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高純度のプリズムストリーム

 天水晴那 AP1065 VS 蓁原詩弓 AP2900



 ターンを譲られて脅威が止まった。


 うつ伏せたまま、私にターンを迎えさせられる。



「い、今のは……?」


「立体映像化させたプリズムストリームの純度が高すぎて、質量を持ち始めてるんだ!」


「プリズムストリームの純度?」


「プリズムストリームは投影させるスキャナーを動かす電気や燃料のように変換されるもんじゃねぇ。空中漂う微粒子よりも小さいプリズムストリームが集まって、スキャナーや演者の臨む形をスカスカの立体映像という透明なハリボテとして形にする。だが、ここまで純度が高いと、粉がダマになって本当に質量を持つようになる」


「どういう、ことよ……」



 普段お世話になっている者なのに、ビャコの説明から一気に難解なSF設定を帯び始めて、私は理解を拒否しながらガクガクと立ち上がる。



「オメーらが、スキルでプリズムストリームの中から生成したカード。あれは本物のエンプリスのカードを作ったんじゃなくて、お前の願いを聞き取ったプリズムストリームが、一カ所に集結した高純度プリズムストリームの産物なんだよ!」



 その真実に思わずビャコに目を向けて驚く。



「あ、あのカード達も、プリズムストリームの塊だって言うの?」


「だって、ゲーム終わったら無くなってるじゃん。その都度スキルで生成してるし」


「つまり、この攻撃も本来はただの演出なのに、プリズムストリームが集まり過ぎちゃって堅くなったわけね。ゼラチンを入れすぎたゼリーってとこかしら……」


「概ねその通りだが……これはカードの効果じゃねぇ。あんな無意味な効果、ゲームじゃあ全然焼くに立たないんだ。それに奴と対面してから気になっていたが、プリズムストリームとの共鳴適正が高すぎる……」



 その台詞は、アーシャがスキルを使った時にもビャコが呟いていた。


 共鳴適正が高い。


 その意味が私にも分からないが、詩弓がこの場に来てから、今までうっすらと色を帯びていたプリズムストリームが妙に色づいていた気がした。


 だが、そんな現象は、このエンプリスにおいて実力に結びつく要素ではない。


 一発不意打ちを食らったが、私は頬をたたいて立ち直った。



「よし! よく立ち上がったぞ晴那!」


「ええ、まだ始まったばかりよ。……でも、私のコスチュームのAPは半減された上に、要のワンピースも沈黙させられたまま……」


「たしかに、唯一無二の防御が逆に黙らせられたのはきついなぁ。それに、奴には伏せカードが二枚。閃光と共に滅するって、そういうことか」



 ビャコがこれまでの経緯を吟味して、二つ名の意味に納得する。


 蓁原詩弓の強さは、気難しい貴婦人の様な〈トランクイル・ディバイド〉を扱えることだけではなく、その展開の早さ。


 一見はパワーで押しているタイプに見えて、ワンピで黙らせてさらに引き離すタイプ。こうなると、破壊に反応する防御は無意味と化す。



「シューズが無効化されなかったのが不幸中の幸いってところね。それに……奴のAPは今2900。こちらのバリエーションだって負けてない!」



 何よりも、未だに余裕ぶって勝手に舞を踊っている詩弓の衣装には、効果こそ強力だが、逆に何の耐性も持っていない。


 次のプランが決まり、私は改めて身構えた。


「ビャコ! スキルを使うわ!」


「よしきた! こんだけ高純度のプリズムストリームに囲まれてるなら、あっという間にできるぜ! お客様、手をかざしてお待ちください!」



 さっきの説明で、私が使うスキルの構造が分かった。


 高純度のプリズムストリーム。


 確かにこんなゴーグルをつけなくてもメタバースみたいな幻想的な空間にいるなら、ほとんどプリズムストリームそのものに浸けられたのも同然だ。


 店員みたいな案内をしながら半球モニターを光らせるビャコの言うとおり、祈りを込めながら手をかざす。いつもなら吹き荒れる虹の渦に手を突っ込んでカードを生成するが、今回は本当に何もない空間から一枚のカードが出現した。



「私のターン、ドロー!」



 完成と同時にカード化されたプリズムストリームの塊を摘み、デッキから引き抜くようにそれを手札に加える。



「あれが天水晴那のスキル、プリズムドローか。ふむ……なるほど」



 興味深そうに腕を組みながら、私のスキルをまじまじとみる詩弓。


 ふと腕を組みながら片手を開くと、何かを試すように手を小さく振っていた。



「〈ヴァルナーガシューズ〉の効果! 〈シェルベッコチャーム〉と効果を無効化された〈ヴァルナーガワンピ〉を素材に、デッキから〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉をデッキからリンケージコーデする!」



 水面の如く波紋を浮かべる床に煌方陣を展開すると、私を中心に蓮花型の波紋が満開だと言わんばかりに大きく咲いた。



 石のように灰色に沈黙したワンピがドロドロに溶けだすと、もはや脱皮の如く下から真っ赤なワンピースが姿を見せた。



「〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉の効果で、シューズに〈シェルベッコチャーム・トークン〉を付ける!」


「そしてコーラルワンピの永続効果で、〈RDティアーズ〉ブランドのコスチュームは100ポイントアップするぜ!」



 半減してしまった衣装と、元々の数値が同じAPのワンピと交代させて、再びフルコーデを揃えて、チャームもつけて四枚編成にリカバリー。


 それでも総APは2080程度だが……。



「これで決着だ! 手札からトゥルーワードミュージック〈無垢なる真海・クリアオーシャン〉発動!」



 プリズムストリームによって生成したトゥルーワードミュージックが、同じくプリズムストリームで形状された読み取り版が接触する。


 すると、対面する私と詩弓の間が、突然間欠泉の様に水柱が立ち、その中に小さいウミガメの群れが水流に乗って上っている姿まで見えた。


 勢いだけで聳え立つ水の柱から無造作にしぶきがお互いの体にかかり、いつのまにかそれが、鼈甲のチャームとなってぶら下がっていた。


 水柱がピタッと消えた頃には、純白で統一された詩弓の衣装に、汚れたシミかと思うように、鼈甲色の飾りが変に目立って見えていた。



「〈無垢なる真海・クリアオーシャン〉は、お互いの来ている衣装の下に〈シェルベッコチャーム・トークン〉をアンダーとして追加コーデさせる!」


「そして! お前に付けさせてもらったそのトークンのブランド〈RDティアーズ〉! 〈ヴァルナーガコーラルワンピ〉の永続効果は、敵味方関係なくブランドで上がる!」



 エンプリスというカードゲームでの勝敗の付け方は、APの高さを競うだけじゃない。


 こうして相手のAPを規定より上げてバーストを狙うことも戦略のウチだ。


「食らえ! コーラルガーデン!」


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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