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-虎胡side- 虎胡&朔真VS【赤滅天】&【堅碧天】

「――しかしてその実態は!」



 プリズムストリームによって形成された化けの皮が剥がされ、その下から脱皮するようにインディ・オーラが現れた。


 あんな豪華な服装なのに、思った以上に機敏に動いた【赤滅天】に前を阻まれて、後続からやってきた【堅翠天】にも挟み撃ちにされた朔真側。


 だが、こっちのアーシャは印東虎胡の変装だった。



「――な、変装ですって!」


「そういえば、あなたはこう言うの得意でしたね」



 荒々しく息を切らす朔真に肩を貸しながら、インディ・オーラに戻る。


 虎胡は余裕ぶってシルクハットについた埃をはたき、引っかかった二人をせせら笑いながら被り直した。


 ドッキリ大成功。


 カメラはないが、せっかくなのでポーズを決めておく虎胡。



「大変! じゃあ、日祈ちゃんのところが本物なら、そっちをおいかけ直さなきゃ!」


「――それよりも、彼女たちをぶちのめして、どこに浚おうとしたのか問い詰めた方が効率よろしくてよ」



 慌てて踵を返しかける碧を呼び止める阿国。


 スンと大人しく佇んでいるが、睨み付ける目は露骨に敵意をむき出している。


 拳をゴキゴキとならして威嚇しないだけ、まだお淑やかだった。


 とても、そんなドレスを着ているお嬢様がしていい目じゃない。


 いや、最近はやりの純粋な悪役令嬢の役なら、様になっているかも。



「よしよし、良い感じで引っかかったね。――落ち着いたかい?」


「ああ……。最近仕事がなくて、レッスンも怠っていたのが、ここで仇になったようだが。もう大丈夫だ」



 だんだん呼吸のペースが緩やかになり、最後に一度深呼吸をしてから朔真が肩から手を離す。


 頬から顎まで垂れた汗を手の甲で拭いながら、朔真も改めて虎胡と肩を並べ立った。



「吐きなさい。今なら見逃してさしあげますわ」


「悪いが、そうはいかないのだよ」



 振り返った朔真が阿国と対峙し、虎胡から受け取った紫色のスキャナーの玩具を手にする。



「ふむ、ハンディマイク型スキャナーを使うのは久しぶりだ」


「久しぶり? それまで何を使ってたんだい?」


「スタンドマイク型だ」


「……変わってるね、君。あんな骨董品型を使うなんて」



 デッキを装填して読み取り版まで噴射させたスキャナーを改めて観察しながら呟く朔真。


 一応、彼女にも配布したのは朔真のパーソナルカラーで塗装された不良在庫品。


 それ以前に最も売れずにバイチャヤンチャでは倉庫を無駄に埋めていたデッドストック品だったらしいが、これで理由がわかった。


 どうも色だけ専用しただけで、なりきり道具にすらならなかった様だ。



「悪あがきですわ。そんな玩具を持ち出してまで、わたくしたちに抵抗をするなど!」


「私はむしろ、君がこの抗争に対して、何も思わないほうが疑問だがね。首になった我々が、即寝返ろうと思う動機ぐらい、君が一番痛感しているはずだろうに。何が、君をそこまでQ-key.333に固着させるというのかね?」



 この場に同門のアイドルの人数が薄くなったのを見計らっていたのか、阿国と対面した途端に朔真が意味深に語りかける。


 何の話をしているんだ?


 と虎胡が横目で朔真を見ると、こちらが興味を持って見ていたのを察していたのか、クスリと笑みを浮かべて視線で返した後ですぐに向き直った。


 また後で話そう、という合図だった。



「固着……わたくしが?」



 諭す朔真の言葉に、阿国が揺らぎ始めた。


 動揺ではなさそうだが、何かを思い出すように額に指を当てて考え始めた。



「阿国ちゃん! 今はアーシャちゃんの保護だけを考えなさい!」



 こっちまで萎縮してしまうほどの怒声が響く。


 声の主は、まさかの虎胡の前にいる愛染碧だった。


 さっきまで見た目通り柔和な語勢だったのに、突然爆発したようなおっかない怒声を吐いた。


 最初に見たときは、豊満な体型から成人――夜中に駆り出されたマネージャ的な人かと思ったが、既にプレートを出したスキャナーを握っているということは、彼女のもまたQ-key.333のアイドルのようだ。


 この人、母性溢れる優しそうな見た目の割りに、怒らせると超怖いタイプらしい。



「どうした? 我々を倒さないと、アーシャの行方が分からぬままだぞ?」



 ぱっと見の状況は不利なはずなのに、朔真があえて阿国を煽る。


 この会話で阿国の何かが揺らいだのか、ぱっとしないままランク2もスキャナーを構えて挑みかかる。



「アイラ、出番だよ!」


「あいよ!」



 こっちも懐に待機させていたアイラを呼ぶ。


 マントと背中の間から、ぴょこんと小さなゾウのぬいぐるみが顔を出す。


 虎胡が腕を前に向けて伸ばすと、それを伝って駆けだし、手の中に飛び込みながらスキャナーに変形する。



「私との対戦では、スキルを使ってもかまわないよ。アップデートしたアイラのスキルを試す良い機会だ!」



 こちらもデッキを装填し、プリズムストリームを稼働させて、愛染碧に対戦の意を見せる。



「そういうことなら、こちらも遠慮しませんよ。お尻ペンペンで済むと思わないでくださいね」



 穏やかな所作でスキャナーを起動させたかと思うと、彼女の中で別のスイッチまで入ったのか、そんな寝間着みたいな姿に似つかわしくないほど、重厚な気迫を纏い、剛健な佇まいを見せた。


 ランク7【堅翠天】。


 この公園に散らばったQ-key.333メンバーの中で一番低いランクのアイドルだが、実際は自らその地位に立つことを選んだ盾役者。


 討たれたら終わるグループの心臓を兼ねた【ディーヴァス神姫】の砦であり峠を担う者。


 まさにその責任感に満ちた、すさまじい気迫が虎胡の鼻先で聳え立っているようだ。


 ちょっと調子に乗って勝負をしかけたことを後悔するほどの、隠された威圧だった。


 だが、まだ笑みを浮かべられる余裕はある。



「番組とられた恨み! 晴らさせてもらうよ!」



 ――オン・ステージ!




 星空が見下ろす御瀬路セントラルパークで、総勢七人のアイドルと俳優一名が、一人の少女を巡り、一斉に開戦の号令を響かせた。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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