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白蓮の王衣〈パレティナ・ホワイトワンピ〉

「〈スヴァルガーデン〉の効果。このカードが表側表示で存在する限り、〈トランクイル・ディバイド〉ブランドのコスチュームのAPは200ポイントアップする」



 存在する限り指定のカードのAPが上がる。


 割と地味な効果だが、これ自体は、よくあるステージミュージックの性能と同じだ。


 ただ、元が800もあるAPがいきなり1000に上がるのも地味に驚異的だったりする。



「場にステージミュージックが存在するとき、このカードは追加コーデされる」



 詩弓が手札から一枚引き抜いて追加コーデを背源するが、そのカードはスキャナーに乗ることなく、詩弓の手の中で一輪の白蓮華の花に変化下かと思えば、あっと今に散って花弁が崩れていく。


 しかし、手からこぼれた花弁達は消えるどころか、詩弓の肢体に絡みつく、ささやかな花吹雪となって漂い始める。


 これも演出がなせる表現なのか、回り囲う白蓮華の中で、詩弓の体に神々しい意匠が施された衣が徐々に精錬されてゆく。



「天蓮開き、白き楽園の門よ、開け! 権限せよ!〈トランクイル・ディバイド パレティナ・ホワイトワンピ〉!」



 渦を巻く花吹雪が弾ける。


 完成と同時に上がった産声の如く、一陣の風が吹き荒れる。



「このコスチュームは……」



 初めて見る衣装ではない。


 蓁原詩弓が映る媒体で必ず着られたトレードマーク。


 そして【煌閃天】ひいては現在のQ-key.333を象徴し、統一ユニフォームのベースとなった王衣そのもの。


 レアリティURのAP1300。


 透き通った真珠色のレース生地に、金細工の蔓と宝石を纏い、腰から脚へ透ける布が流れて、聖なる舞踏衣のよう。


 そして背には――本来のデザインには描かれていないはずだが、もう一対の腕を想わせる青白い透き通った羽が広がり、蓮と曼荼羅の装飾が女神めいた白い艶を宿している。


 その衣装は、まさに生きていた。


 背に伸びる人の腕のような翼腕が、着主を囲う空間をかき回すように、ゆらりゆらりと舞っている。


 インド神話の、腕が何本もある神様が踊っている、そんなのに似た不可思議で物々しさを覚えさせた。



「そして〈スヴァルガーデン〉の効果により、そのAPが200ポイントアップする!」



 ワンピが1500でシューズが1000。


 合計APが2500と一気に追いかけてくる。



「そして私は、未使用の通常コーデによって、〈チャクライムヘアアクセ〉をコーデする。このアクセのAPは200。そしてステージミュージックの効果によって400になる!」



 詩弓が頭部を飾ったアクセサリーは三つの黄金色の輪を重ねたシンプルな髪飾り。


 珍しく効果のないノーマルでAPが少し高いが、舞台の力を借りたことで一気に光沢がました。


 これで、グラビアでよく見かける、【煌閃天】こと蓁原詩弓の正装が揃った。



「ステージミュージックの影響で、合計600ポイントアップして奴の総APは2900。確かに閃の二つ名の通り展開自体は早い。でも、お前から聞いた話だと、効果を多用して一掃するタイプかと思ったが、今のところ普通のパワータイプってところだな……」



 ビャコが盤面に映る数値を見比べながら、相手が広げた展開の経緯からそう分析する。


 だが、詩弓はそんな安易な感想を漏らすビャコを嘲笑うかのように、フンと一つ笑った。


 それに併せてさっきまで舞っていた翼腕がピタリと止み、詩弓の胸を抱きしめるように交差し始めた。



「〈パレティナ・ホワイトワンピ〉の効果! ヴァイクンタ!」



 一喝と同時に胸前でぐっと翼腕が引き絞られ、しなりの反発で光波を放った。



「「ぐおあッ!」」



 まさかの物理攻撃という不意打ち。


 突然の煌めく一陣が迫った瞬間、私は反応する真もなく弾き飛ばされた。


 下は芝生のはずだが、それを感じさせない堅さが転がる全身をさらに痛める。


 跳ねる度に、着地点が嫌みのように花弁の波紋を広げてゆく。


 引き絞った腕が倍に伸びてぶつけられたのかと思った。


 それ以前に、この全身に伝わる痛み。


【紫智天】の焼き印の時とは違う、それまで立体映像という虚像が作り出した錯覚痛とはちがう、本当に質量を帯びた何かに衝突したような……虚像と現実の区別がつかなくなった感覚だ。



「〈パレティナ・ホワイトワンピ〉の効果。一ターンに一度、相手コスチュームのAPを全て半分にする。さらに運が悪かった場合、コスチュームの効果が無効化されることもある」



 本人は衣装にだけ効果を及ぼしたつもりだが、こちらには魅力どころかライフが半分にされる衝撃を思いっきりぶつけられた。



「う、うう……」



 今の一撃で、着揃えた衣装達のAPが半分に。


 効果の内容は分かったが、肝心の私自身に何が起きたのか分かっていない。


 だが、頭の中でこんがらがるほど混乱しても、不意打ちで吹っ飛ばされた衝撃で呻くしかできなかった。



「ふむ、無効化されたのはワンピースだけか」



 詩弓に言われて、私はうつ伏せながらも自分の衣装に目を運ばせる。


 元々黒かった〈ヴァルナーガワンピ〉が、さらに生気を失ったかのように色あせて石のような灰色になっていた。


 ワンピのアッパー効果が消え、私の総APは1065だ。


「私はカードを二枚伏せて、ターンチェンジだ」


 天水晴那 AP1065 VS 蓁原詩弓 AP2900

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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