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ステージミュージック〈スヴァルガーデン〉

 天水晴那 AP2530 VS 蓁原詩弓 AP0



「私のターン、ドロー」



 後攻。


【煌閃天】のターンが始まる。


 漂う虹色の風が妙に贔屓しているのか、詩弓がデッキからカードを引く度に、テールランプの様に輝く塵が追いかけてくる。


 引き加えた一枚を見ると、それを先に握っていた一枚を交換させる。



「自分が衣装を着ていない時、手札の〈トランクイル・ディバイド ヴァいダリスシューズ〉は追加コーデされる」



 詩弓側も開幕からシューズを出す。


 自身の髪と同じ真っ白な靴。


 ついでに腿まで覆ったソックスまで。


 ただ白一色ではなく、所々に金色の装飾とラインが走っている。


 そのAPは800とレアリティUR級のシューズらしい性能だ。



「〈トランクイル・ディバイド〉……。ランク1らしいお高いブランドだな」



 初っぱなに出したシューズのブランドを聞いたビャコが、嫌みったらしく吐き捨てる。



「ランク1だもの。お召し物を提供するブランドがハイレベルなのも当たり前でしょう」


「値段もそうだが……あそこのブランドが作る衣装は、衣装の思想っていうか、好みって言うか、かなり気難しいんだぞ。大金叩いて買い揃えたとて、必ず応えてくれるとは限らない。特に〈トランクイル・ディバイド〉製は素材の関係もあって原価も凄まじいが、それ故に衣装がアイドルを選ぶ選民さと、その衣装を従えたときの強さは一級品だ」


「それが奴の強さの秘訣ってことね」


「かもしれない……だが、問題は奴が衣装を従わせているのか、衣装が奴に使われているのか、主従関係が気になるところだな……」



 衣装とアイドルの主従関係。


 神妙な声になってまでビャコが気になることを語る。


 カードとプレイヤーの絆、なんだかホビーアニメの精神論みたいな話で首をかしげる。


 ふと、ある衣装のことを思い出した。


 〈ミトロニオス マイトレイルワンピ〉。


 それは〈RDティアーズ〉と〈アクアクラウン〉の二つのブランドを手がけたデザイナー白波勇作の永遠のライバル――〈サンドリヨン〉の創設者にしてプロデューサー幸神総一郎が手がけた本物の暴れ馬。


 彼がスカウトした新人アイドル福山美祿のために新しく立ち上げた独自ブランド〈ミトロニオス〉より開発された橙色のワンピース。


 着主すら制御できない生きた衣装。着るか着られるかを問われる化け物。


 蓁原詩弓の使うブランドが、あんなのと同じ性格をしているのなら……ビャコの呟いた疑問の答えは、確かめてみるまでもない。



「〈ヴァイダリスシューズ〉の効果! このカードがコーデ・追加コーデされたとき、デッキからステージミュージックを一枚手札に加える」



 来て早々に効果を発動したシューズから、鈴が鳴ったようなシャランという音がした。


 その音に合わせて、スキャナーが献上するようにカードを一枚差し出した。



「その効果によって私は〈スヴァルガーデン〉を手札に加え、そのまま発動する!」



 受け取ったそのカードを見ることなく、改めてスキャナーに乗せる。


 置かれたカードが読み込まれ、スキャナー内部を煌めかせるプリズムストリームが音を立てて稼働し始めると、また私達が佇む夜の公園に変化が起き始めた。



「奴が使ったのは、ステージミュージック……」


「BGMと同じ表側で存在し続ける限り永続的に効果を発揮するミュージックの一種。本質は同じだけど、BGMや永続アクシデントと同じ場ではなく、専用の場所に置いて発動できる」



 そしてステージと名前がつくように、実際に可視化される際に変化するのは、まさにアイドルである私達が立つこの舞台。


 詩弓の握るスキャナーの動力が急激に増して発光した途端、さっきまで何の変哲もない芝生の広場が、ネオン輝く遊園地なんて比じゃないほど幻想的な景色を作り出す。


 夜空に浮かぶ神域の箱庭。蓮華の花弁を想わせる白亜と黄金の宮殿がそびえ、曼荼羅模様の装飾が天界そのものを舞台装置へ変えているかのように煌めいている。



「こんなのがステージミュージックかよ! これじゃあ、まるで……」


「トゥルーワードミュージック……」



 私もビャコも幾多の対戦を潜り抜けてきたが故に、ステージミュージックの体感は初めてではない。


 だが、この夢の世界に放り込まれたかかのような没入感あるものは初めてだった。


 芝から変わった足下は、水鏡の様に透き通って紫紐の光と花びらが反射している。


 足を動かせばそれに応じて波紋が立つが、その形が開花した蓮華という拘りよう。


 さっきのアーシャとの対戦で発動させた私のトゥルーワードミュージックにも似た演出だが、私のはプリズムストリームで生み出した生成カードだからこそ使い捨てでも長く出力されただけであり、本来ここまで継続的に場そのものを仮想空間で塗り替えるには、このような専用のカードが必要なのだが、蓁原詩弓の出したカードも同じものなのか疑わしくなってきた。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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