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-澄香side- 詩弓のプリズムドロー

 天水晴那 AP2480 VS 蓁原詩弓 AP1500



 真っ白な肌に浮かぶ真っ赤な禁止マークが変に浮かんで見えるシュールな光景。


 それに加えて、ターンを明け渡されたというのに、詩弓は呆然と立ち尽くして盤面を眺めていた。


 何かを考えているのだろうが、何をかんがえているのか読めない。そんな顔と佇まいだった。



「ところで、晴那。俺一個気になることあるんだけど……」


「なによ……」



 将棋や囲碁のプロ旗手からの出方を待っているような沈黙を破って、ビャコが尋ねてきた。



「奴のスキルって、結局どんなのなんだ? スキルを導入して戦略の幅を広げた立役者共の筆頭なのに、全然使うそぶりもみせないし……」



 言われてみれば、詩弓はまだスキルを発動させていない。


 いや、それどころか、私は詩弓の使うスキルがなんなのか知らない。


 その答えを知っているだろう【ディーヴァス神姫】も、今はここに誰もいない。


 だが私の知っている限りでは、蓁原詩弓というアイドルは、女帝杯でも、ランク昇格戦でも、艶井鼎を負かせたときでも、スキルを使う瞬間を目にしたことはない。



「もしかして……対戦の決着が早すぎて、スキルを使うまでもない……だから、私どころか、誰もスキルの正体が分かってない?」



 私の背筋に嫌な悪寒が走った。


 ここ最近、【ディーヴァス神姫】は殿堂入りという閑職状態で露出が減っているのもあるが、過去の女帝杯での映像やメディアからの放映でも、スキルを使うシーンを放映していた覚えはなかった。



「そ、そんな馬鹿な! じゃあ、あいつは相手だけにスキルを使わせたってのか? ハンデなんてもんじゃねぇよ!」



 言い方はアレだが、確かにスキルを使わない縛りで勝ちまくったなら、自分よりも下のランカーにはスキルというハンデありでの対決という構図にも見えなくはない。


 だが、今の問題はそこじゃない。


 ビャコがその話題を持ってきたということは、このタイミングで詩弓にもスキルを使う可能性が出たということだ。


 突っ立っていた詩弓が突然動き出して、改めて自分の手のひらを見る。


 結んではひらいてを繰り返して、何かを掴もうとする仕草をする。


 最後にぐっと拳を結ぶと、「よし!」という一声と共に詩弓が動き出した。



「スキル発動!」



 こちらに向けて手のひらを掲げて宣伝する。


 思わず私も、それに併せてつい身構える。


 だが、何も起きなかった。


 それどころか、詩弓のスキャナーから『スキルがセットされていません』という無慈悲な機械音性が流れて場を凍り付かせた。



「スキルを……」


「セットしてない、だと?」



 そもそもの根底が違っていた。


【煌閃天】こと蓁原詩弓は、その対戦スタイル故にスキル使うまでもない、という訳じゃない。


 固有スキルの所持どころか、そもそもセットすらしていなかったのだ。


 スキルは不発。


 だが、詩弓は誇らしげに微笑み、そのまま人差し指を向けて続けた。



「とりあえず、私のスキルの発動は”宣言しさせてもらったぞ”」


「何をする気だ?」



 こちらの問いに答えることなく、詩弓はただ澄ましたまま笑みを浮かべて腕を下ろした。


 すると、詩弓のスキル発動の宣言に呼応して、彼女を中心に虹色の風が舞い込んできた。


 プリズムストリームの入り交じった鮮やかな虹の風が、彼女を軸に豪華な渦を巻き始める。



「こ、これは……!」


「うそーん! このスキルはッ!」



 二度も浴びるプリズムの向かい風。


 急に襲いかかる突風に身をかがめてしまうほど。


 そんな風圧の中で、私以上にビャコが仰々しく驚く。


 スキルの発動宣言に応じて、プレイヤーを中心に虹色の竜巻が現れるこの一連の流れは、見覚えがあるどころ現象じゃない。


 私の場合は、ビャコのようなオリジナルマスコットに頼らないとこうして集めることすらできない。


 だけど、奴はスキルやスキャナーにも頼らず、完全に自力でかき集められている。


 高純度のプリズムストリームを引き寄せられるほど高い共鳴適正。


 それは体質なのか、ビャコは詩弓をそう分析する。


 確かに、奴がスキル発動のために渦を巻いているプリズムストリームは規模もでかく、色が鮮やかに見えるほど濃度も高い。


 それ以前に、奴と対面してから今までにないプリズムストリームによる演出を身体で直に受けているが、同じアイドルという存在なのに、エンプリスの動力であるエネルギーを自在に操る芸当ができるなんて。



「自分のドローフェイズ時、ドローを放棄する代わりに、プリズムストリームから、トゥルーワードミュージックカードを手札に加える!」



 渦の中で詩弓が喋る。



 ドローフェイズのドロー放棄とトゥルーワードミュージック。


 その用語は、まさにあのスキルの発動条件と内容だった。



「我が想い、願い、そして信念よ、この手に集い、形となれ! プリズムドロー!」



 色まで荒れ狂う嵐の中に詩弓が腕を突っ込んだ途端、青い閃光が手のひらをめがけて収束しはじめる。


 輝きが人一倍大きくなる瞬間にそれを掴むと、周り囲っていた虹の渦が役目を終えてピタリと止んだ。


 その手の中には、カードの形になっているプリズムストリームの塊が、青白い光を帯びたまま握られていた。



「馬鹿な! プログラムもなしにあんな完璧なカードを作り出せるなんて!」



 プリズムドローは、プリズムストリームをかき集められるオリジナルマスコットのプログラミング能力と、カード化の源である強い意志をもつアイドルの双方の力が無いと発揮できないスキル。


 だが、目の前にいる詩弓の場合は、冗談も無駄口もたたかない無機質なAIの入った量産型のスキャナーと、空っぽのスキル枠だけ。


 共鳴適正というが、体質的にプリズムストリームに魅入られただけで、プログラマーが唸るほどの完璧なプリズムドローができるものなのか。



「待たせたな。では改めて私のターンだ」


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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