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-刹那side- 【黄黙天】雨羅刹那VS【紅暁天】鞠地日祈

 刹那の逃走ルートは、本来の逃走経路――


 つまり、まっすぐ雑木林を抜けてエマが停めているバンのところという当初の合流ポイントだ。


 チラリと背後を向くと、背負ったゲーミング竹刀から光をはみ出しながら追いかける日祈の姿が見えた。


 おそらく、こちらの運動神経や性格をみて、自分が適任だと思ったんだろう。


 そろそろ、ネタばらしをするか……。


 刹那はその場でピタリと止まった。


 一方で、手を引いていたはずの「アーシャ」は、手を繋いだポーズのまま、脇目も振らず一目散に森の中へと進み続けた。



「殊勝な……自分が囮になるつもりか?」


「まさか!」



 刹那はポケットから小さいスイッチを取り出しては、これ見よがしに押しこんだ。


 手のひらサイズくらいの装置の隙間が虹色に輝くが、ポチッとボタンを押した途端、内部の灯りと一緒にスタスタと駆けていたアーシャの姿が、ブツンと消滅した。



「――立体映像かッ!」


「これもプリズムストリームの恩恵だよね」



 刹那はヒラヒラとスイッチを見せつけながら、悔しがる日祈を煽る。



「あの自惚れた俳優のみならず貴公までッ! 貴公らはアーシャをどこへ連れて行く気だ!」



 額に健を立てるほどの剣幕になって、日祈が指を差しながら問い質してくる。


 大声というよりもヒステリックな絶叫にも聞こえた。


 想定以上に挑発が効いている。


 なんだか久々にあってから、日祈の沸点が随分と低くなった気がする。


 仕方ないか、今の状況じゃあ天水晴那のせいでQ-key.333はストレスの宝庫。


 おまけに刹那や朔真が寝返えり、さらにかつて番組を奪いとった敗北者の俳優と一緒になっておちょくるとなれば、堪忍袋がいくらあっても足りないだろう。



「ボクに勝てたら、教えてあげるよ!」



 印東虎胡という怪盗役者の参戦によって、分散作戦は成功。


 一番血の気が多い日祈を誘導することができた。


 あとは、そのときまで時間を稼ぎきるだけだ。


 刹那はシャツをめくって、ショートパンツに挟んでいたスキャナーを取り出した。


 といっても、本物ではない。


 朔真達と二手に分かれた際に、ホログラム映像のスイッチと一緒に、虎胡から手渡されたバイチャヤンチャ製のなりきり玩具。


 しかも、虎胡から聞いたところによると刹那が負けたことで出荷停止になった雨羅刹那専用のタイプで、処分として一個もらったものだそうだ。


 ただ、玩具といってもファン交流イベントに対応できるよう、Q-key.333製の量産型スキャナーや協会から配布されるオリジナルスキャナーとも接続が可能になっている。


 唯一の欠点があるとすれば……



「そんな玩具で私の足止めをするつもりか? スキルもない貴公など!」


「これでも、ちょっと前までは君と同じ【ディーヴァス神姫】の一天だったんだ! 矜持くらい、ボクにだってある!」



 腰に下げたホルダーからデッキを取り出してスキャナーに装填させる。


 起動スイッチは従来と同じで、デッキを認識すると内部のプリズムストリームが稼働して虹色の読み取り版を噴射させる。


 スキルや他の機能がないだけで、戦うだけなら玩具でもいける。



「よかろう……そのわずかに残っている矜持とやらを、私がここで焼き尽くしてくれるわ!」



 どこまでも全人類に対して厳しい性分は変わらず、今でも厳格な鬼教官のつもりなのか、相変わらず暑苦しく圧力鍋みたいに圧ばっかりかかった台詞で返しながら、日祈もスキャナーを構えて対峙する。


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる!」

「いいから早く決闘しろよ」


と思った方は、下にあります☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いいたします。

また、誤字脱字、設定の矛盾点の報告など何でもかまいませんので、

思ったことがあれば遠慮無く言っていただけると幸いです。


あとブックマークもいただけるとうれしいです。


細々と続きを重ねて行きますので、今後ともよろしくお願いします!

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