージックを真っ向から受けてから、ビャコの調子が狂ってしまったのだから。



「約束だ。治療費代わりに、ランク一との対戦ログを渡してもらおうか」



 感動の復活ムードを覚ますように、幸神Pが冷たく勇作Pに言い放った。



「ビャコ、データの方は無事か?」


「ああ、気を失う前にバックアップとってるから大丈夫――だと思うけど」



 勇作Pが私に視線と指でリユを指し示す。


 それに従って私はビャコを手に乗せたまま伸ばしてテーブル越しに美祿ちゃんの元へ近づけた。


 美祿ちゃんも同様にリユを手に乗せて、二体のマスコットを対面させる。


「ほれ」


「あいよ」


 という短いやりとりを経て、ビャコとリユが尻尾を向けて先端同士で接続する。



「高純度のプリズムストリームか……」



 ビャコとリユがデータを送り合っている間、燦子が声を上げた。



「それが原因で白虎型マスコットが機能停止になったのなら、衣装の破壊理由もそれだろうな。スキャナーが目詰まりを起こしただけではなく、カードに搭載された内部データまで破損し、さらには玩具側も処理が追いつかなくなったことで負荷がかかりまくってオーバーフローを起こした……ってのが故障の原因だろう」



 穴の空いたスキャナーをいろいろな角度から眺めながら燦子が観察して仮説を立てる。


 だけど、それには刹那が納得のいってない顔を浮かべる。



「でも、ボク達詩弓ちゃんと何度も戦ったけど、そんなこと一度もなかったよ? それにすみ――晴那だけオリジナルマスコットだけど衣装は同じくらい壊れちゃったし……」



「それに」と、虎胡の肩に乗ったゾウ型マスコットが口を挟んだ。



「虎胡は負けてないからかもしれないけど、オレは非正規マスコットだが無事だよ。衣装も問題ないし……」


「でも、この有様を見せられたら、流石にメンテナンスは入れないといけないけどね、アイラ」



 腕を組みながら壁際で佇む虎胡が苦笑しながら語りかけると、隣にいたマキノがドライバーを握りしめながら傍による。


 キラリと光る眼鏡に臆したアイラは、そのまま虎胡の顔にすり寄った。



「だとしたら、あいつがスキルを使ったってのが、一番の原因だろうな。――あのときが、一番プリズムストリームが生き生きと集まってやがった。オメーらが負けたタイミングと、奴がプリズムドローで生み出したトゥルーワードミュージックの発動タイミングが同じなら、オーバーフローと内部データ破損の説明がつくだろうな」



 ビャコが尻尾を突き出しながら割り込んだ。



「詩弓ちゃんがスキルを!?」


「しかもプリズムドローでトゥルーワードミュージックを生んだというのかね、白猫くん!?」



 当然の反応を見せる元ディーヴァス神姫。



「その話は、後にしてもらおうか。こちらも解析する楽しみが減る。それに今の貴様らは、それどころではないのだろう?」



 ビャコとリユの尻尾通信が終わったのを見計らって、幸神が話の舵を切り出した。



「そうだった……」とがっかり半分、残り半分を本題という顔で朔真が椅子から立ち上がった。


「プロデューサー……美祿ちゃんも巻き込んじゃうの?」



 いくらビャコの治療のためとはいえ、自分から嬉々として首をつっこんできた印東虎胡以上に部外者の美祿がここに来るのは想定外。


 あまり巻き込みたくない私は、ひそひそと勇作Pに耳打ちした。それには勇作も顔を渋めるほど同意らしく、幸神Pに目配せした。



「美祿、貴様は確か超電磁怪盗インディ・オーラのファンだったな」


「あ! そうだった! 今日はそこにつれてってくれるって!」



 勇作Pの無言の視線から、くみ取ってくれた幸神Pがわざとらしく咳払いをして美祿に声をかけると、彼女は思い出したかのようにピンと跳ねて燥ぎだした。



「そこに、インディ・オーラこと釈帝斗役の印東虎胡がいるぞ。おっと、先々代のマグナ・ソルヴァ役の曽場マキノもいるのか」



 幸神Pがわざとらしい口調で少し身を屈ませると、それを真似して屈んだ美祿と、印東虎胡達の目が合った。



「わー! 虎胡ちゃんだ! 本物! マキノちゃんもいる! 本物のアイラちゃんもだ!」



 もう新人の域を超えたプロなんだから自覚を持って行動して欲しいところだけど、今はその無邪気な初々しさが微笑ましい。


 完全に有名人にあったミーハーな女子高生が抜けてない美祿に、虎胡どころか私と勇作Pを除く全員が苦笑する。



「は、はーい、よろしくね~」


「あいつめぇ、あの子の世話という名目でオレ達をハブにするつもりだな!」



 話題にされたことで一番苦笑いを浮かべる虎胡に、アイラが見透かして不満を口にした。



「仕方が無いわよ、虎胡ちゃん。見ての通り彼女達は、そこの白虎型マスコットの修理の為に呼んだだけの部外者だもの。そんな子まで、こんなことに巻き込むのも悪いわ。対応頼める?」



 マキノの言葉に観念した虎胡とアイラは、やれやれと肩をすくめながら「あらほらさっさー」と返して、未だに興奮する美祿を廊下までエスコートしていった。


 虎胡が美祿の手を繋ぎながら、楽屋の扉を抜けた後も、二人の会話が漏れ聞こえる。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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