↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
133/154

「作戦完了だよ、帰ろう……」

「ビャコ、何が起きたの? ビャコ!」



 詩弓を見据えながらビャコに確認をとるも、返事がなかった。


 どうしたのか、スキャナーのぞき込むと、言葉が止まった。


 半球モニターの画面が乱れている。


 盤面どころか、モザイクみたいなノイズが画面を満たして、何も見えなくなっている。



「ビャコ! ビャコ! どうしたのよ、しっかりしなさい!」



 思わずバシバシとスキャナーをたたいて起こすが、モニターのノイズが変わるだけでビャコからのリアクションはなかった。



「トゥルーワードミュージック〈天地開闢プララースタディ〉。自分の場のステージミュージックをコストにすることで、場のカードを全てデッキに戻す。その後、お互いのプレイヤーはランドリーにあるコスチュームを可能な限り追加コーデさせる」



 効果を説明しながら、コツコツと芝を踏みながら詩弓が迫ってくる。


 奴が来る。


 私は思わずビャコを胸に抱えながら後退った。



「さぁ、これにて終局だ。私は手札から〈パレティナ・ホワイトワンピ〉をコーデする!」



 〈ヴァルナーガポリフェワンピ〉がデッキに戻されたことで場の封印が解かれ、手札に戻した詩弓のエースが舞い戻った。


 天女の衣装。


 白く無垢で神々しいが、一切の容赦を許さない無慈悲な天使の翼が、夜の公園の中で鷹揚と広がる。



「見晒せ、これぞ我が光輝! ヴァイクンタ!」



 詩弓のワンピが効果を発動させ、光波と共に衝撃波が襲いかかる。



「ぐああああああああああッ!」



 動かなくなったビャコから顔を上げたときには遅く、もろに喰らった私は無残にも吹っ飛ばされてしまった。


 とっさにビャコが手から放してしまう。


 スキャナーは痛いとも言わず、ばさっと芝に落ちる。


 それほど防ぐ間もなく、そして今までにない衝撃を身体全体で受けた痛みが、私を立てなくするほど悶絶させる。



「これで貴公のエースは半減に加えて機能停止。勝負あったな!」



 文字通り再起不能になった私に向かって、勝ちを確信した詩弓がスタンバイを口にしかけた。



「――詩弓!」



 散歩道――朔真と虎胡が逃げた先の方向から、神息吹阿国と愛染碧の二人だけが駆けつけた。



「アーシャがどこにもいませんわ!」



 前屈みになるほど息を切らせながら、阿国が詩弓のそう伝えていた。



「奴らが連れて行ったのではないのか!」



 その予想外の報告は、それまで平然と勝負をしていた詩弓に衝撃と焦燥を与えた。



「どっちもブラフでしたわ! おまけに、当人らに逃げられましたし……」



 まんまとしてやられた自分に呆れているのか、大きく息を吸いながら身を逸らす阿国。


 そして、試合は優勢だったのに十分時間を稼がれて本質を見失っていた事に気づかされた詩弓もまた、歯をきしませるほど唸る。



「くぅ……!」



 静かな怒りの面でこちらを見下ろす詩弓。


 それに対して、私はただ横たわったまま、黙ってにらみ返すしかなかった。


「この勝負は預ける!」



 それだけを言い残して詩弓が背を向けたとき、私の視界がぼやけ始めた。


 曇りガラスの様になった視界の中で、なにやら阿国が指をさしている仕草と、頷いて追いかける詩弓の動作だけは確認できて、遠ざかっていくのだけは分かった。


 やたら大きく聞こえるようになった呼吸音を立てる私の感覚から、だんだんと緊張させるほどの脅威が遠ざかっていくのを感じる。


【ディーヴァス神姫】が去った。


 その認識を感覚で改めて悟ったのか、呼吸のリズムが安堵するほど穏やかになっていった。



「ビャコ……」



 まだ視界が定まらないが、私は腹ばいになりながらビャコの元へ近づく。


 やっとの思いで手を伸ばして握りしめるが、ビャコからは何も反応がなかった。


 むしろ、ノイズまみれだった半球モニターが消灯して、完全に動かなくなったスキャナーになったままだった。



「ビャコ……」



 もう一度、名前を呼ぶ。


 返事はない。


 壊れたのか、それとも……とにかく、ビャコを起こさないと思って自分も起き上がろうとするが、思うように身体が動かず途中で力尽きてまた突っ伏す。


 瞼が重い。


 このまま落ちてしまいそうなほど。


 でも、ここでそれに従うと、ビャコが戻らない気がして私は懸命に耐えて奮闘する。



「よいしょっと……大丈夫?」



 印東虎胡の声が聞こえてきた途端、目の前に広がる芝が急に遠くなった。


 身動きはとれないが、身体が浮いている感覚がする。


 おそらく、虎胡に持ち上げられているのだろう。


 完全に力が入らなくて両腕がブラブラと揺れ、ビャコを握る指が緩くて今にも落ちそうだった。



「作戦完了だよ、帰ろう……」



 虎胡はそれだけを伝えて、私からビャコを取り上げた。


 作戦は完了だが、失敗していない。


 それをちゃんと聞けた途端、私は改まって安堵のため息をついてから瞼を下ろした。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。